公開:2025/07/01
四日市メリノール学院の稲垣愛ヘッドコーチ指導・監修による最新作が完成しました。本日7月1日よりオンデマンド配信が始まります。ここでは、恩塚亨氏が稲垣氏を招き、本作の内容やコーチングフィロソフィーについて語り合った対談内容を抜粋して紹介します。
ハードにディフェンスする、その前段階で必要なこと
恩塚:普段の練習で心掛けていることは?
稲垣:何をやるか、内容を細かく決めてから練習に入るのですが、できなかったことについては、段階的に習得できるように練習内容を組み直すことを大事にしています。
恩塚:最近読んだ本の中で、「メンバーがどのような行動をしたらよいかを明確に言語化できるリーダーが良いリーダーだ」という内容がありました。単に何かをやれと言うのではなく、そのためにはそうすれば良いかを掘り下げていくことが進化につながる。
今回制作された「稲垣愛 ヘルプローテーションディフェンス」の映像を見ていると、ただハードにディフェンスしろという指導でなく、ハードにディフェンスをするためにここをこだわる、という趣旨の内容がたくさん盛り込まれていると感じました。
ディフェンス時の危機管理能力
恩塚:この作品ではディフェンスとリバウンドに主眼が置かれています。この2つの要素に注目した理由は?
稲垣:これまで、主にサイズの小さいチームで戦ってきました。高身長の選手がいるチームにどう対峙していくかをテーマにした場合、ディフェンスからのファストブレイクが最も相手に邪魔されない得点源になると思います。その文脈で、リバウンドも重要になります。
恩塚:その部分は、作品で実技を見せてくれている中学生年代だけでなく、小学生から大学生レベルまで、カテゴリーを超えた普遍のテーマだと思います。では、ディフェンスで優位に立つために、重視していることは?
稲垣:1対1の練習は十分にやらないといけないですが、1対1で守るには限界があり、突破されることを常に想定しておかなければなりません。そのためにどうするか。ディフェンスにおける危機管理能力を高めていくことだと考えています。その能力が高い選手を育てていけば、チームにとって不可欠な選手になっていくのではないかと。選手を送り出した先の高校チームの監督さんたちからは、ディフェンスでの気の配り方が全然違う、との評価をいただいています。運動能力とは違う部分を見ていただけるのは、指導者としてとてもうれしいことです。
恩塚:違うチームに行っても通用する力って、すばらしいですね。しかも、それがトレーニングによって培われた結果であること。
きつい練習を良いエネルギーでこなすために
恩塚:作品を見ていて私が感じたのは、ハードワークを、良いエネルギーでできていることです。たとえば、皆が横に並んで1対1を行う練習。
稲垣:原型は、愛知学泉大学の木村功先生に教えていただいたものです。木村先生曰く、ディフェンスでは、“どれだけエネルギーを出せるか”が重要である、と。きつい練習なので、チームとしてどれだけ楽しんでやれるか、を考えていろいろアレンジした結果、今のかたちにたどり着きました。
恩塚:自分の殻を破れない子たちも、皆でやることで一線を越えることができる。バスケットがうまくなるための情報は世に溢れていますが、それをチームとして良いエネルギーに転化できるよう、うまく導いている。それがこの作品の特別なポイントの一つではないかと思います。
ほとんどの指導者は、選手にもっと頑張ってほしいけど頑張ってくれない、もっと声を出してほしい、と思っています。そのような方々に良いヒントを届けることができるのではないでしょうか。 >>>後編に続く
※この対談は、JLCオンデマンドにてご覧になれます。
作品詳細 「稲垣愛・ヘルプローテーションディフェンス」
7月1日より、JLCオンデマンドにて順次配信(9月までに全編配信予定)。DVDは7月10日発売予定です。
四日市メリノール学院の代名詞・ヘルプローテーションディフェンス。その驚異的な連係とスピードは、どのように育まれているのか。「まずは1対1、そこに伴うチームディフェンス」という考え方がベースにあり、1対1からこだわって練習が展開される。ヘルプローテーションは2対2で感覚をつかむところからスタートし、人数を増やしながらつくり上げていく。
ドリル一つひとつに対して「意識するポイント」をはっきりと選手に伝え、練習の目的がブレないよう実にきめ細やかにコーチングがなされます。
■指導・解説:稲垣 愛(四日市メリノール学院女子バスケットボール部HC)
■実技協力:四日市メリノール学院中学校女子バスケットボール部