まずはシステム強化。そして長期スパンで育成していく

公開:2021/08/27

更新:2021/08/30

B2越谷アルファーズのU-18チーム岩井貞憲ヘッドコーチに、オールラウンダーの育成についてインタビューしました。Bリーグ全体として取り組み始めたシステムの中で、越谷ならではの個性を出しつつ、どのような育成プログラムを進めているのか。そのあたりをうかがいました。


岩井貞憲氏。取材はオンラインで行いました。

長期スパンを見据えた育成

オールラウンダーを育てるために最初に考えるべきは、ある程度の長期スパンを見据えた育成システムだと思います。選手の個性に応じた長期計画。現在私はU-18を担当していますが、この3年間だけでなく、U-15からの6年間、場合によってはもっと長い期間、一人一人の選手の成長に責任を持って取り組むシステムがとても重要だと感じています。この越谷アルファーズもそうですが、Bリーグのユースチームでは、各チームでそのようなシステムが構築されつつあります。

もう一点重要なのは「飛び級できる練習と試合環境」です。育成年代の指導をしていると、身体的にも技術的にも、そしてマインドの部分もある程度備わっていて、上のカテゴリーに挑戦させたい選手が必ず出てきます。そうした選手に対して、カテゴリーアップが可能な環境をあらかじめつくっておくこと。システム上とても重要なことであり、Bリーグのユースカテゴリーでは、全体としてU-15からU-18に飛び級できる仕組みがつくられました。とはいえ必ずしも飛び級がベストではなく、各選手に応じて一番成長できる環境を提供することが目的だと理解しています。

こうしたものが今後十分に機能してくると、長期育成の成果が出てくるのではないかと思います。サッカー界で言うと、東京オリンピックでも活躍した久保建英選手らが、まさしくこうしたシステムの背景があって育ってきた逸材です。日本のバスケットボール全体としての育成システムの重要性について、今回のオリンピック、あるいはその前に行われたU-19男子ワールドカップを見て、強く感じました。

要素を精査して、複合的な練習を組み立てる

フィジカル的に激しく戦いながらも高いレベルで状況判断をしていく力、肉体的にも精神的にもきつい状況の中で、最後まで戦い抜く力…オリンピックを見ていると、こうした能力が必要であると、痛感します。長期育成システムの下で、個々の選手の身体的能力、戦術的能力、心理的能力を総合的に高めていかなければならない、と。具体的には、練習中から、様々な要素が絡み合うシチュエーションを設定して判断力の養成を図る、といった取り組みがもっと必要だと思います。

私自身、練習内容を組み立てる際は、その練習に含まれている要素を精査し、たとえば「状況判断+コンタクト+競争+技術の発揮」といった複合的な組み合わせを意識しながら、いろいろと試行錯誤しています。

越谷アルファーズユースの特徴

私たちBユースの役割は、まずはトップチームに一人でも多くの選手を輩出すること、そして将来、日本代表として世界と互角以上に戦える選手を育てることです。その目的から逆算して、今何をすべきか、を常に考えながら育成プログラムを構築しています(図1)。

図1 育成PCDAサイクルの考え方

このPDCAサイクルを回すため、各選手の現在位置を知るツールとして使っているのが分析ソフトのHudl Assistです。各国で広く使われ、Bリーグユースでも数チームに導入されているソフトですが、これを用いると、たとえば選手個々の、各エリアからのシュート決定率をチャートで見ることができます。こうした客観的データを選手にも開示しながら、選手とコーチが協働して個々の課題克服に取り組んでいます。個人の課題はIDP(Individual Development Plan)と呼ばれるシートに書いて、短期・中期・長期の練習計画に落とし込んでいます(図2)。

図2 IDP(Individual Development Plan) 

また、越谷アルファーズの体制として、越谷アルファーズならではの強みだと思っているのが、、トップチームとユースチームをつなぐダイレクターという役職を置いていることです。このダイレクターが、トップチームの状況を踏まえながら、育成・練習が適切に行われているかを評価することでより客観性が高まり、ユース担当のコーチが閉塞的な状況に陥ってしまうのを防ぐことができます(図3)。

図3 写真右がダイレクターの青野和人氏。チームのGMも兼ねる。

カテゴリーが上がることにより個別化が進む

オールラウンダーという視点で見た場合、U-15とU-18では異なる部分も出てきます身長の伸びで不確定要素の多いU-15では、「ポジションレス」の考え方をベースとして、とにかくさまざまなポジションとシチュエーションを経験させる。そうして将来あらゆる状況に対応できる土台をつくってあげることが大切だと考えています。

U-18ではある程度身長の伸びが止まりますので、各選手の特性に応じて、上のカテゴリーでプレーするためのチャンスを拓くことを意識して指導しています。年齢と身長を踏まえてポジションや役割を明確化してあげることが大事になっていきます。180cm以下の選手たちはガードとしてスペシャリストの方向性が見えてくるだろうし、190cm以上の選手はポジションレスというわけではなく、選手の特性をみてPG、SG、Fなのかある程度の方向性を示すことが大事になっていきます。200cm以上の選手であればインサイドにウェイトを起きながらも、アウトサイドのプレーは継続させていくなどです。年代が上がることによって、全体化から個別化が進んでいくのは必然だと思います。


岩井 貞憲 Teiken Iwai

東京YMCA社会体育保育専門学校 卒業後、株式会社ERUTLUC「バスケットボールの家庭教師」にてコーチの活動を始める。2018年よりアースフレンズ東京ZのU15ヘッドコーチ就任。創設の年にBリーグ U15 CHAMPIONSHIPにて3位、Bリーグ U15 チャレンジカップは優勝を果たす。U15 チャンピオンシップでは3年連続3位、東京都U15バスケットボール選手権では2年連続優勝を果たす。2021年5月より越谷アルファーズU18ヘッドコーチに就任しU18よりプロ選手輩出を目指す。

(2021年8月6日、オンラインにて取材)


>>>過去の特集記事を読む

あなたの悩みや疑問に“あの”名将が答えます。
回答は、当サイト内で順次公開!
名将からのアドバイスでより良いコーチになるチャンスです!