公開:2021/10/08
更新:2021/11/29
安城学園高校女子バスケットボール部監督・金子寛治
全国的にも名将の一人として知られる安城学園の金子寛治先生に、リバウンド指導の基本的な考え方について、改めてお話をうかがいました。ディフェンスに比べて、意外と疎かになりがちなオフェンスリバウンドにも獲得率を上げる原則が存在します。
ロッドマンの3つの秘訣
リバウンドの話をする時に、私自身よく題材にするのが1980~1990年代にNBAで活躍したリバウンドの名手、デニス・ロッドマンです。ロッドマンの成績で特徴的なのは、ディフェンスリバウンドと同じぐらい、オフェンスリバウンドを獲っているということです。通常はディフェンスリバウンドのほうが圧倒的に多いのですが、彼はオフェンスリバウンドも多い。これがリバウンドの名手たる大きな理由です。
ロッドマンがインタビューでリバウンド獲得の秘訣を語ったインタビュー記事があります。それによると、秘訣には大きく3つの要素がある、と語っています。その3要素に従い、私の考え方も含めて解説しましょう。これらは、主にオフェンスリバウンドが対象になっています。
1)予測:シュートの軌道を見て、どこに落ちるか予測する。シューターごとの傾向を把握しておくことと、予測するための訓練も必要です。ちなみに、シュートが外れた場合は70%が逆サイドに弾むと言われています。
2)ポジション取り:前後左右のスペースを確保する。リバウンドはジャンプを伴うので垂直方向のスペースに目が行きがちだが、水平方向が重要。これについて、私が指導に落とし込む際は「身体の向きがボードに対して平行になるように入る」と表現しています。ボードに正対していれば、横にボールが弾んだ際に容易にスライドでき、スペース確保につながります。
3)執念:具体的には連続ジャンプを示しています。連続ジャンプのパフォーマンスが、リバウンド能力に直結します。1回のみのジャンプと2回以上連続で跳ぶ場合は、必要となる筋力要素も異なり、私は、ふくらはぎの筋力が重要になると考えています。
ディフェンスリバウンド時のターンの原則
一方、ディフェンスリバウンドは、自分がどこのポジションで守っているかによって、動きの原則を踏まえることが重要です。1線はシュートチェックしたらターンしてコンタクト(フェイスtoフェイス)、2線、3線は、シュートが打たれた時の自分のスタンスによって、フロントターンするかリバースターンするかを選択します。クローズドスタンスで守っている場合はフロントターン、オープンスタンスで守っている場合はリバースターンが基本になります。どちらも、ターンの所要時間が短いほうを選択するということです。スクエアスタンスの場合は、フロントターン、リバースターンの両方有りです。
このように適切なターンを使って素早く自分のスペースを確保するというのは、ロッドマンの2項目め、「ポジション取り=前後左右のスペースを確保する」ことにつながります。
チーム戦略の例
チームとしてのオフェンスリバウンド戦略はまた別に考える必要があり、私たちのチームではケースバイケースで細かい約束事を決めています。例としては、2Pシュートの場合はシューター含めて3人リバウンド、2人セーフティ。3Pシュートはフリースローラインより近いシュートはシューター含めて2人セーフティで3人リバウンド。遠いシュートは4人リバウンド、等です。こうした約束事が徹底しているほど、オフェンスリバウンドは獲得しやすいと思います。
逆サイドに入る練習を重視しよう
リバウンドの練習法はいろいろありますが、オフェンスリバウンドで逆サイドに行くパターンは重視すべきだと思います。ストロングサイドでシュートが打たれた時、シューター以外のオフェンスプレーヤーはただボールの軌道を追っている、というケースが少なくないですが、敢えてウィークサイドに行ってリバウンドを取る練習です。早めに逆サイドに入っていると、シュートが短い場合は軌道を見ているとわかるので、シュートサイドに戻ることもできます。
ディフェンダーのポジショニングによって、上から回るケースと下から回るケース等。ハイポストからVカットして逆サイドに行くケースもあります。ウィークサイドでのバックスクリーン成立の場合と不成立の場合も、パターンに加えて練習すると良いと思います。
10回チャンスがあれば10回チャレンジする
ディフェンスリバウンドの練習は、1対1で、先ほど挙げた1線~3線のターンを繰り返して、正しい技術を身につけることが基本になります。基本技術がある程度身についたら、人数を増やしたライブの練習を増やしていき、映像を見ながら修正点を指摘していく方法が上達を早めると思います。シュートが外れれば必ずリバウンドが発生するわけですから、そのたびごとに正しい技術でリバウンドを獲りにいくチャレンジが出来ているか。10回チャンスがあれば10回チャレンジする。この積み重ねが大切です。
縄跳びのすすめ
連続ジャンプのパフォーマンスを高めるのにおすすめしたいのは、縄跳びです。私自身、プレーヤー時代に、ジャンプ力自体はそれほどなかったのですが、連続ジャンプは得意で、リバウンドも得意なプレーの一つでした。今振り返ると、小学生時代に二重跳びでの連続回数を競っていて、最高で300回以上跳んだリしていたのが良いトレーニングになったのかもしれません。ただし、特に女子選手の場合は疲労骨折のリスクもあるので、柔らかい路面(土の上)などで行うとよいと思います。
(2021年9月30日、オンラインにて取材)
■今回ご紹介いただいリバウンド理論は、金子先生自身が昨年から開設しているYouTubeチャンネルでも公開されています。
①オフェンスリバウンドの入り方 ↓
②ロッドマン NBA7年連続リバウンド王の3つの秘密 ↓
■ドリルのバリエーションは、金子先生指導・監修で制作されたジャパンライムDVD「“勝利を掴む!!”リバウンド理論&テクニック~金子寛治の実戦に即したリバウンドのすべて~」に詳しく紹介されています。