いつでも練習を止めて、選手同士で話ができる環境をつくる

公開:2021/03/19

更新:2021/05/07

丸亀市立南中学校 教諭 Verde Marugame ヘッドコーチ・北本 真司

中学校の部活とクラブチーム指導の両方を経験している北本コーチは、選手対指導者の関係性が部活とクラブチームでは選手との付き合い方が異なる中で悩みつつ、この世代の選手たちが上のカテゴリーでバスケットボールを続け、一層飛躍できるための下地づくりを念頭に、ミーティング運営も工夫を重ねています。(以下、北本コーチの話を要約して掲載しています)


心の成長とチーム内の意思統一

「選手たちの心の成長とチーム内の意思統一。この2つの面で、ミーティングは非常に重要だと考えています。心の成長(人間力)を高めるために、いろいろな方々の言葉を引用したり、私自身これまで経験してきたことを題材に話をしています」

「目標と目的は異なること。全国大会出場だったり、全国優勝という目標を掲げるが、目的は人間力を高めること、そして高校・大学と上のカテゴリーに進んだ時に役立つ技術的・体力的・人間的な基礎力を身につけてほしい。これらを終始一貫して伝えています。競技成績として目標を達成できなかったとしても、目的の部分をできるだけ達成して進学先に送り出したいと思っています」

「中学校の部活とクラブチームの両方を指導してきましたが、両者の一番の違いは、子ども達の日常生活を見れているかどうか。中学校では教員として、バスケットボール以外の学校生活の状況や家庭生活をある程度把握できているため、個々に合わせて心の成長を促すバックアップもしやすいのですが、クラブチームでは接触時間が短く、そのあたりが不足しがちです。ミーティングを通じて穴埋めするようにしています」

フィロソフィーを毎回、紙に書き出して手渡す

「どのように伝えるか、”言葉”を大切にしています。そのために著名人や私が尊敬する指導者の言葉をしばしば引用します。もう一つはタイミング。この内容を伝えるタイミングは今なのか、それとも別の時なのか。慎重にその判断をしています。タイミングの選択に関しても、毎日顔を合わせる中学校の部活は比較的容易であるのに対して、週2~3回のクラブチームでは難しさを感じています」

「日常のコミュニケーションが比較的深く成立している中学校の部活は、日々の練習では簡単な反省会を開く程度で、ミーティングは必要に応じて招集します。これに対してクラブチームでは毎回の練習後、必ず5~10分間ミーティングの時間を設けて話をしています。ある程度計画的に話す内容を決め、プリントも配布して、私が考えるバスケットボールのフィロソフィーを少しずつ理解してもらいます」

「実例として、クラブチーム(Verde Marugame:ヴェルディ丸亀)の新チーム1回目の練習では、Verde Pride(ヴェルディ・プライド)としてチーム全体で共有すべきスローガンを伝えます。

「言われなくても、見られてなくても、怒られなくても、自分で考え、判断し、行動できる」

2回目では、

「他人より上手くなろうとしてはいけない。常に最高の自分になるための努力をしなさい」(ジョン・ウッデンの言葉)

「このような形で、毎回、伝えたいことを文字に落として手渡ししています。プリントをまず音読させてから説明に入ります。視覚と聴覚両方に訴えて心に刻んでほしいとの思いからこの方法を採用していますが、気を付けているところは、子どもたちの目線がプリントに落ちた状態で話をしないこと。顔を上げてもらい、しっかり目を見ながら話をするようにしています。子どもたちの後ろで保護者の方々も話を聞いているので、それも意識しながら言葉を選びます」

いつでも練習を止めて選手同士で話ができる環境を

「選手同士のコミュニケーションを深める手段として、練習中のミーティングも重視しています。中学校・クラブチーム共通で、何か話したいことがあれば、いつでも練習を止めて選手同士で話ができる環境を作っています。初めはできなくても、「今のこのプレー、話をしておかなくていいの?」とこちらから催促していくうちに、次第にできるようになります。計画した練習内容の進行が遅くなったとしても、選手たちが納得するまで話をさせます。そこは指導者側として我慢しなければならないかと思います」

「特定の選手でなく、誰もが手を挙げて練習中にミーティングできるようになることが、良いチームになっている一つの証ではないかと思う。指導者として、そのための下地づくりができれば、と常々考えています」

(2021年2月17日、オンラインにて取材)

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北本 真司 Shinji Kitamoto

丸亀市立南中学校教諭。前任校の丸亀市立綾歌中学校では、チームを全国大会ベスト16に導き、丸亀南中学校でも全中出場を果たす。また、クラブチームのVerde Marugameでも、ヘッドコーチとしてチームを第1回Jr.ウインターカップ出場に導き、育成年代の指導者として確かな実績を残している。ジャパンライム社の好評既刊DVD『ジュニア期からできる「スパイラルオフェンス」コーチング バスケットボール』の監修も務めた。

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