ポジションレスで「世界」に羽ばたく選手の育成を目指す~アースフレンズ東京Zユースチームの取り組み~

公開:2021/02/26

更新:2021/03/25

今回は、プロバスケットボールリーグBリーグ2部(B2)に所属するアースフレンズ東京Zのユースチームを取材。3年前の立ち上げ当初から指導に携わる、岩井HCにお話しを伺いました。

ミッションは「日本代表選手の輩出」と「世界で活躍する選手の育成」

アースフレンズ東京Zのトップチームが掲げている、「日本代表が世界で勝利することに貢献する」「世界に通用する日本人選手を輩出する」というミッション。そのミッションを達成すべく、アースフレンズ東京Zユースチームでは、育成年代から日本代表や世界レベルを意識した取り組みを行っています。

↑選手に指示をする岩井HC

岩井貞憲HC(以下:岩):チームのミッションとしては大きく2つ。1つは「日本代表を輩出して、日本代表の勝利に貢献する」こと。もう1つは「海外で活躍する選手を輩出すること」です。これは、ユースだけでなくチーム全体で掲げているミッションですので、ユースにも落とし込んで、2つのミッションを達成するために試行錯誤しながら指導を行っています。ユースが立ち上がって3年目ですが、B2のチームということもあり、チーム自体もお金や人員をユースに潤沢に割けるわけではないので、その中でいかに工夫してやっていくかというところはなかなか大変な部分もありますが、ミッションを達成するために日々指導にあたっています。

―2つのミッションを達成するために、指導するうえで大切にされていることはどんなところでしょうか?

岩:「選手の可能性を高めること」を一番大切にしています。なかなか、今の選手達がどのように成長していくかというのは、予測することは難しいです。また、現状U-18のチームがないため、継続して指導することが難しい状況の中で、「今」だけでなく「将来の可能性」を高めることが重要だと考えています。「今ある課題を解決すること」と、「目指すべき未来から逆算して、今やるべきこと」を指導する。その両輪を回していくというイメージです。

「ポジションレス」で選手の可能性を高める

岩:具体的な取り組みとしては、ポジションに関係なく、ポジションをそもそも作らずに、いろんなポジションやいろんな技術にチャレンジさせることに挑戦しています。各選手、強みは持っていると思いますが、それは年代が上がっていく中で突き詰めていけばよいと考えていて、この年代では、まずはいろんなポジションでプレー出来て、いろんな技術を使えるようになることが重要だと思います。

―なぜポジションレスに取り組まれているのでしょうか?

岩:今トップチームでHCをされている東頭俊典HCから、ユース立ち上げの際に「ポジションコンバート」という考え方を教えていただいたことがあります。また、今のBリーグやNBAを見たときに、将来活躍する確率を上げるためには、大きい選手がオールラウンドな動きをできることが重要だと感じました。もちろん、小さい選手がダメとか可能性がないということではなく、いかに世界に通用する選手を育成するかと考えると、やはり大きい選手にポジション関係なくプレーをさせる、ポジションレスの取り組みが必要だと感じています。

↑全ての選手がインサイト・アウトサイド関係なくプレーをする

ポイントは「チャレンジするマインド」を引き出せるかどうか

―ポジションレスを実践していく中で、具体的に工夫されている点や苦労されている点はありますか?

岩:今一番難しいと感じているのは、選手の「心」「マインド」の部分ですね。ポジション関係なくプレーするには、選手の「挑戦する」という気持ちが必要不可欠だと考えています。その気持ちの部分をどう引き出せるか。ここが一番難しいと感じています。現在、世界で活躍している八村塁選手や渡邊雄太選手、馬場雄大選手は、中学生や高校生の時から、自分でボールを運んで、シュートを打って、ポストアップして、いろんなことに挑戦していたと思うんですね。その判断が良い悪いは置いておいて、とにかくいろんなことにチャレンジする。クオリティよりも、経験を積むことがこのU15年代には必要なのではないかなと考えています。日本代表で活躍している富樫勇樹選手も、サイズはありませんが、同じように自らクリエイトして、得点して、アシストして、いろんなスキルにチャレンジしていたと思います。将来の可能性を高めるということを考えて、いかにチャレンジさせるか。まずチャレンジするというマインドを高めて行かなければいけないと感じています。

―そうしたことを踏まえると、チームオフェンスより個人スキルの向上に割く時間の方が長いのでしょうか?

岩:一応、チームの動きというものも基準は決めています。自由にやりすぎると、逆に個人のスキルを発揮できなくなるので。あくまでも「個の技術」を発揮するというベースがあって、それが発揮できる環境にするために、スペーシングやポジショニングといった、チームオフェンスの部分では約束事を決めています。個人がチャレンジする状況をクリエイトするための、チームオフェンスという位置づけです。

―ディフェンスについてはいかがでしょうか?

岩:どちらかというとディフェンスは、「チームとして守るために個がある」という考えでいます。一人がサボるとチームディフェンスは完全に崩れてしまいますので、選手の能力だけではなくて、組織としてしっかり判断して守れることを大切にしています。今の段階でサイズのある選手は、少し目を切ったり、反応が遅れたりしても、サイズでカバーできる部分がありますが、上のカテゴリー、レベルに行ったときにはそれでは通用しません。それでは意味がないので、常に上のカテゴリーのことを意識させながら、チームとして組織的にしっかり守ることを指導はしています。

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