原則の徹底とハードワークでリバウンドをものにする

公開:2021/10/29

更新:2021/11/29

宇都宮ブレックスU18 荒井尚光ヘッドコーチ

Bリーグ宇都宮ブレックスU18チームの荒井尚光ヘッドコーチに、同チームでのリバウンド強化の取り組みについてうかがいました。

荒井尚光コーチ。オンラインでお話をうかがいました。

マインドセットとプレーの原則

──リバウンド指導の基本的な考え方についてお聞かせください。

荒井:トップチームのデータを見ても、リバウンド獲得率の高い試合が勝利につながっていたり、シーズン全体で優勝につながっていたりします。ですからユースチームとしても、リバウンドはとても重視しています。土台となるのは「リバウンドはしっかり取る」というマインドセット。リバウンドとルーズボールはブレックスのもの、という考え方を徹底し、そのために必要な戦術とスキルを身につけていく、こうした方針です。

──インサイドプレーヤーとアウトサイドプレーヤーで役割は分けていますか?

荒井:ユースでは分けていないです。基本的に全員がアウトサイドプレーヤーとして成長することを前提に指導しています。オフェンスリバウンドでは、チームのプレー方針として、自分がどの位置にいたとしても、ゴールに近い2名がリバウンドに参加し、残りの3名はセーフティとタグアップを設定するという決め事の下でプレーします。タグアップ(マークマンの下側にくっつく)で相手に密着することができれば、相手の速攻を防ぐことができます。

──ディフェンスリバウンドはいかがですか?

荒井:3ポイントシュートは約70%が逆サイドに落ちることは統計的にも明らかになっていますが、そこからの展開で相手の得点につながることがないよう、ディフェンスリバウンドの意識付けをしています。具体的には、相手がミドルレーン入って来るのを防ぐことが重要です。相手にセカンドチャンスを与えてしまうシチュエーションは少なからず発生します。その位置が問題で、ベースライン側でオフェンスリバウンドを取られても、相手はいったんキックアウトするなどして攻撃を立て直さなければなりません。

ディフェンスリバウンド獲得後は、全員がアウトサイドプレーヤーであるとの考え方に基づき、ドリブルプッシュしていきます。

リバウンド練習の実際

──普段の練習では、全体の何割程度をリバウンドに割いていますか?

荒井:3割程度は、リバウンドの意識付けあるいは具体的なスキル練習に充てています。日々の練習フローの中で、U15ではリバウンドシチュエーションは必ず入れていますし、U15、U18とも、スクリメージの中で安易にオフェンスリバウンドを取られてしまったりした時は時間を割いてリバウンド練習を行います。どちらかと言うとU15ではリバウンドの分解練習が多めで、U18は自分で考えさせる余地を与える練習。ユース指導者の役割として、「何かに突出した選手を輩出する」ことをいつも考えています。リバウンドもその一つの要素だと思っていて、リバウンドの分解練習を繰り返す中で、面白さを見出してくれる選手が出てきてほしい、そんな思いがあります。

──リバウンド強化で取り組んでいるドリルを教えて下さい。

荒井:たくさんありますが、今回は5つほどご紹介します。

・ジャングルドリル

・ロッドマンドリル

・2対2負け残りリバウンドドリル

・3人組コンタクトリバウンド

・ゲーム形式でオフェンスリバウンドの加点をつける

ハードワークだが効果の高い2つのドリル

──その中で特におすすめのものは?

1つめは「ロッドマンドリル」です。これは、私が現役時代、当時ブレックスのヘッドコーチだったトーマス・ウィスマン氏(現・群馬クレインサンダーズヘッドコーチ)の指導の下でよく行っていたものです。私は田臥勇太選手と身長が同じぐらいなので、よく田臥選手を相手にこのドリルをやっていて、結構きつかった思い出があります。

フリースローライン上に2人が並び、間にコーチがボールを落として2バウンド後に取りに行く。そこからライブで先に3本決めたほうが勝利、というシンプルなドリルです。シュートを決めたとしてもすぐにボックスアウトしてリバウンドを取らないといけないので、プレーヤーにとってはハードワークとなります。このドリルでロッドマンは負けたことがない、それでロッドマンドリルと呼ばれるようになった、という逸話が残っています。

ドリルとしては「2対2負け残りリバウンドドリル」のほうが優れているかもしれません。これはアンダーカテゴリーの男子代表や3×3男女代表チームのヘッドコーチを務めたトーステン・ロイブル氏に教えてもらったものです。

ディフェンスが左右のブロック、オフェンスがその外側に位置します。コーチがフリースローラインからシュートを打って、そのボールを取り合うドリル。負けた側が残って次の組とプレーする。この繰り返しです。ディフェンスのポジショニングがとても重要で、ミドルレーンに入られないようにしっかりコンタクトする。コンタクトは3パターンあって、背中、横(肩甲骨で相手を抑えるイメージ)、フロント(ミスマッチが起きた時に捨て身の状態でボックスアウトしてペイントの外へ追いやる)。それぞれのパターンで練習する。オフェンス、ディフェンスともにリバウンドを取ったらシュートして、どちらかが得点するまでドリルを続けます。プレーヤーの組み合わせは、サイズ大小さまざまに組み替えます。

リバウンドはインサイドプレーヤーだけのものではない

──5番目の「ゲーム形式でオフェンスリバウンドの加点をつける」も、誰もがすぐに取り入れることができますし、リバウンドに対する意識を高めるうえで、とても良さそうですね。

荒井:はい。オフェンス側だけでなくディフェンス側にとっても、絶対にボックスアウトしなければならないマインドが生まれます。加点は通常1~2点で行いますが、私は3点でもよいと思っています。加点数が増えれば増えるほど、ディフェンス側の意識は上がります。このドリルを行う中で、どういうシチュエーションでオフェンスリバウンドを取られたのか──アウトサイドプレーヤーが飛び込んできて取られたのか、あるいはインサイドプレーヤーに押し込まれて取られたのか。コーチがそれらを分解して対処法を練習する、そういった展開が大切だと思います。

──最後に、荒井コーチがリバウンドに関して大切だと思っている要素を教えて下さい。

荒井:リバウンドと言うとインサイドプレーヤーがフォーカスされがちですが、競技レベルが上がれば上がるほど、ガードやフォワードが取ることが多いんです。Bリーグでは、外国人選手がティップしたボールをルーズボールとしてガードが拾うシチュエーションも頻繁に見られます。そうしたルーズボールを取れる選手が賢い選手だと思うし、リバウンドはガードが取りに行かないといけない、私はそう思っています。ブレックスでは田臥選手、鵤(いかるが)選手が実際にリバウンドによく絡んでいます。

【荒井コーチより、1DAYビッグマンキャンプのお知らせ】
「11/3(水・祝)に小学生〜高校生を対象とした1日完結型のビッグマンキャンプを開催します。本キャンプは、将来を見据えてオールラウンドプレーヤーになるために必要なファンダメンタルスキルを習得することが目的です。ブレックスではこれまで数多くのイベントを行ってきましたが、今回はチャレンジ企画で、プレーヤーの可能性を引き出すためにあえて無料で実施します。バスケットの経験がなくてもOKです。全国の高身長プレーヤーに、ぜひご参加いただきたいです」詳細は下記リンクをクリックしてご確認ください。

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