「速いバスケットボール」と「個の育成」を目指して~名古屋ダイヤモンドドルフィンズユースの取り組み Vol.2~

公開:2021/01/22

更新:2021/03/25

名古屋ダイヤモンドドルフィンズユースチームのHCであり、日本代表のテクニカルスタッフとしても活躍されている、末広朋也氏にチームの指導理念や練習での取り組みについてお話を伺いました。第2弾となる今回は、末広HCのバスケットボール観と実際の練習の様子をお届けします。

目指すのは「速いバスケット」と「個の育成」

―末広HCが目指しているバスケットのスタイルについて教えてください。

末広朋也HC(以下:末):私自身「速いバスケット」をテーマにして指導をしています。名古屋ダイヤモンドドルフィンズのトップチームも、「速いバスケット」を掲げてチームつくりをしていますし、ドルフィンズのアカデミーで指導する話をいただいた時も、目指すバスケットの方向性・理念が一致していたので、是非やらせていただきたいと思い、HCに就任させていただきました。ユースチームとしては、トップチームで活躍する選手を輩出することが目的の一つでもあるので、トップチームと同じ方針で指導することは非常に重要だと感じています。「速いバスケット」という共通の方針のもとに、ユースチームでも選手の育成にあたっています。

―具体的に「速いバスケット」とはどういったものでしょうか?

末:「速いバスケット」というのは、簡単にいうとファーストブレイクで得点を取ろう。です。しかし、対戦相手のレベルが上がるとこれは簡単なことではありません。その簡単なことではない領域にチャレンジし、どんな相手でも速い展開で攻撃を終わらせることができるように、走り出しやタイミング、スペースの考え方を工夫しています。
これらを実現するには、ただ足が速いとか、身体能力が高い選手が揃っている、ということが最も大切なのではありません。激しい接触や止まらない攻防が行われている中での休みたい時間帯に、休まず3歩をダッシュする習慣や守りが終わった瞬間から直ぐに2手先を読んでスペースを見つけ、走りながらオープンショットをつくる発想つくりが大切だと感じています。
逆に、スプリント能力がそれほど高くない選手たちでも、これらのことが習慣化されてプレーで発揮できれば、技術の高いチームにも勝ると考えています。日本代表はこの先も、海外のチーム相手にサイズが劣っている中で勝利を目指していかなくてはいけないと思います。今の選手たちは将来、その世界に飛び込んでいくわけなので、そういう発想で指導者も選手たちと向き合い、戦術に落とし込んでいかなくてはいけないのではと思います。
さらに、今話をしたことだけでは、選手のスキル的な武器は不十分なので、練習の多くは、”1人で状況を打破できるオフェンス力”と、”1人で2人を守るディフェンス力”を重視した「個の育成」が目指せる内容も同時に取り入れる工夫をしています。
「速いバスケット」の中に「個の育成」を追及し、選手とともに”小さいチームが大きいチームを倒せるバスケット”を共有していく日々は、決してマイナスにはならないと感じています。

ほとんど止まらない練習

ここからは、実際の練習の様子を少し紹介したいと思います。

まずは、ハーフコートで複数のスキルや判断を伴う練習からスタート。間をあけることなくどんどん選手がドライブしていき、ディフェンス役のコーチの動きを見て、パスをする、もしくはフィニッシュする。ドライブの入り方や、パスを出す位置を変化させながら、常に速さを意識して練習が進んでいきます。

 次に、3on3を中心に、攻守の切り替えの速さ、判断の速さを意識したメニュー。14秒の中でいかに攻め切るか、守り切るか。時間的な制約の中で速い判断とプレーが求められる練習が展開されていきます。

 中でも印象的だったのが、「練習がほとんど止まらない」ことです。末広HCも、「練習を止めて一つ一つ指導する、いわゆるクリニックのような指導はほとんどしなくなった。練習の意図、深めてほしいポイントは伝えてあるので、選手が自分で考えて取り組むこと求めています。」と仰っていました。選手は生じた課題を各自でコミュニケーションを取り、次のプレーを待っている短い時間の中で、考え発言して、自ら修正し、実行に移すことを求められています。そうして、練習から常に考えて、短い時間の中で判断することを求めることが、理想とする「速いバスケット」を体現する選手の育成に繋がっているのだと強く感じました。そうした仕組みや環境ができているのは、末広コーチやスタッフの皆さんの努力があってこそ。簡単に真似できるものではありませんが、育成年代の指導のカタチとして、非常に参考になるものではないでしょうか。

自分が指導した選手がコーチになって活躍することが目標

―最後に、ご自身の将来的な目標を教えていただけますか?

末:自分自身はこれまで日本代表に携わらせていただいたり、指導者として日本一を経験したり、様々な体験をさせていただきました。もちろん目標としては、チームとして成果を上げる、チームから日本代表選手や世界で活躍する選手を育てるということもあります。ただ、もっと長い目で見て、長期的な夢として考えているのは、教えた選手たちが、日本代表のスタッフや、日本一になるようなコーチとして活躍することです。ですので、選手たちには、自らがプレーするだけでなく、考えていることを積極的に伝えることを今の段階からしていくことが重要だと考えていますし、その仕組みつくりも行っています。
そのためには、バスケットをプレーする上で、「なんとなくスキルを発揮するのではなくて一つ一つのプレーやスキルに意味がある」ということを伝えていきたいですし、感じてほしいと思っています。簡単にいうと、理論を理解して、駆け引きを楽しむという領域ですかね。そのような経験から、バスケットの楽しさを再確認し、伝えたいというモチベーションになってくれたらと願っています。プロコーチではなくてもいいので、バスケットを教える側に立ってほしいなと思います。


-取材を終えて-
2回にわたり、名古屋ダイヤモンドドルフィンズユースチームの取り組みや末広HCの指導理念について紹介してきました。目指すバスケットがあって、それに向かって練習を組み立てていく。目の前の勝利よりも選手の将来を見据え、「自立」した選手の育成を目指す。末広HCの指導理念のもとで育った選手たちが、将来様々なフィールドで活躍することが、今から楽しみでなりません。

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名古屋ダイヤモンドドルフィンズユースチーム

名古屋ダイヤモンドドルフィンズユースチームHP:https://nagoya-dolphins.co.jp/academy/

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