モチベーションアップして部屋から出て行けるように

公開:2021/03/26

更新:2021/05/07

聖和学園高等学校女子バスケットボール部ヘッドコーチ・小野 裕

小野コーチからは「ミーティングの場では冷静になれるので、しっかり褒めてやるようにしている」「詳細なプレゼン資料を作ってミーティングした時期もあったが、情報量が多すぎて選手が頭でっかちになってしまった」といった泥臭い体験談をいただきました。日々コミュニケーションの質を高めるために奮闘する姿が映し出されます。(以下、小野コーチの話を要約して掲載しています)


ストロングポイントと改善点を冷静に考えていける場

「昨今言われているとおり、高校生世代のコミュニケーション能力が低下していると感じていて、ミーティングの重要性は高いと思います。注意していないと、選手とコーチ間、あるいは選手同士で共通理解が得られない状態で練習を進めてしまうパターンに陥ってしまうので、ミーティングを見直してうまく活用するように心がけています」

「コート上では私自身、ダメ出しが中心になってしまいます。ミーティングの場では冷静になれるので、しっかり褒めてやるようしています。チームの現状で良いところ(ストロングポイント)にも触れながら、改善点を選手とともに考えていける時間。また、ベンチに入れない選手の存在に光を当て、その子たちがいるおかげでチームがうまくいっていることを伝える場としても、ミーティングを活用します」

練習の中で発見を促す

「週1回、月曜日にミーティングの時間を取っています。指導者が長く話をする形は受け身になってしまってよくないので、できるだけ選手が自発的にコミュニケーションを深める場にしたい。題材を与えて選手たち主体で話をしてもらうことを重視し、私が意図的に中座することもあります。プレーについて正答を教えるのではなく、練習の中で発見を促すような問いを設定するといった形も意識しています」

「いつでも意見を言い合える雰囲気をつくろうとした時期もありましたが、なかなかうまくいかない。学年間の壁を越えてコミュニケーションを取ってほしいという思いで、今年の新チームでは選手同士で行うミーティングも設定しています。フラットな関係で下級生が上級生に考え方を伝える場として、あるいは上級生が下級生を助ける気持ちを醸成する意味で、うまく機能しているのではないかと思います」

過去の失敗談─選手が頭でっかちになってしまった

「スカウティング動画も駆使して詳細なプレゼン資料を作り、それを用いてミーティングした時期もありました。しかし、情報量が多すぎて選手が頭でっかちになり、相手が予期せぬ動きをした時に対応できませんでした。受け身の状態で戦ってしまい、全国大会で敗退してしまった。本来持っている自分たちの良さを出し切れないままの敗戦であり、自分自身にとっても苦い経験。この時のミーティングは、皆で作り上げる場ではなく、一方通行、自己満足であったと思いました」

モチベーションアップして終われるように

「言葉の引出しがあればあるほど、選手を惹きつけることができると実感しています。大学時代の恩師が、先人の言葉をよく引用して話をして下さる方でした。それも参考にしながら、他競技のオリンピック選手や、時には戦国武将の言葉なども引用しながら話を組み立てています。 さらに女子の場合、全体ミーティングとは別に個人へのアプローチも重要になるので、ノートのやり取りでフォローしています」

「ミーティングで一つのゴールと考えているのは、モチベーションアップ。戦う集団として、”よし行くぞ”と士気を高めること。ミーティング終了後に下を向いて部屋から出ていくのではなく、士気が高まった状態で終われるように、常々考えています。

(2021年2月19日、オンラインにて取材)

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小野 裕 Yutaka Ono

筑波大学卒。宮城県内の公立で10年間男子の指導を経験したのちに、聖和学園女子バスケットボール部の監督に就任。2018年にはインターハイとウインターカップでベスト16に進出した。U18女子日本代表のアシスタントコーチとしても活躍。

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