【特集:タイムアウト】タイムアウトを『休憩』として活用する

公開:2021/12/10

更新:2022/01/21

浜松開誠館高等学校女子バスケットボール部 三島正敬監督

バスケットボールの試合において流れを大きく左右するタイムアウト。指導者として、タイムアウトの使い方やタイミングに苦心されている方も多いのではないでしょうか。2021年も静岡県を制し、県6連覇を果たした浜松開誠館女子バスケットボール部の三島正敬先生も、経験を重ねながらタイムアウトの使い方について自分なりの考え方が生まれてきたと語ります。そこで今回は、三島先生のタイムアウトに関する考え方をたっぷりとお届けします。

―本日はよろしくお願いします。今回は『タイムアウト』というテーマでお話伺っていきたいと思います。早速ですが三島先生ご自身の『タイムアウト』に対する考えやこだわりを教えていただけますか?

↑インタビューに答える三島先生

三島先生(以下:三島):よろしくお願いします。『タイムアウト』と聞いて一番に思い出すのは、指導者になりたての頃に先輩の指導者の方から「タイムアウトはできるだけあとに残しておいた方が良い」と言われたことで、その考え方が今でもベースにあります。特に後半(第3,4Q)に競った展開の場合は、最後の場面までタイムアウトを残しておくことが重要だと感じています。

早めの対処も必要

―勝負所になることが多い第4Qにできるだけ残しておくといことですね

三島:そうですね。ただ勝負所を見極めるということは簡単ではないので難しいです。私もある程度経験を積んで、経験を重ねることで、戦局を見極めて判断ができるようになってきましたが、それでもすべてがうまく行くわけでもありませんし、うまく行かないときもあります。

先ほどはできるだけあとまで残しておくという話をしましたが、全国で上位にいるチームの指導者の方々は、共通してタイムアウトを取るタイミングが早いように思います。傷口が広がる前にタイムアウトを取って修正する。だから大崩せずに勝ち続けることができるのかなと。

バスケットボールでは、特に高校生年代では1Qと3Qの入りが重要なので、私も最近は1Qや3Qでも速めにタイムアウトを取るようにしています。後半は、3Qに1つ取って、4Qに2つ残しておければ良いかなというイメージです。

―どのあたりでタイムアウトを取ろうというのは事前にある程度イメージして試合に臨まれるのでしょうか?

三島:あまり試合前から決めないようにしています。前半の戦況も観ながら、試合の中やハーフタイムで考えを整理して、使いどころを考えるという形です。事前に決めても、実際の試合ではその通り行くことはなかなかありません。そうしたときに指導者が焦ったり悩んだりすると、それが選手にも伝わってチーム全体がバタバタしてしまうので。もちろん準備は重要で、各試合に臨むうえである程度戦況を予測したり準備をしたりはしますが、試合が始まったら臨機応変に対応するということを心がけています。

―そうした臨機応変な対応はやはり経験を積んで培われるものなのでしょうか?

三島:そうですね。勝ったり負けたりを繰り返していく中で、培ってきたものかなと思います。あとは、他のチームの試合やWJBLや大学の試合を見ながら、そのチームの指導者がタイムアウトを取るタイミングや伝えている内容をチェックするようにしています。タイムアウトのタイミングや使い方は全て結果論になってしまいますが、その試合の状況やそこまでのプロセスを自分自身に置き換えて、「自分なら今のタイミングでタイムアウトを取るな」とか「ここではこんなことを伝えるな」ということを考えることも、良い勉強になると感じています。

―それはどの指導者の方でも簡単に取り組めそうなことですね。自分ごとに置き換えて観察するということもポイントですね。

体力の回復を優先する

―ここからはタイムアウトを狙いやタイムアウト中に伝えることについてお話を伺いたいと思います。三島先生の中で、タイムアウトを取る際に重要にしているポイントはありますか?

三島:私の中では、タイムアウトを取る狙いとして「流れを切ること+休憩」という風にとらえています。まずは、給水させて落ち着かせたうえで、端的にわかりやすく具体的に指示を伝えることを心がけています。具体的には、指示の内容はオフェンスとディフェンスで1つずつ程度に絞るようにしています。あまり情報を詰め込むことはしません。

―流れを切るだけではなく、休憩という狙いもあるというのは意外でした。

三島:できるだけタイムシェアをしながら回してはいますが、やはりゲームの中で疲労は蓄積していきますし、トーナメントになると連戦になるので、疲労の蓄積も見越しながら試合の流れ関係なく休憩という意味で活用することもあります。実際に今回の県予選でも、競った展開ではなかったですが休憩の意味でタイムアウトを使いました。

―流れを切るという点では、こちらが良い流れの時に相手が流れを切るためにタイムアウトを取ることもあるかと思います。そうしたときはどのように対処されていますか?

三島:こちらの流れが良いときに相手にタイムアウトを取られたときには、『いい流れだったのに』とか『嫌なタイミングで取られたな』と思うのではなく、うまく行っているところを強調するようにしています。相手が「流れが悪い」と判断したということは、こちらはうまく行っているはずなので、ネガティブにならずに優位に進められているポイントを整理して、そこで勝負していこうということを伝えるようにしていますね。

↑ウインターカップに向け練習に励む浜松開誠館女子バスケットボール部の選手たち

選手の感覚や思いを引き出すことも重要

―タイムアウトで指示を出す際に、先ほどあまり情報を詰め込まないというお話をいただきましたが、そのほかに気を付けておられることはありますか?

三島:先ほどもお話しした通り、タイムアウトを休憩という捉え方もしているので、まずは給水をしっかりとって休ませることですね。あと、こちらが伝えたいことを端的に伝えたら、選手同士のコミュニケーションや選手がプレーして感じている感覚や思いもできるだけ聞くようにしています。指導者はあくまで外から見て判断をしているだけですので、実際にコートの中でプレーしている選手たちの直感や現場感が重要だと思います。なので、選手同士が話しているときには、できるだけ話を遮らないようにしています。

―本日は貴重なお話しありがとうございました。

浜松開誠館高等学校女子バスケットボール
静岡県西部浜松市にある中高一貫校。2016年に県大会で初優勝、誠心高等学校時代以来28年ぶりに出場したウインターカップ(誠心高校時代は選抜大会)ベスト8に進出。以後、6連続出場を続けている。チームを率いる三島正敬監督は就任20年目。チームを全国大会常連へと導くとともに、U16女子日本代表のアシスタントコーチも務めるなど、その指導力は高い評価を受けている。

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