【オンラインセミナー・レポート】高校年代における映像を活用したスカウティング 

公開:2021/03/22

更新:2021/04/09

講師:つくば秀英高校男子バスケットボール部 稲葉弘法監督、飛龍高校男子バスケットボール部 原田裕作監督

2021年2月27日より全5回シリーズで行われたオンラインセミナー「実践例から学ぶ映像分析の活用法」の内容から、一部を要約してご紹介します。第4回は、3月20日に「高校年代における映像を活用したスカウティング」というテーマで開講されました。昨年末のウインターカップに出場した男子2チームの監督が、主に対戦相手のスカウティングでの映像活用について語りました。


司会:両チームとも昨年末のウインターカップに出場されています。このレベルになると事前のスカウィングは必須で、対戦前にかなり相手の分析を行うと思います。実際にどのように行ったのか、公表できる範囲内でお話しいただけますでしょうか。飛龍高校の原田先生からお願いします。

原田:1回戦を勝ち上がると、2回戦では京都の東山高校と当たる組み合わせでした。東山さんとは年間3回ほど練習試合をやっています。昨年はコロナの影響で10月に1回だけ。その試合をSPLYZA TEAMS(スプライザ・チームス)で徹底分析して、東山対策を準備しました。1回戦の盛岡南さんとは練習試合を行っておらず、映像は事前に持ち合わせていなかったので、伝手をたどって試合映像を入手し、こちらの分析ももちろん行いました。しかしトーナメントの組み合わせが発表されてからの1ヶ月間は、ほぼ東山対策に費やしました。

司会: その過程で、SPLYZA TEAMSはどのような使い方をされましたか?

原田:数字的なデータだけでなく、映像を細かく見ていけるのがSPLYZA TEAMSの良さです。タグ付けで分類した映像を見ながら、ポイントガード米須君をはじめとする各選手の特徴、さらにはプレーの傾向(スクリーンの角度、スペーシングなど)を把握し、ディフェンスに活かす。私たちはピックアンドロールを多用するチームなので、相手がピックに対してどう守るか、という点もよく分析研究しました。セカンドチームを仮想東山とし、スクリメージ練習を積んで大会に臨みました。結果的に東山さんには負けてしまいましたが、対策がうまく機能した部分も多々あり、映像分析の成果は実感しています。対戦に向けて、自分たちのやりたいことが明確になったことが大きな収穫です。

司会:つくば秀英高校さんはどのように?

稲葉:組み合わせが発表されてから約1ヶ月で情報収集をできる限り行いました。それに加えて、大会が始まってからは2回戦以降で対戦する可能性のあるチームのスカウティングに、SPLYZA TEAMSをフル活用しました。大会登録メンバー外の部員が約20名ぐらいいるのですが、そのメンバーをいくつかのグループで分担して、撮影した試合映像をタグ付けしていきました。1QのオフェンスはA班、ディフェンスはB班、2QのオフェンスはC班、ディフェンスはD班といった具合に。彼らは東京に宿泊はせず、地元からの通いでこの作業を行ってくれました。移動のバスの中でタグ付けし、すぐにアップロード。東京にいる登録メンバーは、ホテルに帰ってケアを行っている間に、見るべきタグ付け映像ができあがっているという流れです。その後、短時間のミーティングで対戦相手の情報共有を行い、翌日の練習で確認作業をする。このような形で大会期間を過ごしました。メンバー外の選手たちも協力して、全員で戦うという意識も高まったと思います。

司会:勝ち進む上で大きな山となったのが準々決勝の洛南高校戦だったと思います(結果は69-83で敗戦)。この試合に向けてのスカウティングは?

稲葉:洛南さんの大会初戦となる桜丘高校戦を、先ほどお話したルーティンで分析・情報共有しました。大枠としては、相手のオフェンスがどのようにして期待値の高いシュートを演出しているか?という点にフォーカスして対策を練る。具体的には、高校バスケット界でもトップレベルのガードから、センターに送られるパスラインをどれだけ消すことができるか、に注力しました。すべてのプレーに対応することはできないので、相手の特徴を最も表しているプレーを中心に映像を見て、対策を準備した。

映像を見ながら情報共有し、対策を練る作業は、選手たちが学びを深め、バスケットボールの面白さ追求することにつながります。実際にこの試合でも、相手の動きがある程度予測できる中で、積極的にディフェンスに行くことができた、という声も上がりました。洛南戦の直前、会場前で並んでいる時間まで選手たちがスマホで映像確認をしていた姿が印象的でした。

司会:飛龍高校とつくば秀英高校は、どちらもセットオフェンスが多いですね。セットオフェンスをチーム内で共有する手段としてもSPLYZA TEAMSを活用しているそうですが。

原田:うちは20~30個ぐらいあって、そのうち10個程度を毎年入れ替えています。名門チームであれば優秀な選手が毎年入ってくるので入れ替える必要はないかもしれません。うちでは、入ってきた選手を活かす形で新しいセットを考えています。選手は、自分が活用されるプレーは当然、覚えが早いです。

司会:ここで、飛龍高校さんのSPLYZA TEAMS画面を共有して見てみましょう。「ワンダウン」「ダイヤ」「ボストン」…いろんな名前が付いていますね。ここで再生してもよいでしょうか?

原田:シンプルなものばかりですので、大丈夫です(笑)。ネーミングは、選手たちにさせています。

司会:“ニューフォーメーション”も3つあります。新チーム用。新入生もこれを見て勉強するわけですね。つくば秀英さんでは?

稲葉:うちでも、新入生が入部してきた時はSPLYZA TEAMS上でセットプレーを勉強してもらいます。プレーのポイントとなる動きに関しては、選手たちが図形やコメントを書き込んでいます。

司会:たくさんありますね。これを1つ1つ新入生に説明するのは確かに大変…

稲葉:はい、それだけで多くの時間を費やしてしまうので。SPLYZA TEAMSの機能を有効に使っています。

司会:本日のセミナーは、高校生よりも下の世代を指導している方々も多く参加されています。小中学生への指導で、映像活用はどのような利点があるとお考えでしょうか?

稲葉:個人の能力で1点ずつ獲得するフリースローは別として、2点あるいは3点が入るシュートは、1人の力でなく、必ずチーム皆が関与する全員で作るプレーです。グッドプレーが生まれるには、その背景と過程が必ず存在するわけで、それらを理解するために、映像は大きな力を発揮すると思います。子どもたちは、グッドプレーは飽きずに何度も見てくれる傾向がありますからグッドプレーを使ってバスケットボールへの理解を深める、その手段に映像を活用すると良いのではないでしょうか。

原田:同感です。小中学生のレベルでは、相手よりも自分、自チームにフォーカスすることが大事で、そのために映像の利用価値は高いと思います。

参加者からの質問:映像を視聴する時間は、チーム内で設定していますか?

稲葉:このアプリの利点は、いつでもどこでも見ることができる点です。重要な情報共有の際は全員で見ることもありますが、基本的には細かい視聴ルールは作っていません。各自が見て、自分自身で書き込みを行う作業を繰り返すことで、学びを深めることができます。

原田:試合期に5対5の練習を行う時などは、あえて練習時間を短くして、練習後に30分ぐらい時間を設け、各自が感じたことを映像に書き込む作業をさせています。それに対して私の書き込みは、どうしてもダメ出しが多くなってしまいます(笑)が、ほめるとやはり喜んでくれますね。


「実践例から学ぶ映像分析の活用法」各回レポート

>>>【第1回】分析ツールを使った、選手による自チームの振り返りの実践と効果

>>>【第2回】 育成年代の映像分析で培う力

>>>【第3回】 ウインターカップ中のリアルタイムフィードバック

>>>【第5回】練習の精度を高める映像によるリアルタイムフィードバックの活用方法


>>> 分析ツール「SPLYZA TEAMS」の詳細を見る

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