【特集:ロングシュート】倒立やぞうきんがけで身体能力を高め、シュート力につなげる 

公開:2022/01/28

更新:2022/03/04

ロングシュートのアンケートにご回答いただいた中から、低い年齢層に対する取り組み例を一つ紹介します。お話をうかがったのは、福島県須賀川市を拠点に活動しているクラブチームSukagawa-abcの鈴木仁美コーチです。


手の指が開かない、手首が曲がらない子どもたち

Sukagawa-abc(須賀川アカデミックバスケットボールクラブ)は小中学生を中心とする地域密着型のバスケットボールクラブ。2022年1月現在、約70名の会員がいる。

子どもたちを指導していて鈴木さんが感じてきたのは、バスケットボールをプレーする以前の、基本的な身体能力が不十分な子が多いということだ。例えば「手の指が開かない」「手首が曲がらない」等。これらは、今回のテーマであるロングシュートにも直結する要素であり、ボールハンドリング全体、つまりバスケットボールのプレー全てにつながる。

これらの問題に対処するため、同クラブでは、ウォーミングアップとクーリングダウン時に、「なわとび」「風船」「倒立」「手押し車」など古典的な運動を敢えて取り入れてきた。「風船」は、風船を膨らませること。口だけで空気を送り込んでも、うまく風船は膨らまない。体幹を固めて、腹式呼吸でしっかり空気を送り込むことにより、簡単に風船は膨らむ。

また「倒立」はこの中でも特に重視しており、身体をコントロールする能力を開発するには最適だ。最初は壁に向かって行い、次にパートナーが足を支える方法、最終的には自立して歩けるようになることを目指している。倒立は、前述した手指や手首の可動性向上にも役立つ。

手指や手首の可動性という意味で、もう一つ行っているのが体育館のぞうきんがけ。練習の最後には、全員でこれをやる。鈴木さん曰く「昭和時代に戻ったような光景」だが、明確な目的をもって、トレーニングの一環としてこれをやっているところが味噌だ。

鈴木さんによると、こうした取り組みで子どもたちの体の軸がしっかりとして、いい姿勢を保つ習慣ができ、手の平でボールを支えられるようになる。

発育・発達に応じた指導方針

小中学生年代は成長期で、成長度合いも個人差が大きい。身体の変化に対応してどのように指導すればよいか。ここはすべての指導者が悩むテーマであり、鈴木さんたちも日々模索を続けているが、現在は、おおむね下記のような方針で指導を行っている。

年齢でくくることのできない発育状況への対応は…

【主に小学校低学年】

・あえて高いリングにして、ボールが届くようにする。そのために身体をどう使うか?は、子どもたちが自然に習得する。届くとうれしい。届けば入る。

・ただし、リリースの習得については、まっすぐ飛ばすことが必要なので、成長に合わせた(片手でも届く)高さに調節して練習する。

【経験の浅い成長期のU15(11~14歳ぐらい)】

・パワーポジションの徹底。脚でも腕でも自重を支え、姿勢を保つことで体幹は強くなり、バランスも良くなる。

さらに、発育状況に関係なく、指導面で心がけていることは…

・自分のタイミングさえ合えば、どんな時でもシュートを打つ

→打ったなきゃ入らない。入るまで打つ。自分のシュートの感覚を知る。発育段階では、バランスが悪くなり精度が落ちることもある。このこともプレーヤーに伝え安心させる。

・パワーの連動

→動画を見せることで、タイミングをつかませる。小学校高学年や中学に入ってからバスケットボールを始めた子はこれが特に苦手。時間をかけてコツをつかませる。

・個別に時間をかける

→シュートの練習は飽きないので、時間をかけて練習しながら、個別にフォームや身体の使い方を修正する。

・下肢のバランス

→陸上競技のジャンプ系トレーニングを行う。

Sukagawa-abcの皆さん


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