時短練習のアイデア──アンケート結果と実例紹介

公開:2023/12/15

更新:2023/12/14

Basketball JUMPでは10月下旬から11月上旬にかけて、「時短練習のアイデア」をテーマにアンケート調査を行いました。ここでは、回答内容の傾向と、追加取材にご協力いただいた指導者のお話を紹介します。


時短傾向と指導者の苦悩

アンケートの趣旨は、近年、学校現場でのスポーツ指導のあり方が大きく変容する流れの中で、実際にどの程度の「時短」を強いられ、その中で練習内容をどのように工夫しているか、その傾向を調査することでした。

回答数は少なかったものの、練習時間の制約の中で、指導者の皆さんが苦悩している様子がうかがわれました。

(時短のため)ディフェンスフットワークをなくしたが、ディフェンスの脚力が弱くなった。(中学部活)

20年近く前に土日のうち、どちらかの練習禁止と月曜日の練習禁止、平日は、約1時間のみとなり、基本練習の時間や練習試合も大幅に削減した。日本バスケ協会の指導者教本の大項目から各1つ以上のメニューを選んで短時間で多くのメニューを実施するが、体力不足で負けることも多かったので、全員でコートの周りを10分間、できるだけ速く走らせた。(中学部活)

コロナで時短練習を命じられた。その後の大会では選手は明らかに走れなくなり、他校の選手含め、試合中に足がつる選手が急増した。シュート確率やその他の技術が落ちたとはあまり感じなかったが、選手人数の少ないチームでは時短練習は厳しい。(高校部活)

コロナを機に平日練が週4日から2日で時間も2時間から1時間となり、現在も継続している。時短でも効果がある練習を考えるようになった。(中学部活)

時短練習で工夫していること

時短を強いられる中で、工夫をこらして成果を実感している例も見られました。下記は、「時短を考慮して取り入れた練習メニューで、効果を感じていて、他者とも共有したいものがあれば」との設問に対して回答いただいた実例です。

パスやドリブルなどのスキルは実践で高める。(中学部活)

常に全員がボールを持ち、他人の練習を見ているだけの時間を減らした。(高校部活)

Buddy制度を導入。互いに責任もって教え合うようになった。(大学部活)

フットワークを取り入れた鬼ごっこを採用して効果を実感している。オフェンスとディフェンスの概念を鬼ごっこに置き換えることができるため、ディフェンス練習、オフェンス練習を、分けて練習する必要がなくなった。(中学部活)

実例編:成果をあげたフットワークドリル

上記、最後のコメント(フットワークを取り入れた鬼ごっこ~)を書いていただいた回答者、鈴村恵介さんに、オンラインでの追加取材に応じていただいたので、以下、詳しく紹介します。

鈴村さんは、名古屋市立有松中学校の男子バスケットボール部を指導している。2021年から外部顧問として名古屋市と正式に委託契約をし、試合帯同などもする立場だ。10年前、学生時代にボランティア指導者として別の中学校で教えていた時代とは様変わりし、世の流れで部活時間が大幅に少なくなった。

17時には生徒全員が校門を出ていなければならないので、正味練習時間は1時間から、長くても1時間半。しかもコロナ禍で活動日が平日週2日に削減され、現在もそのままだ。必然的に、できることは限られ、指導者としては工夫を強いられる。その中で辿り着いた答えの一つが、「フットワークを取り入れた鬼ごっこ」だった。

鈴村恵介さん

「10年前は、フットワーク1時間、個人スキル1時間、最後の30分で2対2、3対3といった流れで1日の練習を構成していましたが、今は個別の要素、たとえばフットワークだけとか、ドリブルだけとかは、一切やっていません」

「2つ以上の要素を掛け合わせるタイプの練習を採用しています。そのような練習は経験の浅い子にとってはハードルが高いですが、できる子に教えさせて、全体のレベルを上げるようにしています。成果は少しずつ上がっていて、今年度の3年生は全員がミニバス未経験者ですが、県内上位の高校から特待生の声がかかる選手も出てきました。個の能力を高めるには、現在の時短練習の方向性が有効ではないか、という手応えを得ています」

その1つが、「フットワークを取り入れた鬼ごっこ」で、ディフェンスの動きを教える方法を思案しながらネット検索していて見つけた海外の動画を参考にしたものだ。実際に行っている様子を鈴村さんに動画撮影していただいた(モデルは、鈴村さんが個人契約で指導している子どもたち)。

やり方はシンプルで、コーンで四角形のエリアをつくり、1対1で鬼ごっこをする。ディフェンス(鬼)は、相手に上半身を正対させ、絶対に目を反らさないこと。そして、逃げる側(オフェンス)は、走る方向を鬼に見破られないように、上体を残して足を先行させるように動く。また、相手が目線を反らした瞬間に反対向きに走る。こうした動きがバスケットボールに通じる。コーナーを回るときは、1歩目で相手の裏を取ってバックカットする動きをイメージして走る。

発展形として、オフェンス側がボールを持ちドリブル、ディフェンスはそれを追いかけるというパターンも行っている。鈴村さんは、時短による制約が、自分自身が変わるきっかけになったという。

「従来、長い時間をかけてやってきたことが、必ずしも大事ではないこと。そして指導者が学びを止めないことが重要であると、改めて気がつきました」

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