公開:2021/03/05
更新:2021/04/09
講師:浜松開誠館中学校女子バスケットボール部 石川奈美監督
当サイトでも先日よりご案内しておりましたが、2021年2月27日より全5回シリーズで行われたオンラインセミナー「実践例から学ぶ映像分析の活用法」の内容から、一部を要約してご紹介します。第1回は、2月27日に「分析ツールを使った、選手による自チームの振り返りの実践と効果」というテーマで開講されました。中学校女子バスケットボールチームでの実践例です。
講師は、静岡県浜松市にある私学、中学校で女子バスケットボール部を指導している石川奈美教諭です。浜松開誠館は県内でも1~2位を争う強豪チームであり、バスケットボールでの自己実現を目指して、県内から優秀な選手たちが集まっています。そして、同校では学習ツールとして生徒全員にiPadが支給されていることから、iPadを使って選手個々が試合の振り返りを行い、プレーの理解・上達に役立てています。分析ツールは、SPLYZA TEAMS(スプライザ・チームス)を利用しています。
—–まずは、映像分析をどのような形で指導に取り入れているか、その概要を石川先生にお聞きしました。
石川:公式戦・練習試合の映像を撮影し、それをSPLYZA TEAMS(スプライザ・チームス)のサイトにアップロードします。アップロードされた画面には、矢印や図形を書き込んだり、テキストを入力したりできるので、生徒個々が好きな時間にプレーを確認して、各自が発見したこと、考えたことなどを自由に書き込んでいます。
司会:実例を少し見てみましょう(ここでSPLYZA TEAMSにアップロードした最近の練習試合の画面を共有)。シュートの場面で、「S(シュート)適当」「しっかり踏んでいない」「最後まで丁寧に打つ」といった書き込みが入っています。これは選手たちが書き込んだものですね。選手たちは、全員が書き込んでいるのでしょうか?
石川:全員が書き込むことをノルマにしています。
司会:先生が書き込むこともあるのでしょうか?
石川:ときどきあります。
司会:探してみましょう。あっ、ありましたね。「ディナイからインラインを全くやっていない…」「ここで○○に渡しても何もできない。自分で切っていけ…」プレーに対する具体的な指示が入力されています。
石川:試合後のミーティングで選手に同じ話をしても、ピンと来ないことが多いですが、映像とリンクしていると、理解しやすいです。ここが大きなメリットではないかと。私が書き込んだら全員に通知が届くので、意識の高い選手は放っておいても見てくれます。ただし義務化はしていません。義務にしているのは、選手自身による書き込みです。
参加者より質問:書き込みは手間と時間がかかりませんか?
石川:私自身の書き込みは、1Q分を一気に作業するようにしています。1つの書き込みは数十秒で終わりますが、それでも気がつくと1時間、2時間とかかってしまうことはあります。選手たちは帰宅後の時間を使って、iPadまたはスマホから書き込みをしています。
司会:このような「振り返りのルーティン」を導入したことで、一番感じている変化は何ですか?
石川:私自身のストレスが減りました。選手に何かをアドバイスした時、その話がどこまで伝わっているのか、十分な手応えがないことがよくありました。例えば「ボールを見なさい、ボールマンを見なさい」と言われた時、選手はいつ見るのか、ボールマンのどこを見るのか、具体的なニュアンスをすぐには理解できません。
また、「遅い」と指摘された時、何がどう遅いのか、選手自身ではわかりづらい。あるいは、自分ではやっているつもりなので、言われていることが理解できない。けれども映像があれば、ここのコミュニケーション精度が上がることを実感しています。コート上で十分に伝えられなくても、後で書き込めばよいと思えるようになって、ストレスが減りました。
参加者より質問:撮影は選手が行っているのでしょうか?
石川:はい、そうです。iPadで撮影しています。SPLYZA TEAMSへのアップロードは、試合から戻ってきたタイミングで学校で、あるいは自宅に通信環境があれば、自宅でやっています。過去1年間はコロナの影響で保護者も試合会場に入れません。ですから、保護者もSPLYZA TEAMSで試合映像を見ることができるメリットもあります。
司会:他に、映像振り返りをルーティン化して感じている変化はありますか?
石川:以前も試合映像はビデオ撮影していましたが、全員が集まってそれを見る時間は、そう簡単には確保できません。選手たちが各自アップロード映像にアクセスして、個別に見ることができるのはとてもよいです。
司会:そのルーティンは、SPLYZA TEAMSのようなアプリがなくても、YouTubeの限定公開機能などを使えば、可能ですね。コメントも書き込みできる。
参加者からの質問:ルーティンの導入後、選手を見ていて進歩した部分は?
石川:理解力、判断力が上がりました。やってほしいプレーを練習中に指示した時、動きが変わるまでの時間が短くなりました。それによって練習の質が上がり、無駄が省けていると思います。
▼「実践例から学ぶ映像分析の活用法」各回レポート
>>>【第3回】ウインターカップ中のリアルタイムフィードバック
>>>【第4回】高校年代における映像を活用したスカウティング
>>>【第5回】練習の精度を高める映像によるリアルタイムフィードバックの活用方法