ディシジョンメイク、ライブの2要素を重視して、ゲームに近い状況をつくり出す

公開:2021/05/07

更新:2021/06/19

東海大学付属諏訪高校男子バスケットボール部 入野貴幸ヘッドコーチ 

ジャパンライムのオンデマンドコンテンツ「次世代コーチのドリル」シリーズでご登場いただいている若手指導者の方々に、この映像の中で強調している内容を中心にインタビューする企画です。トップバッターとして、東海大学付属諏訪高校男子バスケットボール部の入野貴幸先生にうかがいました。


──「次世代コーチのドリル」シリーズの中で、入野先生が練習を組み立てる上で重視していることとして強調されていたのがSDDL(シャドウ、ダミー、ディシジョンメイク、ライブ)の4点でした。これについて、改めて説明していただけますでしょうか。

日本のバスケットボール界では、“型”の練習が多い傾向があります。これに対して海外はライブを中心に組み立て、練習の中でも勝負を仕掛けていく要素が強いという印象を受けていました。それに呼応した考え方です。特にディシジョンメイク、ライブの2要素を重視して、できるだけゲームに近い状況をつくり出すことを意識しています。

例として、3メンオフェンスの局面で、練習中にはパスミスがあまり起こらないのに、ゲームになると起こりがちになるのは、ゲームという特殊状況下で、普段以上のアドレナリンが出てパスの強度が高まってしまうといったことが原因の一つだと思います。それがターンオーバーにつながる。またレシーバーが走っているタイミングにパスが追い付かないということもあります。練習時からアドレナリンMAXの状態で勝負にこだわってプレーすることにより、限りなくゲームに近い状況をつくれるのではないか、そう考えています。

バスケットボールはオープンスキルが必要な競技です。状況判断を伴う練習を行い、かつ、できるだけ同じパターンの練習はしないようにしています。似た状況は起こるが、全く同じシーンはあり得ません。オフェンスにおいてもディフェンスにおいても、ディシジョンメイクの要素はとても重要であると思います。

──ディシジョンメイクをそこまで重視しようと考えた理由は?

状況判断能力が高い選手を育てなければならないことは、指導者として常日頃から考えていました。試合が始まってしまえば、テイク2、テイク3といったやり直しはできませんから。あと、日本のバスケットボール界としてBリーグが安定し、選手たちが将来プロ選手になっていくことを考えたときに、この年代の選手たちの状況判断能力を高めることがより必要になってきているのではないか、そのように私自身の考えが変わってきました。

もう1つ。転機になったのは、2010年ごろから全国大会でも上位に入り始めた時。ここから先に行くには、選手個々の能力を高めることが不可欠だと実感しました。

ただし、ライブシチュエーションを重視していても、自チーム内だけの練習では限界があるので、練習試合は絶対に必要です。

──新年度。新しいメンバーが入って来る時期ですが新入生に対しても同じ考え方で?

頭の中をパンクさせようと思っています(笑)。脳が汗をかく練習。最初は、私が話している内容も理解できない部分がたくさんあると思います。わからないのであれば、自発的に学ぶ姿勢を育みたい。

──指導者としては我慢が必要な部分。

はい。スローコーチングとクイックコーチングを使い分けるように意識しています。今の選手たちは、情報はいくらでも入手できる環境にあります。この子たちに必要なのは情報選択能力であると痛感しているので、それを高められるようにと。

教育現場では今、課題解決能力の養成が盛んに言われていますけれども、そもそも自身の課題を見つけること、その課題に対してしっかり向き合うことが重要です。課題を棚上げして自分の得意なこと、やりたいことを優先させてしまう傾向は誰にでもあります。頭をパンクさせて、課題に気づかせることが必要ではないかと。

──新入生にとっては大きな試練ですね。

同じ長野県でも人口の少ない農山村部から入学した子たちにとっては、別の国に来たぐらいのカルチャーショックではないでしょうか(笑)。でも、そこで生きていくためには必死で食らいついていくしかない。敢えてハウス栽培はしないで、自然栽培で逞しく育てたいと思っています。

──「次世代コーチのドリル」の映像を見ると、1つのドリルの中でも複数の状況判断を強いるような練習が目立ちます。例えば3対3の状況からハーフラインを越えたらオフェンスがもう1人入ってくるというような。こうした練習は常時やっているのでしょうか?

時期によります。ティーチングを多くしなければいけない時期はライブ練習の比率は少ないですが、試合期が近づけば近づくほど、難しい状況を多く設定するようにしています。サッカーの元代表監督オシムさんが、このような形式の練習を多用していたと聞き、バスケットに活かせないものかと考えて、やり始めました。

──この映像作品を、「こういう悩みを持ったコーチに見てほしい」といった思いはありますか?

「うちの子たちは、言われたことしかできない」という悩みを抱えている先生方には、共感していただけるのではないかと。あとは、新鮮さを求めている場合でしょうか。私自身経験してきたことですが、毎日同じような練習だと、選手だけでなく指導者も体育館に行く足取りが重くなりがちです。新しく教える内容があれば生き生きとコートに立つことができます。

──先輩指導者の方々からはどう学んできましたか?

私自身、国体2位が最高で、まだ全国優勝の経験がありません。招待試合、あるいはU-19代表合宿などで先輩指導者の方々と一緒になる時は、できるだけ優勝経験のある監督さんの近くにいるようにしています。何気ない立ち話の中にヒントがあったりするので、そういった機会は大切です。特に関心があるのは、コーチング資源(人、物、金、時間、等)をどのようにして豊かにしているのか。強いチームは例外なく優秀な人材が集まります。どうすれば集まるのか、を知りたい。

ただ、師匠を1人に決めて信者になるのは性に合わないので、幅広くいろいろな方の意見を吸収しようと努力しています。最近では、教え子も大学チームで学生コーチをやったりしています。彼らから教えてもらうこともあります。

──全国大会で勝ち上がることを考えると、近年では留学生対策も外せないと思います。

そうですね。そこは、ものすごく考えています。例を挙げると、留学生のいるチームはディフェンスリバウンドが安定しているので、トランジッションでの走り出しが早いんです。これに対して私たちのチームでは、味方がリバウンドを取ったのを確認してから走り出すことになり遅い。また、留学生が最後にゴールキーパー役を果たす前提で、ディフェンダーが果敢にクローズアウトしてくる傾向があります。少しでも躊躇していると、すぐに足元に入られてしまう。

ですから、先ほどお話しした状況判断も、一歩先読みをして判断できないと相手を上回るプレーができません。より早く、より創造性のある状況判断ができる能力が、ますます求められていると思います。敢えて時間をかけてゆっくり攻めるといった判断も含めて。

(2021年4月1日、オンラインにて取材)

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入野 貴幸 Takayuki Irino

神奈川県出身 東海大学付属第三高校(現東海大学付属諏訪高校)を卒業後、東海大学へ進学。陸川章監督の指導のもと、4年次にはキャプテンを務めチームを関東大学リーグ一部昇格へ導く。その後、母校の男子バスケットボール部で指導者としてキャリアをスタート。就任5年目の2010年沖縄インターハイでは長野県史上初の3位入賞、2018年には東海インターハイ3位入賞など、全国の舞台で活躍するチームを作り上げるとともに、次のカテゴリーで活躍する選手を多く輩出している。


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