バスケットボールの上達を阻んでいる要素に着目し、改善する Vol.2

公開:2020/10/09

更新:2021/03/04

上達が遅い、能力がプレーに活かせない、センスがないと言われてしまう…「間違った身体の使い方」で起こるプレー上の問題の数々。正しい身体の使い方を意識し、動きを根本から変えていけば、一気に上達の道筋が開けてきます。長年バスケットボールを中心にトレーニング指導を生業としてきた森川靖氏(有限会社ファーストステップ代表)が、3回にわたってそうしたアプローチの実例を紹介します!

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改善エクササイズの実際

単に「体幹を使え!体幹を意識しろ!」と言っても、多くの選手は理解できません。体幹、特に股関節にあるインナーマッスルをしっかり動員してパワーの発生源として有効に使えるようになるには、日頃からこの部位を活性化するエクササイズを行い、少しずつ使えるようにする動きを身につけていくアプローチが必要になります。

以下では、その代表的エクササイズを紹介します。動画も参照しながら読み進めてください。

●股関節外旋筋群のストレッチ

お尻の深層部で骨盤と大腿骨をつないでいる股関節外旋筋群を伸ばすストレッチです。筋肉の位置は下図をご参照ください。脚をやや開いて長座位で座ります。両手は後ろに着きます。ストレッチする側の足のつま先を内側に向け、脚全体を内側にひねります。その状態から、膝を曲げて下腿を外側に折ります。できる角度で構いません。折った膝の上に反対足を載せて負荷を与えます。ここで重要なことは、臍より下の下腹部に力を入れて骨盤を床の方向に押し下げるように意識すること。それができないとお尻が高く浮いてしまって、ターゲットとなる股関節外旋筋群を伸ばすことができません。

股関節外旋筋群

次に、今ストレッチした側の足を、膝を少し曲げて立てた反対脚の付け根に載せて、引き続きストレッチします。下の脚の膝角度を深くすることで、ストレッチ感が増します。ここでも下腹部に力を入れ続けてください。

それぞれ、ストレッチした位置で20~30秒程度ホールド。左右差があると思いますので、硬い方を重点的に行うとよいでしょう。

●腸腰筋のストレッチ(スプリットストレッチ)

股関節の深層部で、骨盤の前面と大腿骨を結んでいる腸腰筋のストレッチです。筋肉の位置は下図をご参照ください。脚を前後に開き、後ろ足は膝をついた姿勢をとります。上半身は起こしたまま、下腹部に力を入れた状態をつくり、骨盤を前に押し出します。下腹部から力が抜けてしまうと、腰が反った姿勢となり腰を痛める可能性があり、また十分に腸腰筋を伸ばすことができませんので、注意して下さい。ストレッチした位置で20~30秒程度ホールド。左右差があると思いますので、硬い方を重点的に行うとよいでしょう。

腸腰筋(体幹部の深層で腰椎・骨盤と大腿骨をつないでいる)

●腸腰筋の動的ストレッチ(スプリットスイング)

反動を使いながら腸腰筋をストレッチします。脚を大きく前後に開き、後ろ足は膝でなく、つま先で支えます。やはり下腹部を絞るように力を入れながら、リズミカルに上下に大きく揺すります。真下に沈むことを意識してください。腸腰筋が伸びたり縮んだりしていることを意識しながら動作してください。回数は適宜。下腹部から力が抜け、上体が前のめりになってしまうと腸腰筋のストレッチにならないので、注意してください。

●ダイアゴナル・レッグレイズ

腸腰筋と、股関節外旋筋群を同時にストレッチし、活性化するエクササイズです。仰向けに寝て、脚を伸ばしてスタートします。つま先は外側を向けます。反対脚はやや曲げて身体が安定するようにします。下腹部に力を入れて腰が浮かないようにしてから、脚を伸ばしたまま対角線上を斜めに上下させます。行きの動作では腸腰筋が働き、帰りの動作では股関節外旋筋群が働きます。それぞれ、その部分を触りながら行うと、使う筋肉を意識しやすいです。回数は適宜。左右差がある場合は、硬いほう(弱いほう)を重点的に。

第2回はここまで。第3回では、ストレッチを中心とする改善エクササイズの実例を紹介します。

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>>> 第3回の記事を読む

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森川 靖 Morikawa Yasushi

1963年東京都生まれ。筑波大学大学院でスポーツトレーニング理論を修めたのち、ストレングスコーチ業を開始。当初はウエイトトレーニングを中心に指導していたが、それだけではパフォーマンス改善に限界を感じ、大きく方針を転換。インナーマッスルのコンディショニングで動きを基礎から改善する「動きづくり」を主軸に小学生からプロ選手まで数多くのクライアントにトレーニング指導を行っている。

■森川氏の指導内容をさらに詳しく知りたい方は、下記をご参照ください。

【小冊子】

>>>「スポーツパフォーマンスを高めたかったら“しっぽ”を動かしなさい」 有限会社ファーストステップ発行

【ジャパンライムDVD】

>>> 森川靖の「動きづくり」トレーニング~ インナーマッスルを使った “ 尻締め ” の極意 ~【全2巻】


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