明日からできる!育成年代のセルフコンディショニング Vol.1

公開:2020/10/02

更新:2021/03/04

星川精豪(アスレティックトレーナー)

アスレティックトレーナーとして、各年代の代表チームをはじめ、数々の現場でコンディショニング指導を行ってきた星川精豪氏に、主に中学生年代の選手に合ったセルフコンディショニング法について寄稿していただきました。その内容を2回にわたり掲載します(第2回は10月16日公開予定です)。


私はこれまでご縁もあり、小学生、中学生、高校生、大学生、実業団、プロフェッショナルチームにおいてアスレティックトレーナーを務めさせていただきました。

各カテゴリーにおける男子バスケットボール日本代表にもアスレティックトレーナーとして帯同させていただき、現在は日本バスケットボール協会における育成年代の事業である、育成センター(将来を見据えた個の育成を目的としたキャンプ)、ジュニアユースアカデミー(世界に通用する選手の育成を目的としたキャンプ)にも関わらせていただいています。

育成年代では実践学園中学校男子バスケットボール部において、アスレティックトレーナーを務めさせていただいております。初めは自身の研究の被験者をお願いし、2011年度から関わらせていただいていましたが、その後本格的に2015年度からアスレティックトレーナーとして、チームに関わっています。

実践学園中学校での約10年間で育成年代におけるセルフコンディショニングに関して多々行ってきましたが、大人と対応を変えた方が良いこと等にも気付き、考え方も少しずつ変わってきました。

今回は現在関わらせて頂いている実践学園中学校男子バスケットボール部や日本バスケットボール協会における育成年代の資料を例に挙げながら、セルフコンディショニングについて実際に行っていることを紹介したいと思います。

コンディショニングとは「ピークパフォーマンスの発揮に必要なすべての要因をある目的に向かって望ましい状況に整えること」です1)。そのためにはまず自分の身体のことを知る必要があります。例を挙げると、現在の自身のバスケットボールの技術やレベル、体力、疲労度、怪我等が考えられます。

そして育成年代の場合、これらに加えて成長度が大きく関わってきます。つまり育成年代のセルフコンディショニングは、「それぞれ自分自身の将来のために、成長度を考慮しながらパフォーマンスに必要な全ての要素をより良い状態にすること」と考えられます。

コンディショニングはかなり広義となるため、今回はその中でも「セルフケア」と「セルフエクササイズ」に絞り話を進めていきたいと思います。


1.セルフケア

育成年代の時の顕著な身体の変化は、やはり身長が伸びるということです。身長の定義は地面に垂直に立った時の頭頂までの距離です。つまり地面に対し長軸方向の骨が伸びると身長は高くなりますが、同じく長軸方向の筋肉が骨の成長により引っ張られ硬くなってしまいます。

例を挙げると、大腿骨(太ももの骨)と同じ長軸方向の筋肉であれば大腿四頭筋(太ももの前の筋肉:膝を伸ばす、足を上げる筋肉)やハムストリングス(太ももの裏の筋肉:膝を曲げる、足を後ろに蹴る筋肉)です。

他にも腓腹筋(ふくらはぎの筋肉:つま先立ちをする筋肉)や臀筋群(中臀筋や大臀筋などのお尻の筋肉:足を後ろに蹴ったり、姿勢を維持する筋肉)、腸腰筋(腸骨筋、大腰筋、小腰筋の総称で足を上げる筋肉)、脊柱起立筋(数種類の筋肉の総称で、背中から腰にある長い筋肉)などがあります。

そしてその筋肉の硬さが怪我の1つの原因となり痛みが出てしまうことがあります。

よく耳にするオスグッドシュラッター病(脛骨というすねの骨の膝に近いところに起こる怪我)もその1つであり、主に大腿四頭筋の硬さが原因となって起こると言われています。

これは育成年代の場合、筋肉や骨、靭帯などの成長の早さに違いがあるため、組織によりその脆弱差に違いが見られるためです。

また同じ方向に付いている筋肉が硬いということは、頑張って伸びようとしている骨の成長を邪魔しているとも考えられます。そのため怪我予防だけではなく、骨の成長を助け身長を伸びやすくするという意味でも、育成年代で筋肉を柔らかくしておくことは大切と考えています。

セルフコンディショニングは部活動以外の時間を自分で見つけ行えるため、効果も期待できます。効果がわかってくると自身でどんどんやってくれるので、いかに楽しく効果を分かりやすく伝えられるかがセルフにおいてとても大切です。

以下、セルフケア、セルフエクササイズの代表例を紹介していきます。

セルフケア・その1 ストレッチ

骨と同じ長軸方向の硬さを考えると、やはりストレッチが推奨されます。筋肉と骨の方向にしっかりとストレッチ出来ているか注意しながら行いましょう。

もしストレッチ中に膝下などに痛みがある場合は、後ほど紹介するセルフマッサージを行ってから、ストレッチを行いましょう。それでも痛みがある場合は逆に筋肉が硬くなることもあるため、痛みがとれるまではセルフマッサージのみにしましょう。

大腿四頭筋(もも前)①

悪い例↓

右もも前を伸ばしていますが、股関節が曲がりさらに内側に入っているため、外側の筋肉しか伸びていない可能性があります。

良い例↓

右股関節を前に出し、前方に伸ばしている左脚の方に上体を捻ると、太ももの真ん中のあたりが伸びてくる感覚があります。股関節から膝下にかけての筋肉がしっかりと伸びています。

大腿四頭筋(もも前)②

両手を後ろにつき両膝を前に出して、もも前を伸ばします。股関節が伸びやすいため、もも前をしっかりとストレッチできます。さらに両脚を閉じたり開いたりし、また片脚ずつ行うことで、よりしっかりストレッチできます。

ハムストリングス(もも裏)

右もも裏をストレッチしていますが、膝を伸ばした状態で行うと、もも裏の筋肉がしっかりとストレッチされる前に制限されてしまう可能性があります。

脚を椅子の上に乗せたりして、少し膝を曲げた状態で行うことで、しっかりともも裏の筋肉を伸ばすことができます。 つま先を内側、外側にも向けることで、伸びる筋肉も変わってきます。

またタオルを使用してストレッチをしたり、もも前の筋肉を使いながら行うジャックナイフストレッチと呼ばれる方法もあります。

タオルを使うストレッチ
ジャックナイフ

■参考文献

1)財団法人日本スポーツ協会:日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー教本, 予防とコンディショニング:P3, 2011.


第1回はここまで。第2回では、セルフマッサージとセルフエクササイズの実例を紹介します。

>>> 明日からできる!育成年代のセルフコンディショニング Vol.2を読む

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