ミーティングをする目的は、”チームにとって良い行動をしてもらう”ため

公開:2021/04/02

更新:2021/05/17

東京医療保健大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ・恩塚 亨

ミーティング特集で最後にお話をうかがったのは、本サイトでもたびたびご登場いただいている東京医療保健大学の恩塚亨氏です。選手の行動変容にフォーカスし、それを促すミーティングの考え方と手法について簡潔に語っていただきました。 (以下、恩塚氏の話を要約して掲載しています)


やりたくなる気持ちにさせる

「何のためにミーティングするか? と問われたら、期待する行動をしてもらうため、チームにとって良いと思われる行動をしてもらうため、です。どんな行動をしてもらいたいか、について、伝える側に明確なイメージがあって、受け手側がそれを十分に理解して、具体的な行動につながることが大切だと思っています」

「ただし受け手側は、やりたくなければ行動は起こさない。だから、やりたくなる気持ちにさせる。“わかる”だけでなく、“やりたくなる”こと。その時のテーマが何であっても、ここに重点を置いています。いかに短い時間で“やりたくなる”状態までもっていけるか、がミーティングの成否を左右すると思います。終了後に、熱い気持ちで“これをやろう”というフォーカスが定まっていなければ、ミーティングをやった意味がないです」

「話をすること自体が目的ではないですから。具体的なゴールを設定してからミーティングを始めないと、時間の無駄になります。 ですから、試合直後にはミーティングをしません。選手はもちろん私自身も頭が整理できていないし、感情的にも高揚している状態で話をしても意味がないです。繰り返しになりますが、“チームにとって良いと思われる行動をしてもらうため”の話ができなければ、ミーティングをしても仕方がない。そのための準備ができた状態で実施することを心がけています」

冒頭で、今日は何の話で、トピックが何個あるかを伝える

「伝える側として常に意識しているのは、“伝える”と“伝わる”は違うということ。さらに、伝わったとしても、やりたくなって、実際の行動が変わらなければならない。この点です。話し方としては、まず冒頭で、今日は何の話で、トピックが何個あるかを言います。それから、同じ内容を繰り返して伝えること。初めから10回必要だと思って話していると、1~2回で相手が理解してくれなくても腹が立たないです(笑)。大学生の年齢でも4~5回同じことを言わないとわからない、と実感しています。 一度に話をする時間としては、体育館であれば5~10分が目安。教室を使う場合も15分。経験上も、やはり長いのは良くないと思います」

“自分事”にさせることで理解度の歩留まりを上げる

「毎回の練習前にスタッフミーティングをします。ここでのテーマは“最高の練習をするためには?”です。ブレスト的にいろいろな選択肢を挙げ、最適なものを選ぶ。その後で選手を加えたミーティングに移ります。そこでは、その日の練習を最高の練習にするための、具体的な目標の共有(ビジョンの共有)」

「選手だけでのミーティングは、以前は定例化していましたが、現在はやっていません。やっているのは、セカンドミーティング的に、選手にアウトプットさせる形。たとえば、私が話をする機会に参加できなかった選手に対し、参加した選手が伝える。アウトプットの過程で理解が進むし、記憶が定着します。それを意図して、選手間でプレゼンテーションしてもらいます。そこでは映像も使わせる。“自分事”にさせることで理解度の歩留まりを上げる狙いがあります」

映像はゲームに与えるインパクトを基準に厳選

「映像を見せる効果は高いと思いますが、おおむね2分以内にしています。ゲームに与えるインパクトを基準にして、その重要度の高いプレーを取り上げるようにしています。または、チームの原則を再確認するためのプレー。選手側から、“わかりません”とか、“もう一度見せてください”といった声が出てくることは少ないので、ビデオを流しながらも選手たちの表情に注目するようにしています。その映像を見てもらっている意図を理解していなければ意味がないので」

良いミーティングとは?

「ミーティング終了時に、自分のやることが明確で、ワクワクした気持ちで練習に向かえること。ここに尽きます」

「あとは、コーチ自身が学び続けて、選手に学んでもらえる話ができることが大切だと思います」

(2021年3月3日、オンラインにて取材)


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恩塚 亨 Toru Onzuka

1979年、大分県出身。バスケットボール女子日本代表アシスタントコーチ、東京医療保健大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ、東京医療保健大学准教授。2006年、東京医療保健大に女子バスケットボール部を創設し、並行してアナリスト、テクニカルスタッフとして日本代表チームに関わる。その高い分析力と指導力を生かし、2017年、創部12年目にしてリーグ戦&インカレともに初優勝。その後、インカレ4連覇を達成した。

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