公開:2020/07/06
更新:2021/02/18
アレセイア湘南高校女子バスケットボール部は、2015年に創部され少人数からスタートしたチームです。元韓国代表プレーヤーとして活躍し、韓国で数々の強豪チームで指導をしてきた張一(チャン・イル)監督の指導のもと、メキメキと実力を付け、創部3年目にはインターハイとウィンターカップに初出場。その後は、神奈川県のトップチームとして全国大会の常連校となり、全国の強豪チームと激しい戦いを繰り広げています。
アレセイア湘南高校の練習に初めてお邪魔した時に感じたのは、「みんな小さいな」というとこと「みんな速くて巧い」ということでした。練習は一つ一つの動きにメリハリがあり、ステップ1つ、腕の使い方1つまでこだわって取り組まれていました。
張監督の指導の特徴は、徹底してファンダメンタルを鍛えることと、「創造性」を重要視している点にあります。その指導により、神奈川県の強豪チームへと成長し全国の舞台でも躍動。中学時代に大きな実績がなくても、体格で劣っていても、スキルとスピードを磨けば勝負ができるという事を体現しました。
張監督は指導の中で、「パワー」という言葉が良く出てきます。「パワーキャッチ」「パワーパス」「パワードリブル」など、全てのプレーに力強さを求めています。
その力強いプレーを行ううえで必要なのが、しっかりとボールを扱える技術、足の運び方や重心移動といったいわゆるファンダメンタルの強化です。地味で辛い練習ではありますが、その練習がどんなプレーに繋がるのか、目指すプレーのために今この練習が必要だということを、繰り返し選手に伝えながら、一切の妥協を許さない張監督の指導により、すべてのプレーの土台となるファンダメンタルを習得。基本が出来ているからこそ、自分の実力を100%発揮することが可能になったのだと思います。
アレセイア湘南の試合を観ていると、ビハインドパスやノールックパスなど、「魅せるプレー」がたくさん出てきます。そうしたプレーを実現可能にするのも、日々の練習の積み重ねです。
張監督は、「いま取り組んで目的にしていること」以外のところで厳しく指導をすることはありません。例えば3メン速攻の練習において、「ボール運びのスピード」と「判断の速さ」をテーマしたとき、ビハインドパスやノールックパスでパスミスをした場合でも、それが速さを求めてのプレーであれば積極的にプレーをさせるのです。「難しいパスをしたから失敗した」などと、パスミスしたことを責めることはありません。そのため、選手達も練習の段階から積極的にトリッキーなプレーに挑戦し、失敗を繰り返しながら自分のスキルとして身に付けていく事が出来ます。
取材を通して、もう一つ印象的だったのが張監督の人柄です。自身がトッププレーヤー、トップ指導者として韓国で実績を残してきたにも関わらず、常に謙虚な気持ちを持ち、誰とでも分け隔てなく接する。選手とも、ただ仲良くするのではなく、心から会話をする。だからこそ選手も張監督を信頼して付いていく。そうした張監督の人柄がチームの魅力となり、多くの人に応援されるチームへと成長したのではないかと感じます。
張監督は、2020年度より東京の明星学園で指導をされています。長年チームを率いてきた椎名監督とのタッグで、どのようなチームを作っていくのか注目です。また、アレセイア湘南高校も張監督が残したレガシーを引き継ぎながら次のステップへと進んでいくことでしょう。いつか全国の舞台で、アレセイア湘南と明星学園の試合が見られることを密かに楽しみにしています。
(取材:2020年)
>>>張監督と親交のある東京成徳大学高校の遠香周平監督、神奈川県立旭高校の講武達雄監督に伺ったアレセイア湘南の印象に関するインタビューも掲載!