バスケットボールにおけるジャンプトレーニング

公開:2020/10/23

更新:2021/03/04

指導者からは「選手の怪我が減り、パフォーマンスが例年以上に高まった」
「すべてのスポーツに共通して大事な土台を獲得するためにも有用なヒントがつまっている」、
選手からは「このトレーニングを始めてから、これまでよりジャンプ力が上がったことが自覚できるほどになりました」など、
多くの好意的な感想をいただいているDVD『「性差」に応じたジャンプパフォーマンスを 向上させるトレーニング ~すべての女子選手必見!アクティベーションドリル~』の監修者でもある、関西福祉大学 熊野陽人氏に、「バスケットボール」におけるジャンプトレーニングのポイントを紹介していただきました。


バスケはジャンプ頻度の高い競技

バスケットボールは、305cmの高さにあるリングにボールを入れるという競技特性のため、身長が高いことはもちろん、指高(手を上に伸ばして指先が到達する高さ)が高いことが大きな武器となります。そのため、高いジャンプ力を生かしたシュートやリバウンドがゲームを支配することから、ポジションに関わらず、あらゆる体力要素の中でジャンプ力を高めることが必要であると考えられます(小山ほか,2012)。

男子バスケットボールの1試合(12分×4クォーター)中のジャンプ頻度は、McInnes et al.(1995)によると46±12回、Ben Abdelkrim et al.(2007)によると44±7回と報告されています。また、ジャンプの種類は、男子大学生の試合を対象にした調査(小山ほか,2012)によると、①スタンディングジャンプ(助走なしのその場ジャンプ)、②助走あり両脚踏み切りジャンプ、③ランニングジャンプ(助走ありの片脚踏み切りジャンプ)があるとされています。①②のジャンプは、バーティカルジャンプと言われるような股関節、膝関節の大きな屈曲-伸展動作を用いてジャンプする動作です。③のジャンプは、陸上競技の跳躍種目の踏み切り動作のように、股関節・膝関節をあまり屈曲させず、足関節の屈曲-伸展動作を主に用いるリバウンドジャンプ(別名、アンクルホップ)型のジャンプ動作です。よって、バスケットボールにおけるジャンプトレーニングとしては、「バーティカルジャンプ型」と「リバウンドジャンプ型」のジャンプを同時に取り入れていく必要があります。

ジャンプ能力向上に必要なこととは?

ジャンプ能力向上に必要なポイントとして、バーティカルジャンプ型の場合、股関節の伸展パワーを上げることが必要です。そのためには、ハムストリングス・臀筋群の動員率を上げる&筋力を向上させることが必須です。また、股関節を伸展するためには、その前にしっかりと「屈曲」させる必要があるため、ヒップヒンジという股関節の屈曲位を適切に作ることが大切です。このヒップヒンジ動作を適切に行えるようになると、ハムストリングス・臀筋群の動員率を上げることに繋がり、トレーニングを積めば筋力向上が見込めます。続いて、リバウンドジャンプ型の場合、下肢のスティフネス (≒膝伸展パワー)を高めることが必要になります。スティフネスとは、ジャンプするために接地した際に股関節や膝関節が過度に屈曲(いわゆる“つぶれた”状態)してしまわないように関節を伸展させて、下肢を硬いバネのよう振る舞う能力のことです。このスティフネスを高めるために、やはりハムストリングスの動員率・筋力を高めることが必要ですし、接地の改善なども必要になります。

性差の理解が重要

ジャンプトレーニングを行う際、ただトレーニングすれば良いというわけではなく、「性差」を踏まえた内容にすることが重要です。ご承知の通り、男性と女性の身体機能には様々な性差が存在します。筋力のみならず神経-筋の反応においては、女性は、最大脚力の70%の筋力を発揮するまでに男性の 2 倍の時間が必要であるという報告(karlsson and jacobs,1980)もあります。加えて、女性は男性よりもジャンプ時にハムストリングスの動員率が低く、またKnee-in(Toe-outやToe-inを伴う場合もある)と言われる膝が内側に向く(内側に屈曲する)アライメントになりやすく、ひいては前十字靭帯損傷リスクを高めやすい動作になる傾向にあります(MacMahon et al.,2017)。以上のことを踏まえると、ジャンプ能力を向上させるためには、「ハムストリングス・臀筋群の動員率を上げる&筋力を向上させる」ことが最も優先されるべきで、特に女性アスリートに関しては男性よりも重要なアプローチであると言えるでしょう。

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