チームとの関わり方 ── 実際のゲームから解き明かすコーチングとスカウティング【前編】 

公開:2020/08/21

更新:2021/02/22

分析ソフトの使い方

試合のビデオは、スポーツコードとゲームブレーカーの2種類のソフトを用いて分析しています。

スポーツコードでは、プレーの種類ごとにシーンを切り分け、それぞれをコーディングして保存することができるので、たとえばミーティング時にヘッドコーチが「ペイントからのショット」と指定された時、それに該当する映像を瞬時に呼び出すことができます。ハーフタイムに前半のプレーを振り返ることもできるので、スピード感のあるフィードバックが可能です。

現在私が行っている作業で重要だと考えているのが、コーディングした映像をデータベース化することです。

セットプレーを例にすると、1つのセットプレーを、リーグ戦1シーズン当たり200回ほど実施します。リーグ戦では同じ相手と何度か戦いますので、分析結果がデータベース化されていれば、次戦への対策を練る時に、前の試合のセットプレーをすぐ呼び出すことができます。  

セットプレーの種類ごとに保存するだけでなく、相手ディフェンスの対応によって変化する攻撃オプションも細分化しています。ピックアンドロールの場合なら、相手の対応はブリッツかヘッジかアイスか。さらに、誰がフィニッシュをしたのか。ボールハンドラーなのかスクリナーなのか、あるいはスポットアップしてきた別のプレーヤーなのか。それらも細分化したうえで保存しています。

このデータベース化によって、ヘッドコーチの要求に応じて、ケースバイケースの映像を特定して即出せるようになりました。

選手への説得材料としてのデータベース

セットプレーには必ず始まりがあって、いくつかの展開の後、最後はシュートで終わります。ディフェンスする立場になった時、シュートに至るプロセスのどこかでパスをディナイすると相手のパスが乱れ、相手が狙っていたインサイドでのシュートまで持っていけない状況が生まれる。これを選手たちに教えたい時、データベース化した映像から、ディナイに成功して相手はシュートまでもっていくことができなかった。ずばりその場面を探し出して示すことができます。

すると選手は納得して、ディフェンスに行くことができる。映像データベースはこのように活用できます。

スカウティングとレビュー

スカウティングするときに留意しているのは2点です。

・相手チームの強みと弱みを分析する

・ヘッドコーチが求める情報を抽出する

後者については、必ず求められるのがセットプレー、得点源のプレーヤー、主要なリバウンダーです。これを抽出する情報源が、先ほどお話ししたスポーツコードのデータベースです。数値化したエクセルデータにプラスして、映像も必ず付け加えます。映像をリンクさせる理由は、数字だけでは把握できない情報が映像の中には含まれているからです。たとえば相手ベンチの動きや雰囲気なども重要だと思っています。

レビューは自チームのプレー分析です。細かく数値を取っていくと、次の対戦にとても役立つ情報を得ることができます。ピックアンドロールを仕掛けて、最終的にどのパターンで得点が最も決まっているか。

これを対戦相手Aの場合で見ていくと、カッティングプレーが高確率で決まっていることがわかる。Aチームに対しては、このプレーが有効であることがわかります。また同じ相手に対して、オフェンスリバウンドのポイントバーポゼッション(1回のポゼッションに対する得点率)は1.36。この数値は1.2を超えると高いと言われているので、これも相手の弱みであることがわかります。

さらにトランジションオフェンスの機会が21回あって、27得点を奪っています。かなりの高確率と言え、このAチームはトランジションディフェンスが比較的弱いということがわかり、次戦への貴重な情報となります。これをもとに、次戦ではトランジションで積極的にボールをプッシュして次々と得点を奪うことができました。  

同じ相手との対戦で、試合終了間際に特定の選手にスリーポイントを立て続けに決められて負けた経験がありました。次の対戦で同じ状況にならないように、ヘルプディフェンダーがギャンブルに行ってその選手を止める練習をして臨んだのですが、実際の試合では選手に余裕がなくなってギャンブルに行くことができず、同じパターンでスリーポイントを決められてしまいました。

データを活かして準備をしていたにもかかわらず、このように試合の重要な場面でそれを活かすことができない難しさも経験しています。

(以下、後編にて)


>>> 他の「データ分析」記事を読む

あなたの悩みや疑問に“あの”名将が答えます。
回答は、当サイト内で順次公開!
名将からのアドバイスでより良いコーチになるチャンスです!