ファンダメンタルの精度と強さを向上させることが、最終的に勝利をもたらす

公開:2021/05/28

更新:2021/07/02

福岡大学附属大濠高校男子バスケットボール部 片峯聡太ヘッドコーチ 

ジャパンライムのオンデマンドコンテンツ「次世代コーチのドリル」シリーズでご登場いただいている若手指導者の方々に、この映像の中で強調している内容を中心にインタビューする企画です。今回は、福岡大学附属大濠高校男子バスケットボール部の片峯聡太先生にうかがいました。


──コンテンツは「大濠スタンダード」というコンセプトのもとに、ほぼファンダメンタルに特化した内容になっています。原点に関わる質問となりますが、片峯先生の中での、ファンダメンタルに対する考え方をお聞かせください。

大濠というチームにおいてもそうですし、選手たちが卒業後にアジアや世界で戦っていく上で、パフォーマンスを左右する最終的な決め手は、「個」の能力だと思います。チーム単位でいろいろな戦術を使う中でも、パス、シュート、ドリブルから始まる基礎がしっかりしていないと、その戦術の完成度が低くなる。ファンダメンタルの精度と強さを向上させることが、最終的に勝利をもたらす。そう考えており、練習の中でも重要視しています。

──大濠に入学してくる選手たちは、もともとレベルの高い子が多いと思います。そのような選手たちでも、ファンダメンタルが不十分だと?

足りてないですね。サイズや身体能力の面で秀でた選手は確かにいますが、きちんとステップを踏まなくても相手の上からシュートを打てていたとか、きちんと止まれないとか。そういう子たちが多いのが現実です。親に与えられた先天的な能力を頼りにこれまでバスケットをやってきたような子に対しては、基礎をしっかり身につけて、それを磨いていく努力をしなければ、この先成長することができない、と常々言っています。

──ファンダメンタルは、3年間通してみっちり鍛えていくのでしょうか?

はい、段階的に。年代的には、基礎を教えるにはぎりぎりのタイミングかな、という印象を持っていますが。例えば1対1の局面で、相手の動きに反応して、どのように動くことが効率的で、優位な状況をつくることができるのか。今まで本能的にプレーしてきた選手たちに頭で理解させ、論理的な必然性を持ってスキルを習得させる。彼らにとって、当初は負荷が大きいですが、慣れてくれば身体が勝手に動くようになります。これが、あるべき姿なのではないかと。

──高校生年代でぎりぎり、というお話がありましたが、本来はもっと下の年代でしっかり身につけるべきだと。

高校生に教えている重心移動の技術をU-12の選手たちに教えたりすると、その子たちのほうが、はるかに習得が早い、といったことを経験しています。誰もがわかっていると思われているような基礎的なスキル、身体の使い方については、意外とわかっていない、教えられていない現状があるのではないでしょうか。

U-12のうちから特に重視してほしいと思っているのが、スペーシングとパスの能力です。誰もが主役になりたいですから、ボールを持った時のプレーは皆上手です。反面、オフボールでのスペースの取り方、ディフェンダーとのズレが生じてチャンスが生まれている味方へのパスの供給。パスレシーブの技術も含め、これらにもっと目を向けるべきではないかと。

話は少々飛躍しますが、15歳以下でゾーンディフェンスを禁止にした背景には、マンツーマンで1対1を強化すべきという考え方がありました。1対1の強化を徹底するならば、NBAのようにディフェンス時のペイント3秒ルールも採用するとか、オフェンス側にも規制をかけて、ドリブルの回数やボールを持つ時間を制限するとか。そこまでやれば本当に1対1が強くなると思う。育成段階のプレーモデルがもっと明確になっていれば、そのために必要なファンダメンタルも具体的になってきます。U-18の選手たちを指導する際に、「ここまでは確実にできている」という状況をつくることができるのが理想です。

──ご自身が指導者として今後目指すところは?

上のカテゴリー(プロや大学など)での指導も視野にあるのでは、とよく聞かれます。でも私自身は、16~18歳のカテゴリーを指導するスペシャリストになりたい。現場でチームを勝たせることにこだわるのか、あるいはマネジメント面の仕事をメインに考えていくのか、等、形はいろいろ考えられます。教員をしながらであり、難しい道のりではありますが、今後経験を積みながら、突き抜けた強味をつくっていきたいです。

──理想としている指導者像はありますか。

大濠時代に指導を受けた故・田中國明先生の勝利への執念、筑波大学・吉田健司先生の理論的なバックグラウンド。この二人の恩師をミックスし、そこから新たなケミストリーを生み出せる指導者になれれば理想である、との思いは、ずっと変わっていません。

指導者になってから、チームづくりの面で「すごい、自分もこんなチームをつくりたい!」と最初に思ったのは、以前福岡県の公立中学にいらっしゃった山崎修先生です(現・メリノール学院中学校)。難しい年代であるにもかかわらず、子どもたちの目が生き生きしている。魔法を見るようでした。先ほど言った情熱と理論的背景を高いレベルで持ち、結果を残している東京医療保健大学の恩塚亨先生からも、多くを学ばせていただいています。 ──ありがとうございました。

(2021年4月23日、オンラインにて取材)


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次世代コーチのドリル集「大濠スタンダード」


片峯 聡太 Sota Katamine

1988年、福岡県出身。飯塚一中→福岡大附大濠高→筑波大。大学卒業と同時に、故・田中國明氏の後継者となるべく母校へ赴任。バスケットボールの指導者というだけでなく、教員としても周囲からの信頼は厚く、評価も高い。また、思い切ったポジションのコンバートで、卒業後に高いレベルで活躍する選手も多くいるなど、先見性に優れる。

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