練習中の「チームミーティング」をルーティン化し、問題解決力を強化

公開:2021/03/12

更新:2021/05/07

福岡大学附属大濠高校バスケットボール部ヘッドコーチ・片峯聡太

福岡大大濠高校では、ミーティングをいくつかの形式に分け、それぞれの役割も明確にして使い分けている。選手同士のコミュニケーション不足で失敗も経験した中で、たどりついた現在の方法は? (以下、片峯コーチの話を要約して掲載しています)


「会議」と「ミーティング」を使い分ける

「会議とミーティングの棲み分けをしています。まず会議として最も重要なのが、新チーム結成時。ウインターカップが終わって新チームがスタートする時は、時間をかけてチームの活動指針、スローガンなどを全員に伝えます。チームを運営していく上で、共通認識の軸となる部分を全体で共有する場です。新チームスタート時(12月)と、新1年生が入ってきたとき(4月)の通常年2回、きっちり資料を作って、1時間から1時間半ぐらい私が話をします」

「ミーティングは、会議で共有できたチームの方向性を前提として、目標を達成するために、具体的な実現策や改善策を検討する場。理念を具体的な行動に落とし込むフェーズと考えています。ミーティングの精度を上げていくために、その土台となる会議でしっかり共通認識をつくることを重視しています。」

「高校チームとはいえ組織であるので、組織の構成員全員が同じ方向を見ていることが大切。そうでないと、”何のための話し合いか”という部分がぼやけてしまいます」

目的と目標の理解

「会議において理解してもらう最重要事項は、目的は人間教育であり、目標が日本一であること。ただバスケットで結果を残すということでなく、バスケットを通じて人間として成長してほしい。この根底の部分を理解した上で、日々の練習を頑張る。この部分を強調して伝えています」

「勝つために努力することで、何を得られるか。ここにフォーカスしているのが大濠のバスケットボールです」

毎日のミーティング

「練習前、学年ごとに集まってその日の内容を確認。練習後は私が簡単にコメントを述べた後、学年ごとのミーティング。その後全体でのミーティングという流れです」

「練習前後のミーティングには私は参加しません。参加していた時期もあるのですが、指導者対選手(教員対生徒)の関係性がある中で、どうしても選手たちは遠慮してしまいます。彼らの率直な意見を引き出すには、私が参加しない場が必要だと考え、現在の形になりました。いろいろ試す過程で、関わりすぎもいけないし、放任もいけないし、さじ加減は難しいと感じています」

「私が関わりすぎると、一見、皆が熱量を持ってやっているように見えますが、誰も意見を言わなくなる。私と選手個々とのコミュニケーションがうまくいっていているだけでは不十分で、いざ試合になれば、選手同士のコミュニケーションが重要になります。選手間コミュニケーションの不備が表面化してしまった失敗も経験しました。その経験から、選手同士のコミュニケーションに重点を置く方向に軸足を移しました」

チームとして、個人としての問題解決能力を強化

「現在では、練習中に必要だと判断したら、私から”チームミーティング”と指示を出し、30秒とか1分間でサッと集まって話をするルーティンが日常化しています」

「そこでは、まずは肯定的な話から始めて皆が耳を傾ける姿勢をつくり、その後、悪かったところを指摘し合い、改善策を議論します。Good-Bad-Nextの流れ。冬場から春先にかけて、このチームミーティングの頻度を意図的に増やし、試合期に向けてプレーの精度を高めていきます。このルーティンを繰り返すことにより、問題解決のスピードも早くなっていきます

課題・問題を発見する能力、個人として解決策を考える能力、そしてチーム全体で解決する協働力。これらは、どの分野であっても社会人として必要なものであり、日々の練習は、バスケットを通じてそのプロセスを学ぶことができる絶好の機会だと考えています」

自分が信じる内容を、熱量を持って伝える

「選手と年齢の近い若い指導者が、経験豊富なベテラン指導者と同じ内容を話しても響かないです。若いうちは、自分が信じる内容を、いかに熱量を持って伝えられるかがカギだと思います。何か事を成すには、すべて熱量から始まると思っています。私自身、その熱量先行のところからスタートし、最近は指導している内容の説得力を増すために、統計的数値や映像を用い、できるだけ客観的かつ正しい評価を選手たちに伝えるようにしています」

良いミーティングとは

「端的で、長くないこと。長いミーティングは、指導者側は話した気になるが、効果は薄いと思います」

「一度に3つ以上のことは要求しない」

「カラ返事には気をつけること。カラ返事をさせないためには、こちらが”いいか”とか”わかったか”という言い方をしないよう気を付けています。双方向のコミュニケーションが成立しているかどうか、確認しながら前に進んでいけるように」

「入り」のテクニック─7秒間沈黙と黙想

「話し方のテクニックとして、人前に立ったら7秒間沈黙する。これで注意を向けさせる。麻生太郎財務大臣の実弟の麻生泰さんがおっしゃていたのを聞いて、実践しています」

「また、特に小中学生に話をするときは、はじめに黙想、深呼吸をさせます。これで気持ちが落ち着いて、話が聞ける状態になる。これは、西福岡中学の鶴我先生が実践されているのを参考にさせていただきました。バスケットと同じで、入りが重要。入りがうまくいけば大きく崩れることはないと思います」

(2021年2月9日、オンラインにて取材)

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片峯 聡太 Sota Katamine

1988年、福岡県出身。飯塚一中→福岡大附大濠高→筑波大。大学卒業と同時に、故・田中國明氏の後継者となるべく母校へ赴任。バスケットボールの指導者というだけでなく、教員としても周囲からの信頼は厚く、評価も高い。また、思い切ったポジションのコンバートで、卒業後に高いレベルで活躍する選手も多くいるなど、先見性に優れる。

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