公開:2022/06/03
更新:2022/08/09
個人スキル向上のための動画活用について、アンケートに回答していただいた指導者の中から、個別例を取材する2例目。北海道浜頓別高校バスケットボール部の澤田健太ヘッドコーチにお話をうかがいました。
お手本映像をライブラリー化して活用
人口3400名ほどの小さな町にある北海道浜頓別高校のバスケットボール部は、部員数が10名に満たない小規模のチーム(現在は男子チームのみ)。プレー経験の浅い選手が多いこともあり、練習は個人スキルに重点を置いている。本特集の実例1で紹介した津田学園高校と同様、主に新しいスキルの導入時に動画をよく活用しているという。お手本となるプロ選手のプレーなどを見せて、イメージを作ってもらうのが目的だ。
お手本の映像は、澤田氏が自身の趣味も兼ねて視聴しているBリーグの試合映像やハイライト映像で参考になりそうなプレーがあったら、再生時間をメモしておく。あるいはYouTubeやツイッターなどでスキルコーチらが投稿している映像を、項目別にリスト化しながら蓄積しておき、その中から必要に応じて、適宜、抽出している。自身のライブラリーを普段からある程度整理しているので、必要な時に抽出することはそれほど難しくないという。
「相手との接触の仕方、ステップの踏み方、ボールを持つ位置など、プロ選手たちが細かいところに気を配りながらプレーしている場面を切り取って説明します。一流選手のプレーが、どのようなスキルによって成り立っているのか、分解して見ていくことで高校生でも参考にできる部分はたくさんあります」
選手たちに動画を見せる際は、体育館でプロジェクタを用いる。コロナ下で休校があった時期はGoogleドライブやGoogleクラスルームで共有し、各自で見てもらうこともあったが、現在はプロジェクタ、あるいはPC画面で直接見せている。部員が少人数ゆえ、それも可能な状況だ。
スキルイメージのギャップを埋める
澤田氏には、今回のアンケートで動画活用の効果について、「コーチ目線では出来ておらず課題があると感じていても選手自身は出来ていると思っていることが多かった」とのご回答をいただいた。これには共感する指導者も多いのではないかと思い、具体例をお聞きしてみた。これはお手本映像ではなく、自チームの映像を見て学ぶケースだ。
「たとえばドリブルからレイアップにいく際、私としては相手にコンタクトしてしっかり押し込んでからシュートにいってほしいのですが、相手に触れているだけで満足していたりとか、相手が隣にいるから身体を寄せていると理解していたりとか。私のイメージでは、寄せるというのは相手にぶつかる、あるいはディフェンス側に足を踏み込むということなのですが。そういった言葉の認識の違いなども浮き出てきて、選手たちが自分の姿を客観的に捉えることで、よりプレーの理解・改善につながった経験は、何度かありました。1対1の練習でこうした接触プレーが十分にできていない場合は、またスキルドリルに戻って練習したりします」
指導者側の説明能力
「恩塚亨氏のDVDを見たりして、私自身、1対1に対する考え方が変わった部分があります。1対1のスキルを構成する要素を体系的に理解できたことが、動画を活用できるようになった背景にあると思います。ステップの踏み方とか、身体の寄せ方とか。Bリーグの選手たちは単に身体能力が高いだけでなく、そうした基本的なスキルを自然に出せているのがすごいんだ、ということがわかりました」
動画を使う場合も、指導者の説明能力が重要である。このことが、澤田氏の話からよくわかる。プロ選手のお手本を見ると、それぞれのプレーがどのようなシチュエーションで行われているのか、相手との距離感なども確認できる。正しいスキルを正しい場面で使う。動画を活用して学べる要素は多い。プレーを失敗した時の選手自身の説明能力にも向上が見られることから、動画活用の手応えを澤田氏は感じている。