【特集:ロングシュート】肘の位置を柔軟に変化させ、下半身のパワーをボールに伝える 

公開:2022/01/21

更新:2022/03/04

神奈川県を拠点として、バスケットボールスクールを展開しているバリューワークスの赤津誠一郎さんに、「ロングシュートの精度を高める」をテーマにお話をうかがいました。高い打点でシュートを打つ癖がついてしまっている選手が多く、それを改善することでシュート力が改善する、その考え方とメソッドです。


赤津誠一郎さん。オンラインでお話をうかがいました。

打点が高いと力がボールに伝わらない

ロングシュートが届かなかったり、精度が悪かったりする選手の特徴として、「打点(リリースポイント)を高くする」ことを意識しているケースが多いです。ボールの位置を高くしようとするので肘が挙がってしまって、下半身から生まれた力をうまくボールに伝えることができずに、腕の力(肘と手首を伸ばす力)だけでシュートせざるを得ない状況に陥っています。

幼少の頃から「打点を挙げなさい」という指導を受けて育ってきていると、肩も挙がった状態でシュートを打つことになり、ボールに与える推進力が非常に制限された状態になります。

このようなシュートは、わかりやすいたとえで言うと、腕を頭上に挙げて万歳した状態でジャンプするのと同じで、とても窮屈であり、下半身のパワーを末端に伝えるのが難しいことがわかります。

私たちはミニバスからプロまで数多くの選手を指導してきましたが、肘の位置を高くするシュートが癖になってしまっているケースが、非常に多い印象があります。3ポイントシュートがなかった時代、近距離シュートでディフェンダーをかわす技術として打点を高くする形が良しとされ、その名残があるのではないかと思います。

3ポイントラインも6.75mまで延び、それよりも後方からディープスリーを打つことも要求される現代バスケットボールにおいては、打点を高く、という考え方は不利になってしまいます。

ドロップスクワットジャンプで感覚をつかむ

肘の位置を高くする癖がついてしまっている選手には、ドロップスクワットジャンプが有効です。ドロップスクワットは、近年バスケットボール界で注目されているエクササイズの一つで、立った状態から素早くしゃがみ、自分が最も力を発揮できるパワーポジションまで、できるだけ早く重心を落とします。そこからの切り返しで、腕の振り上げと股関節の伸展動作を使ってジャンプします。

私たちは、この動作にボールを持って行うなどのバリエーションを加え、実際のシュートにつなげていく、といった指導を行っています(下記動画参照)。こうしたエクササイズで全身を連動させる感覚がつかめると、選手たちは短時間のうちにロングシュートが上達していきます。

それでも長年の癖で、どうしてもリリースポイントが高くなってしまう選手がいるので、シュートの距離に応じて肘の位置を柔軟に変化させることを、繰り返しの練習で習得してもらいます。バスケットまでの距離が長くなるほど、肘の位置は下げなければなりません。

シュートの本質を知った自身の体験

私たちが運営しているバリューワークスでは、ここまで説明したようなシューティングテクニックをわかりやすく理論体系化し、指導対象の選手たちが段階的に正しい技術を身に着けられるプログラムを提供しています(Flexシュート理論)。

シューティングテクニックを理論体系化したのには、私自身のプレー体験が大きく関与しています。小学生からバスケットボールを始めましたが、シュートフォームについて、詳しく理論立てて教えてもらったことがなかったんです。自分自身も打点の高いシュートを打っていて、中学生時代は3ポイントが届かない、あるいは、社会人になりしばらくバスケットから離れた時期があって、その間に6.75mに距離が伸びたので、以前のシュートフォームで打ったら全く届かない…といった経験をしてきました。

そんな折、現在B3ベルテックス静岡でスタッフを務めている竹原勝也コーチと出会い、シュートフォームついて初めて納得のいく説明をしていただきました。私としては稲妻が落ちるような経験でした。その後、竹原さんと一緒に渡米して勉強するなどしながら、日本人選手が学びやすいように体系化しました。

手首をロックした状態で行うドリル

肘の位置を柔軟に変化させつつ、パワーの伝達を身につける練習法として、私たちがよく行うのがフォームシューティングドリルです。これは渡嘉敷来夢選手らもウォーミングアップでよく行っている有名なドリルで、手の平にボールを載せて片手だけでシュートを打つものです。私たちこれを、“手首をロックした状態”、つまりフローターで行います敢えて手首のスナップを利かせない状態にして、お腹に力を入れた姿勢をつくり、下半身のパワーをうまく伝えながら最後に肘を伸展させてフローターを打ちます。

手首を使わない理由は、手首のスナップだけでボールにアーチがかかってしまうので、それを封印し、肘と肩の使い方だけでボールにアーチをかけるするためです。このドリルは効果抜群ですから、ぜひ試してみていただきたいと思います。

ロングシュートの補強トレーニング

あと補強的なトレーニングとしては、ドロップスクワット系のエクササイズはもちろん、手幅の狭い状態の腕立て伏せで上腕三頭筋を鍛えたりとか、スナップ力を鍛えるために湯船の中で手首の屈曲伸展動作をするエクササイズもおすすめです。その時注意するのは、指を伸ばして、手首がまっすぐな状態で屈曲伸展すること。子どもたちを見ていると、シュートを打つ瞬間に指先に力が入って指が曲がってしまうケースや、手首を捻ってしまうケースが少なくないので。


赤津 誠一郎氏 プロフィール 21歳時に起業し、飲食・サービス店を5店舗経営。28歳時に次の挑戦のため会社を売却し、IT業界へ転身。入社半年でMVP受賞。その後、3社で研修講師や営業部長、経営企画室室長、役員などを務め、36歳時に再独立。ITコンサルティングをメインとし、バスケットボールによる教育事業を行う。チーム・個人を対象に指導実績多数。バリューワークスのスクール事業については、右記をご参照ください。>>> https://valueworks.jp/

>>>アンケート調査報告:「ロングシュートの精度を高める」を読む


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