熱く指導するか、何もしないか

公開:2021/07/09

更新:2021/07/08

Hard or Nothing

どこでも写真や音声を記録でき、誰もがSNS を使って発信できる現代では、コー
チにとって、「正しいことを貫く」ことが、ますます難しくなっている。

子どもたちの成長を妨げるかのような振る舞いをする保護者が現れると、特にそうだ。コーチとは、とてもつらい仕事であることはわかっている。だが、賢明で才能のある情熱的なコーチが、理由を告げられず解雇される状況を見せられたら、コーチでいることに前向きな気持ちを持ち続けるのが難しくなってしまう。

カリフォルニア州サンノゼのマーキュリーニュース(San Jose Mercury News)に掲載された例を見よう。コーチの仕事を失った2人のコーチの特集だ。保護者が過剰に干渉する、ということ以上に私が驚いたのは、リッチ・フォースランドの言葉だった。フォースランドは高校で22シーズンをコーチし、勝利数は428(勝率約70%)だった。フォースランドは、高校のアスレチックディレクターと
面談した際に、試合中に十分に「コーチング」していないと言われて解雇された。

「我々は40 ポイントリードしていた。何を指導しろと言うんだ?大量の得点差があったのに」というのが、フォースランドの言葉だ。
「私は、試合中はあえて激しい指導はしないんだ。なぜなら、私のすることに後ろ指をさす人がいるからだ。
『見てください。これが彼のやり方ですよ。こうやって、彼は少年たちをいじめているんです!』と言われますからね」

つまりフォースランドが何をやっても、それが気に入らない人が出てくる。チームが40 ポイント以上差をつけて勝っている時に、追い打ちをかけるように激しく指導したら、彼はスポーツマンらしくないと思われ、保護者は10 代を指導するコーチとしてふさわしくないと言い出すだろう。

そこまで熱く指導してはならない。だがコーチが全く指導しなければ、たとえチームが大量得点差でリードしていても、コーチはもうそのチームのことを全く気にかけていないのだと、誰もが思ってしまう。

難しい選択だ。カメラを持った保護者が試合を撮影する。フォースランドが厳しく指導している場面だけを切り取り、晒す。これにより、何十年にも渡るコーチング人生が狂わされる。

この状況では正しい答えも正しい方法もない。皆さんにとって大切なのは、このようなことがアメリカ中で起こっている事実を知ることだ。
あなたは1人じゃない。私のアドバイスはこれだ。Be Yourself. 自分らしくいよう。20年前とは、明らかに異なるタイプのプレーヤーと保護者を相手にしている、ということを認識しよう。それと同時に、自分は自分である。フォースランドは、保護者を懸念して激しく指導するのをやめた、と言った。わざと厳しく指導しないようにするのは、とてもつらい。すべて保護者の言いいなりになってしまったら、自分のコーチングスタイルを見失う。Be Yourself.

Basketball Coach Weekly日本語版98号より

(本コーナーでは、JLC e-bookストアで販売している『Basketball Coach Weekly日本語版』のバックナンバー記事から、抜粋して掲載しています)

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