【取材記事】育成年代のチームディフェンスの考え方── 山形ワイヴァンズアカデミー チーフディレクター兼U15女子HC尺野将太氏に聞く  

公開:2022/09/22

更新:2022/09/21

2022年8月に行ったチームディフェンスに関するアンケートにご回答いただいた指導者の一人、山形ワイヴァンズの尺野将太コーチに、「育成年代のチームディフェンス」にテーマを絞って取材しました。

育成年代のディフェンス指導は何を優先すべきか。尺野氏の指針は明確だ。

脚力強化は後回しでもよい

現在、アカデミーのチーフディレクターとU15女子チームのヘッドコーチを兼任している尺野氏が最も重視していることの一つは、成長段階に即した指導内容である。勝つためのディフェンスを優先するあまり、本来その時期に高めるべき身体能力への働きかけが不十分になったり、上のカテゴリーに行った時に通用しない、その場限りのディフェンステクニックだけが身についてしまう懸念がある。

個人差はあるが、おおむね小学生年代は神経系、中学生年代は心肺機能、身長の伸びが止まる高校生年代で筋力強化に取り組むのが原則であり、ディフェンスの指導にもこの考え方を当てはめている。

ディフェンスの成否には脚力が大きく関係してくるが、ミニバスや中学生のチームで脚力が足りないからと言って、ディフェンスフットワークを延々と繰り返すような練習をするのはかえって効率が悪い、と尺野氏は考えている。高校生年代になって筋力トレーニングに取り組み始めると脚力も向上してくるので、やるのであればその時期ほうが適しているし効率もよい。

中学生年代までで優先すべきは、臀筋やハムストリングスなどを正しく使ったディフェンスの動きができる、1歩目の動きが正しくできることなど、適切な身体の使い方を身につけること。またオフェンスと駆け引きをして、相手のやりたいことをさせない工夫ができること。そのベースをつくった上で、後から脚力が上乗せされれば良いディフェンスができるようになる。このような考えで指導しているので、現在指導しているU15の選手たちが脚力不足で相手に抜かれてしまったとしても、そこはあえて追及していない。

(編集部注:尺野氏が推奨するベースづくりのエクササイズは、過去のインタビュー記事をご参照ください。記事その1 記事その2

上のカテゴリーでも通用するディフェンス戦術を

ディフェンス戦術についても、尺野氏が育成年代の指導者と共有したい考え方がある。チームの勝利を優先して、育成年代でしか通用しない、つまり上のカテゴリーに上がったら通用しないような戦術(ローテーション)を採用するのは望ましくない、ということだ。

一例を挙げると、ボールマンがドリブルドライブでペイントエリアに進入しようとしている状況で、ボールサイドのコーナーを守っているディフェンダーがヘルプやダブルチームを仕掛け、逆サイド(ヘルプサイド)のディフェンダーがボールサイドコーナーへローテーションするパターンをよく見かける。中学生以下の年代でこれを実行すると、比較的簡単にダブルチームでボールを止める、あるいはターンオーバーを誘うことができる。仮にパスが通ったとしても、この年代ではパスが弱かったり正確でないことが多く、コーナースリーの精度もそれほど高くないのでこの種のディフェンスが有効に働くことが多い。

しかしプレーの精度が向上する高校生以上では簡単にコーナーへのパスが通り、相手に高確率のオープンショットのチャンスを与えてしまうことになる。この場合の原則は、ヘルプに行くのはヘルプサイドのディフェンダーで、ボールサイドのディフェンダーはボールマンを一度牽制(ヘッジ)して、ドライブのスピードを抑えておいてからコーナーのマークマンに戻ること。

またセンターサークル付近でダブルチームに行く戦術もよく見られるが、コート中央でのダブルチームはパスコースの選択肢が多いのでカテゴリーが上がれば逆効果になる。これも同じ理由でミニバスや中学生年代では成果を上げやすいが、安易に採用して慣れてしまうと、上のカテゴリーで選手たちが苦労することになる。

このような考え方をもとに、山形ワイヴァンズU15チームでも取り組んでいる、基本を重視したディフェンスドリルの例を尺野氏に紹介していただいた。


ディフェンスドリル例

1. クローズアウト→ジグザグ1対1(ハーフコート)

ハーフコートしか使えない場合もあるので、ハーフコートで3組同時に効率よくドリルを展開。ジグザグの1対1をクローズアウトから始めて、12〜24秒程度、体力に合わせて。

2. ボディアップ→ジグザグ1対1 

始め方をボデイアップ(コンタクト)からにしたジグザグ。

3. 2対2コーナーヘッジ、トップクローズアウト

ボールサイドのコーナーがコースに入らず、ヘッジしてマークマンに戻る練習に、トップのクローズアウトの練習も複合。

4. 上記3の形にならずにディフェンスが崩壊してしまう例(バックカットとワイドオープン)

バックカット
ワイドオープン

5. 5対4→5対5(フルコート)

ディフェンスが1人少ない状況で、危ない場所を見つける嗅覚を養う。トランジションでも5対4を作るために、シュートもしくはターンオーバーした選手がベースラインをタッチしてトランジションで遅れる。


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