明日からできる!育成年代のセルフコンディショニング Vol.2

公開:2020/10/16

更新:2020/10/27

星川精豪(アスレティックトレーナー)

アスレティックトレーナーとして、各年代の代表チームをはじめ、数々の現場でコンディショニング指導を行ってきた星川精豪氏に、主に中学生年代の選手に合ったセルフコンディショニング法について寄稿いただきました。その内容を2回にわたり掲載しています(Vol.1はこちら)。


セルフケア・その2 セルフマッサージ

骨と同じ長軸方向のストレッチは大変有効ですが、骨や筋肉の成長度やオスグッドシュラッター病などのいわゆる骨端症と呼ばれる怪我により、痛くてストレッチができない場合があります。

中には、痛くても頑張ってストレッチを続けてしまう選手もいます。すると骨端症も治りにくくなったり、逆に筋肉も硬くなる可能性もあります。そしてそれが悪循環となってしまいます。

その場合は痛みを我慢してストレッチを行うのではなく、まずはセルフマッサージから始めてみましょう。そして痛みが引いてきたり無くなったらストレッチをしっかり行いましょう。 セルフマッサージを行った直後にストレッチができる場合は問題はないと思われます。

セルフマッサージは、市販の道具を使うと、効果的に行えます。現在はたくさんのアイテムが市販されていますので、自分に合った物やチームに合った物を見つけましょう。写真は、マッスルローラーバーという道具やテニスボールを使ったセルフマッサージ例です。

マッスルローラーバーによる、もも裏のマッサージ
テニスボールを使った足裏のマッサージ

2. セルフエクササイズ

これまで各年代やカテゴリーでアスレティックトレーナーを務めさせていただき、怪我の原因やパフォーマンスに違いがあることを感じました。本来であれば選手個々の成長度に合わせて対応する必要がありますが、カテゴリーで考えると中学生はPHV(Peak height velocity:年間で1番身長が伸びる年齢)であることを最大限考慮しなければならないと思います。

それを前提として、私が重視しているエクササイズを1つ紹介します。

オーバーヘッドスクワットです。手を頭上に上げた状態で行うスクワットで、本来、高校生になったら本格的に取り組んでほしいエクササイズですが、明確な意図を持って、これを中学生の段階からやってもらっています。

普通のスクワットができたとしても、手を挙げた状態でスクワットができないと、手を上に挙げる動作が多いバスケットボールでは、腰を反ることによりボールに手を伸ばし、その結果腰痛に繋がったりするリスクがあります。また、手を挙げると膝や足関節が曲がらなくなるケースもあり、その結果、膝の靭帯損傷や足関節の捻挫を受傷してしまうことも考えられます。

このような理由から、私は中学生の間に、将来を見据えてオーバーヘッドスクワットがしっかりとできるようになることを1つの目標としています。 その結果、バスケットボールに結びつく様々な動作ができるようになり、その後、成長により筋力や持久力、また骨格など体型が追いついてくると、将来的なパフォーマンスアップに繋がると考えています。

オーバーヘッドスクワット

オーバーヘッドスクワットがうまくできない原因はたくさんあります。肩関節が硬い、背中が硬い(胸椎など)、股関節が曲がらない、足首が硬いなど。指導者側で修正することも大事ですが、人それぞれ感じ方が違うため、まずは自分自身でできない理由を考えてもらいます。

その後生徒同士のパートナーから「ここが硬そうだよ、曲がってないよ」と意見を出してもらい、それを修正するエクササイズを練習前やバッシュを履く前に数種類10回ずつ2セット程度行うようにしています。

オーバーヘッドスクワットの改善エクササイズ例
セルフエクササイズの進め方

上図に示しているのは修正エクササイズ例のほんの1部ですが、各部位ごとに5〜6種類ほどあります。その中から、最終的に自分自身で選んでもらっています。 実践学園中学校では、日本バスケットボール協会の「中学校部活動におけるバスケットボール指導の手引き」の中のMoving check listのエクササイズを参考にしています2)。ぜひ御覧になって下さい。

また股関節の動きづくりでは、バッシュを利用してこのようなエクササイズも行っています。チャレンジしてみて下さい。

仰向けで片方のバッシュの裏にもう片方のバッシュを乗せます。その状態からバッシュを落とさずにうつ伏せの状態になってみましょう。またうつ伏せの状態からまた仰向けの状態に戻ってみましょう。

股関節周囲の筋肉をたくさん使いながら柔軟性も高められるため、股関節周囲において有効な動きづくりのエクササイズです。成功したら連続5回できるように頑張りましょう。


今回は実際に実践学園中学校男子バスケットボール部で行っているセルフコンディショニングについて、セルフケアとセルフエクササイズを紹介させていただきました。他にも各生徒それぞれの将来の最終予測身長やPHV年齢、成長度を算出し、その結果を体力測定の結果などとも照らし合わせ、それぞれの成長度に応じたトレーニングを行っています。

実際見てみると同じ中学1年生でも成長度が小学4年生と同じ位の生徒、逆に高校1年生と同じ程度まで達している生徒もいます。そのためある生徒はすでにバーベルを担ぎ、ある生徒は自体重、または非荷重位でトレーニングのように分けています。

特にPHV年齢前後1年ほどは怪我が起こりやすく、パフォーマンスの低下も見られやすいため、PHV年齢をだいたい把握しておくことで様々な問題の解決の糸口となります。そのプレーは技術が伴っていないためにできないのか、筋力がないためにできないのか、また成長が追いついていないためにできないのか把握することで、生徒のセルフコンディショニングのメニュー選びやチームの練習プログラム作成の材料にもなります。

日本人の値ではありませんが、下記のリンク先で身長と座高を入力することにより簡単にPHV年齢を把握できますので、ぜひ参考にしてみて下さい(https://www.usask.ca/kin-growthutility/phv_ui.php:第6回JBAスポーツパフォーマンスセミナー)。

痛みを抱えていても先生やコーチに言えずにいる生徒もいるかもしれません。そのため保護者や医療従事者などを含めたアントラージュとのコミュニケーションの中からもセルフコンディショニングの必要性を見出すこともできるため、とても大切にしています。様々な情報を整理し、しっかりとセルフコンディショニングを行うことで、将来のための準備をしましょう。

■参考文献

2)財団法人日本バスケットボール協会:中学校部活動におけるバスケットボール指導の手引き, http://www.japanbasketball.jp/wp-content/uploads/Bukatsu-compressed_2018110.pdf.


>>> 明日からできる!育成年代のセルフコンディショニング Vol.1を読む

第1回では、セルフストレッチを中心に紹介しています。

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