現場の声 vol.1 県内の強豪私立に対抗するために  

公開:2020/10/02

更新:2020/10/27

埼玉県立浦和西高校女子バスケットボール部

今月の特集記事で紹介している森川靖氏が指導しているチームの一つ、埼玉県立浦和西高校の女子バスケットボール部を訪問し、インナーマッスルへの働きかけを中心とする「動きづくりエクササイズ」に取り組む趣旨などについて、顧問の中村敬子先生にうかがいました。


浦和西高校女子バスケットボール部は、埼玉県内では伝統チームとして知られ、かつては全国大会に出場することもたびたびありました。近年は強豪私立の壁が厚く、全国大会まではなかなか到達することはできませんが、県内ベスト4、ベスト8レベルを維持し、年によっては、関東大会まで駒を進めることも。

リクルートや練習環境の面でハンディキャップのある公立高校が、どうやって私立に対抗していくか。これは、多くの指導者が共通して持つ課題だと思います。中村先生は、この課題に立ち向かう強力なツールとして、森川氏のトレーニング指導を位置づけています。

左が顧問の中村敬子先生、右は森川氏

キレ、力強さ、そしてズレをつくる

──浦和西高校でトレーニング、コンディショニング系の取り組みを重視しているのはなぜですか?

「私立の強いチームと対戦すると、開始直後から相手のものすごい圧力があって、それに押され、そのまま不利な展開になってしまいがちです。その圧力に対抗するためには、普通の練習をしていていもダメだということは以前から感じていました。体育館は他の部活との共用なので使える曜日、それに時間帯も限られます。柔道場を使える日、ウエイトルームを使える日などをうまくやりくりして、うちでは全体の3割以上はコンディショニング系エクササイズに充てています」

──長年取り組んできて、どのような効果を感じていますか?

「前任校の時代から森川さんにはお世話になっているのですが、”末端の力ではなく体幹から力を出す”ことができるようになると、動きのキレ、力強さが変わってきます。うちの選手たちは決して体が大きくはないけれども、相手の強い当たりに対しても対抗できる体の強さが身についていく。それを実感しています」

「体幹から力を生み出すことができれば、”どっこいしょ”という動きではなく”ピュッ”と動ける。初動が変わってくる。そうすると、バスケットボールで重要な、相手とのズレをつくりやすくなります。無駄な動きが減ってくるので、運動量が多くなる、そして疲れにくくもなります。

「正しく体を使えるようになると、試合終盤になっても運動量が衰えないことは、長年見ていて感じています」

インナーマッスルへの働きかけは内省的な作業であり、選手たちにとって貴重な経験となる。

普段、自分たちでどれだけ深めていけるか

──この種のトレーニングは地味だし、効果が数字で表れるわけではないので選手たちのモチベーションを上げていくのが難しくないでしょうか?

「確かにそれはあります。チーム内で定着していくのには、時間がかかりますし、理解度の個人差も大きいです。このチームの場合、私が赴任して4年目に県内の強豪私立の一角を倒すことができました。生徒たちの中にも“これをやるとこんなに違うんだ”と実感が生まれたと思います。こういうことがあると、チーム内で浸透する速度が早くなりますね」

──森川さんの指導はインナーマッスルへの働きかけが中核を成しています。これは内省的な部分が大きく、継続的に取り組むことによって身体への関心が高まり、いろんな効果が期待できるのではないでしょうか?

「森川さんには月に1回ぐらいしか来てもらえないので、普段、自分たちでどれだけ深めていけるか、が重要です。生徒同士でお互いに探り合ったり話し合ったりして、答えを見つけていく作業、この行程を経験できることは、学業や他のことにも活かせるのではないかな、と私は思っています」

──教育効果も大きいと。

「はい、そう思います」

──公立校の事情として、外部からトレーニングの指導者を招聘する場合の費用捻出が大変だと思います。

「本校では保護者会の予算から出していただいています。浦和西高校は女子バスケットボール部に伝統があり、ここでバスケットをやりたいと思って入学してくる子もいるし、生徒たちのモチベーション水準もある程度高いので、必要性を説明すれば、親御さんも理解してくれる、という状況です」

取材を終えて

数校の私立がトップグループを形成し、公立高校はその壁をなかなか崩すことができない、という構造は、全国の多くの地区で同様だと思います。浦和西高校の取り組みは、その構造に風穴を開けようともがいているチームにとって、何かのヒントになるのではないでしょうか。インナーマッスルに目を向け、働きかけることは、自分の身体に対して、真摯に向き合う行為です。これがバスケットボール以外の面でも、生徒たちの成長に役立っているのではないかと語る中村先生の、教育者らしいコメントがとても印象に残りました。(宮村)


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