Instagramの動画投稿とオンライン合同練習で挙がった成果

公開:2021/06/11

更新:2021/07/30

INUYAMA BASKETBALL CLUB 河内駿介コーチ

コロナ禍の練習実態を調査したアンケートの中で、詳細な回答をいただいた指導者に追加取材を行い、新たな試み等の成果についてうかがいました。最初は、愛知県犬山市の小中一貫型クラブチームで指導をしている河内駿介(こうち・しゅんすけ)コーチです。Instagramによる練習動画の投稿が子どもたちの個人スキルに上達につながっただけでなく、全国の指導者や保護者からも多数の反響があり、交流企画なども始めているそうです。


河内駿介コーチ。取材はオンラインで行いました。

U-12、U-15とOLD(オールド)

──まずチームの概要について。U-12とU-15を対象とした地域のクラブチームという認識でよろしいでしょうか?

河内:はい。もともとは男子のミニバスチームで、25年ほどの歴史があり、昨年U-15のチームを立ち上げました。僕はこのチームのOBではなく中学校からバスケットを始めたのですが、その時のチームメイトの多くがこのチームの出身でした。6月2日現在、U-12が56名、U-15が33名で活動しています。

──InstagramにはOLDというカテゴリーも記載されていますが。

河内:これは半分ギャグで立ち上げたものです(笑)。子どもたちのお父さんのチームです。私たちは、できるだけ親御さんを巻き込み、皆で教え合っていく方針で指導をしていて、お父さんたちも一緒に練習する機会が多くあります。その活動の中で、市民大会ぐらいは出てみようか、という話になってOLDクラスを立ち上げました。今年の5月からです。週1回集まっておじさんバスケをやりながら、私たちコーチの考え方なども知っていただく機会にしたいと思っています。

ドリブルとコーディネーショントレーニング動画を毎日投稿

──すばらしい活動だと思います。ここから本題に入っていきたいのですが、今回のアンケートではInstagramの練習動画投稿が大きな成果を挙げた、とご記載いただきました。

河内:はい。Instagramを開設したのが昨年の3月です。第1回目の緊急事態宣言が出ている時期でした。子どもたちは体育館で練習することができず、どうしようか、と。当初は各自が自宅でやっている個人練習動画を送ってもらおうかと考えたのですが、せっかくなのでZOOMでつないで全員が一緒に練習することにしました。ドリブルとコーディネーショントレーニングがメインです。上級生に見本を示してもらい、下級生がそれを見ながら練習するというスタイルです。その練習の様子を各家庭での練習動画を親御さんが撮影した動画を送ってもらい、僕のところで加工をして、Instagramに投稿を始めました。子どもたちがその投稿を見れば、集まって練習できない期間も楽しく過ごせるのではないか、というのがその時の考えです。

自宅でできる練習の動画投稿を毎日続けていたら、チーム外のフォロワーもどんどん増えていって予想外の大きな反響がありました。その時思ったのは、自宅でできる練習を皆さんが探していたのではないか、と。その後は、毎日違った練習メニューを紹介できるよう自分でも考えて投稿するサイクルになっていきました。6月に体育館が使えるようになるまで、自宅練習の動画を投稿し続けました。体育館で練習ができるようになってからは、クラブで行っている練習風景をそのまま投稿しています。これも、よく見ていただいているようで、その後もフォロワーは増え続けています。

クラブ員増と個人スキルの向上につながった

──クラブ員の増加にもつながった、とアンケートにはお書きいただきました。

河内:Instagramを見て体験に来る方が激増しました。今までは興味があっても、体験に行くまでのハードルが高かったのだと思います。チームの雰囲気や練習内容が、Instagramである程度わかることで、ハードルを低くくする効果をもたらしているのではないかと。エリアも拡大し、犬山市内だけでなく、車で1時間ほどかかる地域からも入団したいと言ってくださる方が増えています。決して、それを狙って始めたSNS投稿ではなかったわけですが。

──面白い現象ですね。手間を惜しまず、毎日投稿を上げ続けているのが良かったのではないでしょうか。ところで、練習動画の投稿が、もともとチームに所属している子どもたちにとっては、どんな成果をもたらしましたか?

河内:体育館に皆が戻ってきた時、明らかにスキルが向上していたんです。個人の能力が高まった状態で集合することができたので、戦術の練習に移行しやすかった。そういう効果がありました。それまで、個人練習にそこまで時間を割くことはなかったのですが、個人スキルを磨くことの重要性について、僕自身が気づくきっかけにもなりました。結果として、昨年のチームは愛知県で優勝することができました。個人スキルのアドバンテージが、その成績をもたらした大きな要素だったと思います。

ただそれよりも、コロナをきっかけにして「今できること」に集中して努力する、楽しむ姿勢を子どもたちに教え、オンラインならではの楽しさを感じてくれたのが、とても良かったなと思っています。

全国の子どもたちをつないだZOOM合同練習

──ZOOMで全国の子どもたちをつなぎ、合同練習を行ったそうですね。これは河内さんが企画をして、参加者を募った?

河内:そうです。Instagramのフォロワー数が増えるにしたがい、全国の保護者や指導者の方々から、コメントやメッセージが頻繁に来るようになりました。「近隣だったら入れたかったです」「どんな練習をしているんですか」「コロナが明けたら交流したいです」といった内容です。そのような声が増えてきた段階で、ZOOMでそれらの方々をつないで、一緒に練習してみたらいいんじゃないか、という発想が出てきました。さっそく企画してみたら、全国各地から多数の方々にご参加いただけました。投稿を始めた当初に行っていたドリブルとコーディネーショントレーニングを中心とした内容で、今年の5月に行いました。チームによっては体育館で集合して、あるいは自宅から個人で参加していただく形で。犬山の子たちが見本を見せて、皆にやっていただきました。これは楽しかったです。

福岡県のミニバスチームにもご参加いただきました。オフラインであれば、全国大会に出場しない限りは絶対に交流しないチームです。オンラインだからこそ交流できたし、そのチームの指導者の方とも会話ができ、僕自身とても有意義でした。今後も続けていくつもりです。犬山は城下町で観光業が盛んです。コロナが収束して観光地が盛り上がるような状況になった時、犬山でカップ戦などを開催して、同時に観光も楽しんでいたけるような企画を市と一緒にやれたらいいな、といったことも考えています。

どんな状況も成長のチャンスと捉え、今しかできないことを見つけ続けることで必ず明るい未来をつくれると考えています。子どもたちも、親も、指導者も、みんなが助け合いながら”結果”よりも”成長過程”を楽しみ、バスケットを通じてより多くの人達の幸せを作っていけるように、小さなクラブですがこれからも頑張りたいです。

──観光とコラボするカップ戦は、子どもたちにとっても保護者たちにとっても、良い思い出になる素晴らしい企画だと思います。本日はありがとうございました。

(2021年6月2日、オンラインにて取材)

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