公開:2022/03/11
更新:2022/09/13
B1広島ドラゴンフライズのU15チームでヘッドコーチを務める尺野将太さんに、同チームで行っている新人向けメニューの一端をうかがいました。怪我を予防するための身体的な準備と動きを身につける、がテーマです。
──新入生に対する特別メニューに関するアンケート項目で、「怪我予防のための動きづくり」とご回答いただきました。具体的にどんな取り組みをしているか、概要を教えてください。
尺野:年代関係なく、大半の選手たちは試合で活躍したいと思っているし、バスケットボールがうまくなりたいと思っています。そのためには練習することが必要です。しかし怪我をして長期離脱を余儀なくされれば、練習を継続することの大きな阻害要因になります。
ですから長期離脱しないための身体づくりと動きづくりを初期段階で行うことが必要だと考えています。ボディコンタクトのあるスポーツですから、不可抗力による突発的な怪我を100%防ぐことはできませんが、「身体と動きを良くする」ことで予防できる怪我は、慢性的なものも含めて数多くあります。この部分を重視して新人たちを指導していくことが大事である、と。
体幹を締めてプレーすること、正しいストップ動作をすること
──いろいろな要素があると思います。特にフォーカスしているのはどういった要素でしょうか。
尺野:バスケットボールの怪我で多い部位は、足首・膝です。これに腰痛を含めると長期離脱の大半を占めることになります。これらは相手とのコンタクト時に発生することが多いです。新入生とっては、カテゴリーが上がることによってコンタクトの強度が高まる。そのことで発生頻度が上がる傾向があると思います。ですからコンタクトに対する身体的な準備と動きを身につけること。具体的に言うと体幹をしっかり締めた状態でプレーすることが重要です。
もう一つはストップ動作。止まれなかったりとか、止まり方が悪くて怪我をするケースが多いので、これを防ぐために正しいストップ動作ができるようにすること。膝が伸びた状態で止まってしまう、あるいはつま先と膝の向きがずれた状態(ニーイン・トゥアウト)で止まってしまう。これを防ぐためには、股関節の使い方がキーになります。股関節がうまく使えていないと、ストップ時につま先重心になり、大腿四頭筋に負担がかかって膝の怪我に結びつきます。あるいは脛の前脛骨筋に負担がかかって足首の怪我につながります。ストップ時はつま先でなく踵で体重を受け止めて、身体裏側のハムストリングス・大臀筋・中臀筋を使って止まれるようにする。これがとても重要な基礎です。これらの筋肉が使えていなければ使えるようにするし、使えていればそれらを筋力アップしていく。
ミニバス時代の怪我がプロまで尾を引いている
──尺野さんは、以前トップチームのヘッドコーチをされていましたが、現在はU-15を担当なさっています。育成世代の選手たちを指導する立場で、改めて感じていること、考えていることをお聞かせいただけますか。
尺野:ミニバスからU15に上がってくる中で、あまりにも怪我をしている子が多いということです。小学生の段階で、慢性的な怪我を抱えている子が多すぎる印象があります。練習のやり過ぎ、あるいは怪我に対する認識の甘さ(軽い捻挫だから、と軽視してしまう傾向)といった問題を含みつつ、先ほど触れた「動き方」「身体の使い方」が不適切であることが怪我を誘発している、あるいは怪我を慢性化させてしまっている可能性を感じます。
プロに入ってきた時に足首に慢性的な怪我を負っているケースの原因をたどっていくと、ミニバス時代の捻挫だった、その時は軽い捻挫だと思って練習を休まずにいたら癖のようになって、そのままずっと後を引いている例も少なくありません。こうした怪我は、今日最初にお話ししたバスケットボールからの長期離脱につながるだけでなく、選手を引退した後の人生においても、日常生活に支障を来す結果になりかねません。その意味でも、怪我は減らしたいのです。
体幹を締め、パワーポジションをつくる段階的エクササイズ
ここから先はエクササイズ編。まずは体幹を締める感覚をつかみ、それを強固なパワーポジションにつなげていく段階的アプローチを尺野氏にご教示いただいた。
1.息を吐く:お腹からしっかり息を吐いて風船を膨らませる。
2.息を吸う:息を吐き切ったら、お腹が膨らむように息を吸う。
3.胸で吸う悪い例:息を吸った時に胸が膨らんでしまう。
4.ブレーシング:お腹が膨らんだまま息を吸って吐く。
5.骨盤を立てる:腰が反ったり丸まったりしない。
6.ヒップリフト:仰向けで踵を天井に向けて、背中をまっすぐにする。腰が曲がってくの字にならないように、しっかりと骨盤を立てる。
7.パワーポジション:骨盤を立てた状態で背筋をまっすぐにする。膝が前に出ないようにし、お尻を後ろに突き出してハムストリングスとお尻の筋肉で姿勢を支えることを意識する。
8.パワーポジションの悪い例:腰が反る(骨盤前傾)、あるいは背中が丸くなる(骨盤後傾)。
>>>この記事の後編「正しいストップ動作を身につける」を読む。
>>>「新入生を迎える環境づくり」アンケート結果概要 前編を読む。
>>>「新入生を迎える環境づくり」アンケート結果概要 後編を読む。