ポジションレスで「世界」に羽ばたく選手の育成を目指す~アースフレンズ東京Zユースチームの取り組み~

公開:2021/02/26

更新:2021/03/25

目指す姿、目標を見せてモチベーションを高める

― 一般的にディフェンス練習というと、単調で、選手も取り組みたがらないようなイメージがありますが、何か工夫されていることはありますか?

岩:一つは、NBAやNCAAなど、憧れや目指すべきところにいる選手のディフェンスシーンをクリップして、それを見せることで、「一流の選手でもここまでディフェンスしているよ」「世界ではこれがスタンダードだよ」ということを伝えています。もちろん、オフェンス練習の方が楽しいというのはあるとは思いますが、「どうなりたいか」というところから、なりたい姿、目標となる選手のプレーを見せることで、練習に取り組む姿勢は高められると感じます。もう一つは、ディフェンス練習でも必ずオフェンスを付けて、攻守を入れ替えて実施するようにしています。指導している選手達から、ディフェンスの練習が嫌だとか、やりたくないということは聞いたことはありませんし、積極的に取り組んでくれていると感じています。

コーチの思いを伝えるミーティング

ここからは、取材日に行われていた練習の様子を少し紹介します。

↑ミーティングで選手に語り掛ける岩井HC

 各自でウォーミングアップやシューティングを終えた後、全体練習の前にミーティングが実施されました。この日のミーティングでは、「未来をどう作るか」ということについて話が展開されました。練習前の取材で、「今年のチームは真面目で大人しい選手が多い」と語っていた岩井HC。1月の全国大会を終えて、3月の大会に向けて課題と感じている、「一人ひとりの自律」を促すために、じっくりと時間をかけて、選手に問いかけながら話をされていました。特に、コーチが求めている「プレー」や「姿勢」を、映像を使って共有し、選手一人ひとりに「こういうプレーや立ち振る舞いをすることを想像して、日々練習に取り組んでいるか?」ということを問われているのが印象的でした。

1つのメニューで複数の要素を取り入れる

毎日少しずつ工夫を加えて、日々同じメニューは行わないという岩井HC。ドライブや合わせの練習でも、シュートを決めて終わりではなく、リバウンドを取ったら攻守交替し、リバウンドを取った選手が一度ペイントの外に出た段階から1on1が始まるなど、1つのメニューに様々な要素を付け加えて、常に状況判断をしなければいけない練習が数多く組まれていました。

↑ゲームモデル図解 これを選手と共有しながら指導を実施している

特に強調されていたのが、「トランジション」の部分。オフェンスもディフェンスも、いかに素早く判断してプレーができるか。そのために、プレーしている選手だけでなく、周りの選手が積極的に声を掛け合い、プレーしている選手が判断を速める手助けをするところまでを、徹底的に指示されていました。ただ「声を出せ」と伝えるのではなく、「仲間を助けるために声を出そう」「チームとして判断を速めるために声を出そう」と伝えることで、選手達が意味のある声を積極的に掛け合える環境を作られていました。

↑常に声を掛け合いながらプレーしていた選手達

育成年代の指導者として「日本のバスケ」がどういうものかを把握することも大切

―最後に、岩井HCが指導をブラッシュアップするために心がけていることについて伺いました。

岩:これまで様々な指導者の方々のお話を聞いたり、勉強をさせていただいたりしてきましたし、今は若い指導者からも学ぶことも沢山ありますね。とにかく、年齢問わず多くの指導者の方から影響を受けてきました。また、ミッションに掲げている「代表選手の輩出」と「世界で活躍する選手の育成」を達成するために、もちろんNBAやユーロリーグなどの海外の映像を観て勉強するということもしていますが、今はBリーグの試合を観ることも多いです。B2の試合を観る機会も多いです。その中で観るポイントとしては、若手の選手や特別指定で加入している選手のプレーです。今指導している選手達も、まずはそこを目指すことになると思うので、いま特別指定で活躍している選手が、中学校や高校の時にどんなプレーをしていたのかを、映像を探して確認して、それを指導に活かすこともあります。世界のトレンドや一流のプレーヤーの動きやプレーを学ぶことも重要ですが、日本の現状をしっかりと理解して、「日本のバスケ」がどういうものかということを、育成年代の指導者として把握しておかなければいけないと感じています。その中で、将来日本代表になって、世界と戦える選手を育成するには、今何をすべきかということを、常に考えていく必要があると感じています。


– 取材を終えて-
取材の中で最も印象的だったのが、ミーティングの際に語っておられた「未来は今の自分がつくる」というお話です。将来なりたい自分を想像して今を過ごす。未来を描くからこそ、今やるべきことが明確になる。決して簡単なことではないですが、選手一人ひとりがなりたい未来を描き、そこに向かっていけるように、様々な角度からアプローチされている岩井HCの姿勢・行動は、育成年代の指導者としての一つの在り方を示しているのではないかと強く感じました。数年後、アースフレンズ東京Zユース出身の選手が世界の舞台で活躍している姿が観られることを楽しみにしながら、これからもアースフレンズ東京Zユースの活動に注目していきたいと思います。

(取材日 2021年2月5日 大野)

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アースフレンズ東京Z ユースチーム

アースフレンズ東京ZユースチームHP:https://eftokyo-z.jp/youth/

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