リバウンド強化の取り組み -大きいチーム相手にリバウンドで競るための工夫とは?

公開:2021/10/22

更新:2021/11/29

三重県中学総体バスケットボール2021で準優勝を果たし、東海大会に進出した鈴鹿市立千代崎中学校女子バスケットボール部で顧問を務める今野敬司先生に、「リバウンドの強化」についてお話を伺いました。

接触を嫌うからこそ「接触することが目的」にならないように

―本日はよろしくお願いします。中学生の女子を長年指導されている今野先生に伺いたいのですが、中学生年代の女子選手は特に接触を嫌う傾向にあるように思います。接触の伴うリバウンドの指導では工夫が必要かと思うのですが、いかがでしょうか?

今野先生(以下:今):おっしゃる通りで接触を嫌がる子が多いです。ただ、接触を嫌う選手が多いからといって、接触をすることを徹底した練習をすると「体を当てて相手を止める事」が目的になってしまい、ボールに飛びつけなくなってしまうということがあります。ですので、ぶつかるだけでなく「ぶつかって飛ぶ」という意識付け、練習が必要だと感じています。なかなか難しいですが、そのあたりは指導者が工夫して、「ボールを取る、ボールに飛びつく」というところまでを指導していかないといけないかなと思います。

↑長島中学校在任中には全中3位入賞も果たした今野先生↑

ディフェンスリバウンドは役割分担

―リバウンドの指導で気を付けている点を教えてください。

今:基本的に自分たちよりサイズのあるチームと対戦することが多いですので、そうしたチームと戦う際には、ディフェンスリバウンドにおいての役割分担をしています。センターやフォワードは相手のインサイドの選手を飛ばせないように接触する、ガードは外から飛び込んでボールを取るという形です。ガードがリバウンドを拾うことでそのまま速攻に持ち込むというイメージで指導をしています。
インサイドで飛ばせないためには、ただ体を当てるだけでは押し込まれてしまうので、先に飛んで相手のタイミングをずらし、リバウンドジャンプを繰り返すことが必要です。これはなかなかうまく行かないですが、工夫をして何とか相手のビッグマンに飛ばせない状況をつくって、ガードが飛び込みリバウンドでボールを取るということにチャレンジしています。

動き」を付けることでスペースをつくる

―オフェンスリバウンドはいかがでしょうか?

今:オフェンスリバウンドについては、明成高校の佐藤久夫先生が仙台高校を指導されていた時に教えていただいた「ムービングリバウンド」という考え方で長年指導をしていました。簡単に言うと、その場にとどまっているのではなく「ハイポストから対角のローポストに動く」「ローポストからサークルムーブのように動く」というようにオフェンス側が動くというものです。そうすることで、ディフェンス側もマークマンについていく必要があるので、オフェンスが内側に入れたり、スペースができてアウトサイドの選手が飛び込みリバウンドに行けたりするという利点があります。

↑佐藤久夫監督によるムービングリバウンドの解説↑
※ジャパンライムDVD 330-S 仙台高校・佐藤久夫のファンダメンタルクリニック より

現在はその考え方を基本にして、今倉定男先生に教えていただいた「タグアップ」というものを取り入れて指導をしています。味方選手がシュートを打った際に、リングに向かってリバウンドにいくのではなく、いわゆる「ネイル」の方向に向かって動いていくものです。インサイドの選手もタグアップするので、相手がそれに付いて来てくれるとインサイドのスペースが空き、そのポジションにウィングポジションにいる選手が飛び込むことができます。タグアップを取り入れたから、体格差のある相手に対して、5本中2~3本はボールをチップしたり、ボールに絡んで行けるようになりました。ボールをつかめなくても、ボールを弾いてマイボールにできる場面も増えてきて、選手たちもオフェンスリバウンドで戦えるという手ごたえを感じているようです。

効率よく取り組むリバウンド強化ドリル

―練習の中ではどのようなドリルを取り入れておられますか?

今:リバウンドについては、2人組で体をぶつけ合ってジャンプするようなものや、タイミングをずらしてオフェンスリバウンドに飛ぶ練習、「猫カット」と呼んでいる相手の前に入るために動きを身につけるドリルなど、体の使い方やジャンプのタイミング、相手の前に入るというポイントを押さえた、6種類のドリルに取り組んでいます。

練習紹介:「猫カット」ドリル

Point:相手の後ろから回り込んで、腕を上げている相手の手の間に「招き猫の手」ように手を入れてボールをカットする。相手の前に入る際には、自分の外足と相手の体の間に内足を入れるように入り込むようにする。

今:練習では1ドリル1分で行い、全部やっても6分というように短時間で取り組むようにしています。新チーム立ち上げの際には毎日6種類のドリルを取り入れますし、大会前や練習試合の際なのでには、短い時間で確認の意味を込めてやることもあります。

―貴重なお話しありがとうございました!

鈴鹿市立千代崎中学校女子バスケットボール部
2021年度三重県中学校バスケットボール大会で準優勝を果たし東海ブロック大会に出場。1回戦で全中出場を果たした浜松開誠館中学校に善戦するも敗退。現在は、11月に開催予定のJr.ウィンターカップ県予選に向けて、1~3年生23名で日々練習に打ち込む。顧問を務める今野敬司先生は、以前の勤務していた長島中学校で全中に3回出場し、1997年の愛媛全中では3位入賞を果たすなど、県内の中学女子カテゴリーを牽引する指導者のひとり。

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