コロナ禍で練習はどう変わったか? アンケート調査報告

公開:2021/06/11

更新:2021/07/30

すでに1年間以上、私たちはコロナ下と呼ばれる非日常の生活を強いられています。全国のバスケットボール指導者たちは、この期間にどのような問題を感じ、またどのように工夫して練習とチーム活動を行ってきたのか? ジャパンライムで過去に商品購入をしていただいたお客様を中心に、アンケートを実施しました。(回答期間2021年5月18日~31日、WEBアンケート形式で実施。回答数60名)


コロナで練習はどう変わったか? 

アンケートではまず、「コロナ禍の制約の中で以前の練習と変わった(変えた)部分は何%ぐらいですか?」という質問に対して、選択式でご回答いただきました。回答60名中、全体の60%に当たる36名が60%以上を選択し、100%とお答えいただいた方も3名いました。

日常生活、学校生活自体が大きな制約を求められる中で、当然ながらチームとしての活動、バスケットボールの練習も大きく変更せざるを得なかったようです。

次に、「コロナ下での指導において困っていることは何ですか?」この質問では、厳しい制約の中で、普段どおりの指導・練習ができていない現状と、その中で苦悩する指導者の方々の日常が色濃く反映された回答結果となりました。

練習はできても運営の難しさが

「練習時間の制限」により「練習量の確保」が十分にできていない、という回答が大半を占め、地域を問わず、練習不足状態が深刻であることがわかります。対外試合や県外チームとの交流が厳しく制限されていることから、実戦感・試合勘を養えない、という声が多数寄せられました。練習中断の期間を断続的に強いられることで、「フィジカルコンタクトへの耐性や心肺機能の向上がはかりずらい」(高校部活)という声も。練習の中断は、その時点まで築き上げた能力を後退させてしまうことにもつながります。中長期的なトレーニング計画が立てづらい中で、日々の練習内容の組み立てに苦労されている様子がよく伝わってきます。

練習ができたとしても、実施上の難しさは少なからずあるようです。「声出し、コンタクト練習などで躊躇してしまう」(高校部活)、「指導者がマスクをしているので、私が何を言っているのか選手が聞き取りづらい」(中学部活)。選手たちにも感染不安がつきまとう状況下で、練習現場での感染対策について悩む声も多数ありました。

大会・試合数が大きく削られたことによって、「選手に目標を持たせることができない」(ミニバス・中学クラブチーム)、「選手間でのモチベーションの差が出てしまう」(高校部活)。より切実な声としては、「新規入団者が減った」(ミニバス)というものもありました。

チーム運営上の問題点として、「先輩からの伝統の継承不足」(高校部活)を挙げる指導者も。チームとしての活動制約・中断を余儀なくされることは、長い期間かけて築き上げてきた無形の財産にも影響を及ぼしてしまう、そんな実情も垣間見ることができました。

コロナ禍の取り組みで成果が上がったことは?

今回のアンケートは、コロナ下の取り組みの中で発見した「新たな気づき」「良かったと思えること」を幅広く募り、全国の指導者の方々と共有したいとの思いから実施いたしました。その趣旨にご賛同いただき、多数のポジティブなご意見をいただきましたので、以下に紹介します。

■オンライン活動

「Web セミナーを積極的に受講して、新しい考え方を学べたこと。そのことをチームに新しい知識として還元出来たこと」(高校部活)

「オンラインでのエアロビクストレーニング」(高校部活)

「ZOOMを使ったミーティング」(高校部活)※同意見多数

「SNS等を利用して、部員と連絡を取りながら各自の練習を考えられた」(中学部活)

「Instagram開設(自主トレ動画投稿)、全国の子達とオンライン合同練習(ZOOM)。Instagramを開設し練習メニューを毎日投稿していたところ、興味を持ってくださる方が増えて団員が急増しました。オンライン合同練習が好評だっため定期的に開催していき、対面だとなかなか会えないような距離の子達とも一緒に練習できることはオンラインの強みなので、この機会に全国のいろいろな方々と繋がりを作っていきたいです」(ミニバス・中学クラブチーム)

■座学、映像視聴系

「NBAや大学、プロの試合で、ちょうど自分たちが練習しているスキルの場面があったらそれを動画におさめ、Googleドライブを用いてリンクをコピーして共有し、良いプレーを選手たちも観れるようにした」(中学部活)

「ジャパンライムのDVDを視聴させたり、審判を覚えさせるためにDVD教材を視聴させました」(高校部活)

「SUFU(スポーツの練習動画配信サイト)を使った」(ミニバス)

「YouTubeのバスケ動画」(高校部活)

「LINEでグループを作り、課題ハンドリング動画を見て、全員で課題に取り組んだ」(ミニバス・中学クラブチーム)

「インターネットアプリを使った映像分析。ZOOMを使った自室での自主練」(高校部活)

■個人練習、体力トレーニング系

「ファンダメンタルの追求」(中学部活)

「ラダーSAQドリブルトレーニング、②リップコーンドリル、③オンボールスタビライゼーショントレーニング」(ミニバス・中学クラブチーム)

「走り込みで体力増強」(ミニバス)

「個々の身体能力を強化するコーディネーショントレーニングと、個々の技術を強化するスキルトレーニングを、精選した上で並行できた」(中学部活)

「①ハンドリングテストのタイム計測の競争、②わかりやすい資料をデータで配布」(ミニバス)

■練習・試合へ臨み方

「強制ではなく個人でどれだけやれるか、その意義や熱意を高めるミーティングが多くなりました。そういった内容が、今後学校体育に必要な“誰かにやらされるのではない、選手が熱意をもった活動”につながるものになったと思います。選手だけではなく指導者が特に…。もちろんまだまだですが」(高校部活)

「短い練習時間で走るだけのランメニューは全くやらず、ゲームのなかで状況に適した判断ができる練習、シュート練習を増やした。またランメニューを行わない分、ゲームでは誰か1人が長時間出ることはせず、短いプレータイムで全力を尽くすことを大切に多くの選手(10人以上)を出し、全員がうまくなりたい、バスケットが楽しい、とバスケットが大好きになってもらえるように、より多くの選手にチャンスを与えた取り組みは選手の意識が向上し、練習の質も高まり、よかったと思う」(中学部活)

「トレーニングをリーダーが配信。学年縦割り班での取り組み。オンラインミーティング。生徒による映像分析。事前に練習内容の共通理解、など。時間の有効活用ができ、主体性が増した」(高校部活)

特別な状況だからこそ、今できることにフォーカスを

コロナ禍の活動で使用が増えたツールとしては、ZOOM、YouTubeや各種SNSアプリのほか、SPLYZA Teams等の映像解析アプリ、JBA BASKETBALL Libraryなどが挙がりました。   

平時とは大きく異なる“特別な状況”である今だからこそ取り組める分野にエネルギーを注ぎ、少なからず成果を挙げている指導者・チームもあります。もうしばらく続くであろう特別な状況において、これらの実例が少しでもヒントとなれば幸いです。

最後に、今回のアンケートにご回答いただきました全国の指導者の方々に、改めて御礼申し上げます。当サイトBasketball JUMPでは、今後もあらゆるテーマで幅広くアンケートを行い、バスケットボール指導に役立てていただける情報提供に努めてまいります。


また、このアンケートの中で、詳細な回答をいただいた指導者3名に追加取材を行い、新たな試み等の成果についてうかがいました。そのインタビュー記事は下記リンクよりご覧ください。

>>>Instagramの動画投稿とオンライン合同練習で挙がった成果

>>>実戦重視とプレータイム均一化で選手の意識が変わった

>>>学年縦割りの役割分担、オンライン・キャプテン会議などでモチベーションアップ


>>>過去の特集記事を読む

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