日本代表・須田侑太郎選手を変えた運命の出会い  

公開:2023/03/10

更新:2023/03/15

Basketball JUMPでは、現在日本代表やその候補として活躍するトップ選手たちに、「あなたを変えた運命の出会いと言えるコーチを挙げてください」という趣旨のアンケートを行いました。回答があった中から、名古屋ダイヤモンドドルフェィンズの須田侑太郎選手がお名前を挙げた安齋竜三コーチ(現・越谷アルファーズアドバイザー)を取材しました。

齋コーチ

須田選手の成長をどう見ているか

安齋氏と須田選手との出会いは、安齋氏が2013-2017年にリンク栃木ブレックス(現在の宇都宮ブレックス)でアシスタントコーチを務めている時。須田選手は当初、練習生としてチームに参加した。

「身体の線も今より細かったですし、シュートフォームも横を向いて打っているような感じでした。しかしディフェンスの脚はあるな、そんな印象でした」

須田選手は栃木の後、琉球ゴールデンキングス、アルバルク東京、そして現在の名古屋ダイヤモンドドルフェィンズと、複数のチームを渡り歩くことになるが、安齋氏は、それぞれの環境で自分の役割をしっかり認識してプレーする術を身につけてきたところに、須田選手の大きな成長を感じている。

「良いチームを渡り歩くことによっていろんなコーチと出会い、それぞれ個性の異なるコーチに選手としてどう対応していくか、自分のアピールポイントに磨きをかけていったのだと思います。自分の強味であるディフェンスをさらに強化しながら、シュートに関しても自信をつけていった様子が見て取れます」

ハードワークに取り組むようになった出来事

須田選手が入ってきた当時の栃木には、代表経験も豊富な古川孝敏選手(現在、秋田ノーザンハピネッツ所属)ら、意識の高い選手たちが在籍していた。古川選手はとにかくよく練習するタイプで、全体練習以外の時間に個人でのシュート練習を延々と行う。シュートフォーム改造中で不安定さのあった須田選手に対して、安齋氏は古川選手らのお手本を示した上で、練習前のシュート練習を促した。1~2週間ほどそのルーティンを続けたが、疲労も蓄積してきつくなってきたため、「すみません竜三さん、全体練習前のシュート練習は…」と音を上げてきた。安齋氏は「俺のためにやっているわけじゃないから、やめてもいいよ」と。

そのまま2週間ほど経つと、練習でも試合でもシュートが決まらなくなった。

「自分で気づいたんだと思います。“やっぱりやります”と。これを転機に、練習量が激しく増えていきました。古川選手と同じぐらい、延々とやり続けるようになってから、本当に成長していった。こうした経験をルーキーの頃にしていたので、その初心を忘れずに努力を重ねた結果として、現在のシュート力にもつながったんだろう、と思っています。どこかで努力をやめていたら、現在の彼の姿はなかったでしょう」

もともと、突き抜けた素質を持っているタイプではない。努力を続け、それぞれのコーチに適応して現在の地位を獲得した、安齋氏はそのように見ている。ルーキー時代の須田選手と現在の須田選手はどこが違いますか? と問うと、安齋氏は「自信がありますね」と即答した。自分のプレーに対して迷いがない。そこで打つの? というようなシュートもたびたび見られるようになった。しかも確率も悪くない。本当に自信を持ってプレーしている様子が伝わってくる。

 名古屋ダイヤモンドドルフェィンズでプレーする須田選手 ©︎NAGOYAD

個性のディフェンスをどう伸ばしたか

須田選手はアンケートで、恩師として安齋氏を挙げた理由として、「ディフェンスの重要性を教えてくれた」とコメントしている。ディフェンスについては、ルーキー時代にどんな指導をしたのだろうか。

「前年にプレーオフで負けて、自分たちに何が足りないかを議論してディフェンスの強度を上げることを徹底していた時期でした。須田選手はもともと、オフェンスよりディフェンスが強いタイプでしたが、栃木にはリーグのベストディフェンダー賞をとった遠藤祐亮選手(現在も宇都宮ブレックス所属)もいて、良い見本が近くに存在していたことも良かったのではないかと思います。ディフェンスのテクニックについては遠藤選手らを見て学んでいたでしょうし、当時、私たちのディフェンス練習は本当にキツい内容で、普通に頑張るレベルでなく、突き抜けて頑張ることを要求するものでした。ディフェンスを徹底強化した結果、実際にチームが勝てていけたことも、須田選手にとっては良い経験になったのではないかと思います」

最後に、現在の須田選手にどんな言葉を贈りたいか安齋氏に聞いてみた。

「アマチュア時代はそれほど目立つ存在ではなかった彼が、自分の手で代表のユニフォームを掴んだわけですから、ここまでよく努力してきたなあと、称賛したいです。この先も現役選手としての日々は続くわけですし、今年のワールドカップメンバーに選ばれるかどうかの争いもあります。引き続き、初心を忘れずに頑張ってほしいと思います」


安齋 竜三 (あんざい・りゅうぞう) 1980年福島県生まれ。大塚製薬、埼玉ブロンコス、リンク栃木ブレックスなどでプレーし、2013-17 リンク栃木ブレックス(NBL / B1)アシスタントコーチ、2017-22 リンク栃木ブレックス / 宇都宮ブレックス(B1)ヘッドコーチ。2021-22 最優秀ヘッドコーチ賞受賞。2022年より越谷アルファーズ(B2)アドバイザー。

あなたの悩みや疑問に、経験豊富な指導者が答えます。
回答は、当サイト内で順次公開。 皆様からのご質問をお待ちしております。
(質問者が中高生の場合は、指導者または保護者のアカウントからご質問を送信してください)