公開:2020/08/01
更新:2021/02/18
秋田県湯沢市にある湯沢翔北高等学校。JR奥羽本線湯沢駅から徒歩約15分。公立高校という事もあり、バスケットボール部もほぼ県内出身の選手で構成されています。また、通学に時間を要する生徒もおり、全体で練習できる時間も限られています。
そうした環境下でも、近年全国大会の常連校として躍進し、2019年度には東北大会で優勝を果たすなど結果を残しています。
チームの指揮を執る樋渡監督は地元秋田出身。筑波大学で教員免許取得後、秋田県の教員として高校生の指導にあたってこられました。
樋渡監督は以下のことを指導のコンセプトに掲げておられます。
この指導コンセプトのもと、
【「Hang on there!」~しがみついてはなさない~】をスローガンに掲げ、環境を言い訳にせずに、今ある環境で、できる最大限の努力をすること。
強くなるために必要なこと、できることを確実に積み重ね、日々の練習を大切にすること。
そうした考え方を徹底することで、普通の公立高校でも結果を出すことを可能にしてきました。
樋渡監督は、バスケットボールの練習を「実力養成」=「スキルを高めること」と「実力発揮」=「習得したスキルを活かすこと」の2局面で考えて指導されています。その中で、練習メニューを構成していくうえでポイントとされているのが、
という3点です。
ランダムなメニュー配列とは、日々の練習の中で同じ流れで練習をしないということ。毎回同じ練習を繰り返すのとは違い、必要な技術や戦術を頭や体の引き出しに入れるには時間を要しますが、「必要なことを忘れにくくなる(長期記憶化)」、「自分の引き出しから出しやすくなること(発揮能力の向上)」といった効果が期待できます。つまり、ただ同じ練習をこなすのではなく、考えて練習を行うようになることで、長期記憶化=真のスキル習得に繋がっていくのです。
また、1日の練習に技術習得のためのドリルと実戦練習を必ず盛り込むことも重視されています。
これは、一見長時間の練習が必要になると考えがちですが、1つ1つのメニューの時間を短くし、短時間で集中してそのメニューをこなし、時間が来たら次のメニューに移行する。といったように、ある程度時間で区切って練習を組み立てることで、無駄な時間を省き、効率的な練習を実現しています。
また、樋渡監督は練習中も選手とのコミュニケーションを重視して指導をされています。指導者が伝えたいことを言葉だけでなくイメージまで共有することで、より選手の理解も深まります。そのためには、常に指導者と選手、選手同士のコミュニケーションをとることが不可欠になります。
こうしたコミュニケーションを日ごろから取っておくことで、実戦でもコート内でコミュニケーションを取り合い、オフェンス・ディフェンスともにチームとして高いレベルでプレーすることへと繋がっていきます。
環境を言い訳にしないということは、簡単なことではありませんが、指導者の創意工夫と情熱次第で、公立校であっても個人・チームの実力を高め、実戦で勝てるチームを作れるということを体現してきた樋渡監督。これからも「出来ることを徹底」し続け、全国大会上位進出という目標に向かって努力を重ねる湯沢翔北高校女子バスケットボール部に注目していきたいと思います。
(取材:2020年)