やりたくなる練習で選手の自主性を引き出す指導の原点を探る

公開:2020/07/06

更新:2021/02/18

「バスケを好きになってほしい」と願いを込めたチーム

愛知県で活動するバスケットボールクラブチームのポラリスは「バスケに夢と情熱を持っていても、活動するところがない子ども達のための受け皿となること」を目的に2013年に設立され、2度の全国制覇を果たし多くの強豪校へ選手を輩出する、クラブチームの草分け的な存在です。

このクラブを立ち上げ、チームの指揮をとる大野裕子コーチは、長年愛知県の中学校教員として勤めてこられました。バスケットボール部の顧問として、20年間で計10回の全中出場。2002年には全国3位の好成績を収めています。

大野 裕子(ポラリス ヘッドコーチ)

愛知県の中学バスケは、守山中で全中を連覇した現桜花学園監督の井上眞一氏や、千種台中・猪子石中・若水中を率いて全国を制した杉浦裕司氏など、1980年代以降多くの名将がしのぎを削り、全国をけん引してきました。

そうした名将と呼ばれる指導者たちと切磋琢磨し、選手を育て、チームを勝利へと導いてきた大野コーチ。教員退職後も、「世界を目指す選手を育成すること」を目指し、「バスケットボールが大好きになって一生懸命、真剣に取り組んでほしい」という願いをもってポラリスで指導を続けてこられました。

ただうまくなるだけではなく、「人として必要な思いをバスケットボールを通して感じられる」ことを大切に、スキル・判断力の向上を追求した指導を実践。全ては「バスケットボールが楽しい、好き」と思えるためにと、日々工夫を凝らした練習を行っておられます。

日々の「ワクワク感」を大切に判断力と予測力を養

そんな、ポラリスの練習を見学していると、常に選手が笑顔で、ワクワクしながら取り組んでいることが伝わってきます。

そのような環境を作り出すために重要なのが、自らやりたくなるような練習メニューを組むこと。

「これをやればうまくなる」ではなく、「選手が興味を持てるか」というところを重視して練習を組み立てています。そうすることで、選手自らが積極的にチャレンジして、失敗を重ねながら成長をすることへと繋がっていきます。

具体的な練習としては、1on1での練習よりも2on1,2on2の練習をメインにし、判断力・予測力を身に付けることに重点を置いた指導をされています。

そして、その判断力や予測力を活かすために必要な、ボールハンドリングやファンダメンタルも徹底的に指導されています。

大野コーチは「ボールの動きに合わせようとするからハンドリングのミスが起こる」といいます。まずは、自らの体の動きを理解し、正確に体を動かすこと。そこを徹底的に練習で鍛えているのです。やりたいプレーをするためには、どのように体を動かせば良いかを考えて、その通り体を動かしたうえで、その動きにボールを合わせることで、ミスを減らし思い通りのプレーへとつながります。

「全力でバスケを楽しめる」チームづくり

「ポラリスでは中学生でもスキル能力の高い、上手な選手が育っている」と桜花学園の井上監督も認める指導力とともに、大野コーチの人間的な魅力もポラリスを支えている一つの要素ではないかと感じます。

大野コーチとお話していると、純粋に「バスケットボールが大好き」「バスケットボールを通して子供たちを成長させてあげたい」という思いが伝わってきます。選手たちが、どうしたら「楽しく」そして「うまく」なれるのか。それを日々考えながら指導に取り組まれているのだなと強く感じます。

そんな大野コーチの指導により、「バスケに夢と情熱」を持ち、「全力でバスケを楽しむ」選手を輩出し続けるポラリスの活躍から、今後も目が離せません。

(取材:2019年)


桜花学園高等学校・井上眞一監督に
「高校生にも真似させてもいいくらいの良いメニュー」
と言わしめた、ポラリスが行なっているハンドリングメニュー(上記DVDに収録)の一部を、こちらでご紹介!

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