学年縦割りの役割分担、オンライン・キャプテン会議などでモチベーションアップ

公開:2021/06/18

更新:2021/07/30

東京都立上水高校女子バスケットボール部 矢野葉子先生

コロナ禍の練習実態を調査したアンケートにご回答をいただいた指導者への追加取材、3例目は東京都立上水(じょうすい)高校女子バスケットボール部の矢野葉子先生です。生徒たちの自主性に目を見張り、従来の指導法を大きく見つめ直す1年間だったとおっしゃっています。学年縦割りの役割分担による活動、また地域のチーム間で行ったオンラインキャプテン会議も有効だったとのこと。


矢野葉子先生。取材はオンラインで行いました。

これまでの教えすぎ? を反省

──チームの概要についておうかがいします。現在の部員数と、最近の戦績は?

矢野:現在33名です。新入生は例年10名前後入部しますが、今年は14名と少し多めでした。4年前にインターハイ東京都予選でベスト8まで進出しました。その結果、東京都スポーツ特別強化校に指定され、遠征費や報償費など強化予算をいただいています。この時の都ベスト8が最高成績で、ベスト16がここ数年変わらぬ到達点です。現在は私の他に2名の先生と一緒に、この壁を乗り越えるべく、さまざまな取り組みをしているところです。

──スポーツ推薦入学の枠はあるのでしょうか。

矢野:学業成績も評価しつつ、毎年3名の推薦枠があります。真剣にバスケットボールがやりたい生徒が集まってくれるきっかけになっています。

──今回のアンケートで、コロナ禍1年間の様々な制約の中で、「選手たちに主体性が生まれた」とお書きいただきました。

矢野:はい。制限のあることで逆に自ら求める気持ちが出てきたと感じます。これまでの教えすぎ?を反省しました。選手自らできることを工夫して、実行していく力がついたと思います

──特に印象に残っているエピソードなどあれば。

矢野:昨年度の3年生にとって、目指す大会がなくなったことはとてもショッキングな出来事でした。4月初旬に大会中止のアナウンスを聞いて、当然、一度落ち込みましたが、ちょうど新入生が入部してくるタイミングでもあったので、後輩たちにつないでいくことを新たなモチベーションとして、各自が努力を積み重ねてくれたなあ、と思います。毎日10kmのランニングを自分に課した生徒もいて、私たちにとって驚きでもあったし、その姿に心を動かされました。できることは何でもやろうと、私自身スイッチが入りました。今思えば、最初から主体性が生まれたのではなく、この時期指導者として色々なアプローチをかけたことが、その後の主体性につながったと思います。

新チームに代わり、大会も再開しましたが、今年1月に新人大会が途中で途切れてしまいました。東京都の新人戦は、ベスト32までの試合が前年の11月に行われます。生徒たちはウインターカップの補助役員として大会のサポートにも入り、年末から年明けにかけてモチベーション上がるのですが、その状態から一気に落とされてしまった。再度、モチベーションを削がれる事態で、かなり落ち込みました。

この時期は入試の業務等で私たち教員も忙しく、生徒たちに任せる部分が増えました。そのようにしたことが、かえって主体性を促し、前回の休校期間にやった蓄積もありこちらが言う前にいろいろアクションを起こしてくれる、そのような流れになりました。関与しすぎず、放っておくことも必要ではないかと改めて思いました(笑)。

オンライン・キャプテン会議の開催

──1月と言えば、感染第3波のピークですね。この時期は、練習もできなかった?

矢野:はい。授業は行われていましたが1月から3月の上旬までの約2ヶ月間は全く練習はできなかったです。放課後残ることもままならず、授業後すぐ帰宅して自宅でオンラインミーティングをしたり、各自トレーニングをするだけの日々でした。リーダーの提案に後ろ向きで自分のことが優先になる生徒も出てきて、チームがバラバラになりかけていました。この時期に一つ、視野を広げさせ生徒たちを元気づけるイベントを開き、これは成果があったと思います。

地域の16校程度が参加して、年間何度も大会を開いているグループがあります。いろんなチームとの交流を通じて刺激し合うことを目的に、長年やっています。このグループで、オンライン・キャプテン会議を開催しました。各校2名が参加して、それぞれ、今やっているトレーニングやキャプテンとして苦労していることなど、他愛のない話題も含めて情報交換した。生徒たちのモチベーションを挙げるために企画しました。

──参加した生徒さんは、他校の様子を聞いて刺激を受けたと思います。それを自分たちのチームにフィードバックできたということですね。

矢野:「こんな時だからこそ、誰かのためになることを考えよう」とミーティングで伝えたところ、キャプテンが中心に企画を考えました。参加したチームから感想が寄せられて、思いを共有できたと思います。

他にも、1年生は不安になっている受験生に向けて、応援メッセージを写真に撮り、自分たちの体験をホームページに掲載もしました。

学年縦割りの役割分担活動

──アンケートでは、「縦割りの役割分担が機能した」という回答もいただきました。具体的にお聞かせいただけますか。

矢野:各自に役割を与えるために数年前から始めた班が、コロナ禍で有効に機能しました。次のような班を設けています。リーダーの差もあり、十分に機能していないものもありますが。

・トレーニング班(各自で行うコンディショニングメニューの提案、報告管理、記録測定など)

・データ班(過去ビデオの共有。引退した3年生にベストプレー集をリストアップしてもらい、チームコンセプトと向かうべきゴールをイメージ)

・メンタル班(専門家にお願いした講義の振り返りなど)

・栄養班(体脂肪測定、知識理解のための資料提供)

・清掃班(練習ができない間、体育館の状態を保つ。物品整理)

・勉強班(上級生が下級生に勉強の仕方、時間管理などを教える。文武両道意識の継承)

・事務班(大会申し込み、会計、保護者やOG会との連絡。ホームページ、体験入部の対応など)

──データ班がまとめた動画は、どのように共有していますか?

矢野:昨年はLINEを使っていました。今年3月にSPLYZA Teamsを導入したので、今はそちらを使っています。他のアプリも含め、コロナ下ではオンライン系の情報共有、映像分析アプリを使う機会が増えました。SPLYZA Teamsは映像分析が選手全員で分担できる点が便利です。コートで説明しても伝わらなかったことが、客観的に理解できるようになり、みんなが「同じ絵」を描くことができるようになりました。

SPLYZA Teams上の練習動画例

コロナ禍では、アナログの部活ノートの交換ができない時期がありました。その代わりとしては、CoachXという練習動画配信アプリの共有機能、「チームノート」を使いました。LINEでもできるやり取りですが、情報が一つにまとまっている点で便利でした。学校の授業ではteamsやClassiというアプリも使用しており飽和状態なので、整理することが今の課題です。

「チームノート」活用例。右上の写真は後述したOG会制作の応援Tシャツ

伝統の継承不足をどう克服するか

──コロナ禍の部活運営で困っていることとして、「先輩からの伝統の継承不足」を挙げていただきました。例年と活動内容やスケジュールが大きく変わり、この部分は確かに各チームで課題になっていると思います。現時点での対応策をお聞かせください。

矢野:縦割りグループで、新入生から上級生に質問してもらう機会を増やしています。また、部活卒業文集を読ませてゴール時をイメージさせています。高校の部活が終わった時どうなっていたいか、そのために今何をするべきかを考えさせる。部活ノートのバックナンバーを読ませて、感想を共有するといった活動もしています。

最近では新入生に「高校の公式戦を初めて見た感想とどんな選手になりたいか」を考えさせました。昨年はできなかったことですが、新鮮な目でチームを見てくれる新入生の存在が上級生を成長させることを実感しています。

大会が無くなった時にOG会が応援Tシャツを作ってくれました。この1年間これまでの伝統の積み重ねに助けられているなあ、と感じることが多かったです。日常の「当たり前」がいかに大切かを生徒たちも学んでくれていると思います。

──最後に、この1年間の特別な状況下 で、先生ご自身も指導者としていろいろなことをお考えになったと思います。そうした事象の中で、他の指導者の方々と共有したいことがありましたら、付け加えてください。

矢野:今まで、私のほうからたくさん与えることをやってきましたが、今回、生徒たちが主体的に動き出す姿を見て、待つこと、我慢強く見てあげることの大切さに気づかされました。ただし何もしないで待っていても何も生まれない。こちらのアプローチも重要で、どこから手を離して見守るかの見極めも大切だと思いました。

実際は「どんな状況下でも自分で努力を重ねられる生徒」はごく一部で、何のためにやるのかが分からなくなった生徒も数多くいました。私たちがやるべきことは、引き出しを用意して環境を与え、自分からやる気にさせ、あとは信じて見守ることなのかなと考えるようになりました。

また、働き方改革の波で、熱心な指導者の方ほど練習時間が短くなったと感じられていると思います。発想を切り替えて、できることが制限される中で、本当に大事なものは何か、やるべきことを精査する良い機会にもなったと思います。通常に戻ってからも、今回蓄積したオンライン環境や、コート外で学べるツールを活かしていこうと考えているところです。

──ありがとうございました。

(2021年6月5日、オンラインにて取材)

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