ハードワークが体現できる環境をつくる~川崎ブレイブサンダースユースチームの取り組み~

公開:2021/02/05

更新:2021/06/30

指導者側の共通理解、環境づくりも大切

トップチームのコンディショニングも統括されている吉岡さん。組織としての体制づくりについてもお話を聞かせていただきました。

吉:チームでは、トップからユースまでトレーナー陣も一貫した指導体制を作っていて、常に情報共有ができるように、週1回の会議を行っています。現在、ユースには2名の専属トレーナーがいますが、私も含めてトップを指導しているトレーナーとも常に情報を共有しながら、選手一人ひとりのケアや、その時々に必要な指導をするようにしています。

それから指導側としては、救急管理体制(EAP)をしっかりと作っておくことも重要です。このような体制が整っていないクラブは多いのではないかと思うのですが、医療関係者との繋がりやチーム内での連携など、もし練習時に選手が倒れたら、救急車が必要な事態が起きたら、どのように対応するのか、どこに連絡を入れて、誰がどう動くのか。そうしたリスクマネジメントを事前に組織として決めておいて、共有しておく。それが選手を守ることになるので、そうした体制を整えるのも我々の役目だと思っています。

山:トレーナーの皆さんにしっかりとサポートしていただけるので、非常に助かります。どうしても自分自身の経験からしか、コンディショニングやトレーニングについてアドバイスはできないので、専門的な知識を持ったトレーナーがいてくれると心強いですね。トレーナーとコーチ陣も、週1回のミーティングをしてコミュニケーションを取って、常に情報交換をしています。先日、1月4日に練習試合のお誘いをいただいたのですが、それってコンディション的にどうなのかなと、自分自身考えました。トレーナーに相談をして、選手のコンディショニングを考えて練習試合はお断りしたんですが、日頃から連携を取っていることで、私自身も選手のコンディショニングやフィジカルの部分は意識するようになりましたね。

激しいプレーや練習に耐えられる体を作る

次に、トレーニングの部分についてもお話を伺いました。ユース年代のトレーニングでどのようなことを意識して指導をされているのでしょうか?

吉:トレーニングに関しては、フィジカルの差が大きい年代なので、まずは普遍的な情報や知識をしっかりと提供するようにしています。実際のトレーニングメニューは、ある程度選手の成長に合わせて調整を行います。中学生でも、体が出来上がってきている選手は、重りを使って負荷を掛けたトレーニングをするべきだと考えていますし、まだまだ成長段階の選手は、自重のトレーニングで十分です。3年間しっかり追跡できるので、定期的に写真を撮ったり、体重などを管理したりしていく中で、成果を見ながら指導ができています。体重を増やすのが良いかというと、それは人によって違いますし、ぽっちゃり気味な選手は逆に体が絞れてくることもあります。あくまで、選手一人ひとりの様子を見ながら、バスケットボールのパフォーマンスに活かせる身体を作っていくように心がけていますし、コーチにも理解してもらいながら、日々指導をしていくことで、明らかな変化を加えられるなという実感はあります。

山:見た目で体付きが変わっていますし、日々の練習を指導してる中でも、フィジカルが強くなっているということは実感しますね。練習にディフェンスのダミーで入るときに、選手とコンタクトするときがあるのですが、以前より確実に力強くなっているなと感じています。

↑山村HCも日々の練習でフィジカル面の成長を実感している

怪我無くプレーすることが一番の成長に繋がる

最後に、現在抱えている課題とこれからの活動に対する思いを伺いました。

吉:現状の課題としては、睡眠時間の確保と食事のタイミングと時間です。練習場の都合上、どうしても練習開始時間が遅くなり、終わりは21時を過ぎてしまいます。そこから帰宅することを考えると、食事をとる時間も、睡眠時間も、なかなか理想的な状況にはならないのが現状です。そこは、選手自身や保護者の方とも協力しながら、少しでも良い環境が作っていけるようにしたいと思っています。
 私は、一番は選手が怪我無く成長することだと考えています。男女問わず中高の全国大会に出場している選手の中には、テーピングを巻いていたり、痛みをこらえてプレーしたりしている選手もいます。そうした選手を見ると悲しい気持ちになります。

 ユースの指導は、選手人生を左右する3年間、6年間になるので、そこには責任を持って指導しなければいけないと感じています。このチームは現段階において体格やバスケットボールのスキルやテクニックに秀でた選手で構成されている訳ではありません。それでも、このチームを選んで、「川崎ブレイブサンダース」を背負って戦ってくれています。彼らに、我々コンディショニングスタッフができることは、知識と技術を与えることによって少しでもバスケットがうまくなるサポートをすることだと思います。定期的なコンディショニングのチェックと座学で、怪我を予防する。それで良い練習ができてバスケットがうまくなることに繋がる。そこをどれだけ継続と徹底できるかが重要だと思っています。 今、目の前の結果や実力にこだわるのではなく、いつかその選手が伸びるタイミングが来るので、そのために土台をしっかり作っていくこと。いつかその選手が伸びたときに、「あの下積みがあったから活躍できているんだ」と思ってもらえるように、これからも活動していきたいと思います。


-取材を終えて –
ここまで組織的に、コンディショニングやフィジカルの強化に注力するクラブは他にはないのではないかと思います。選手の将来性、可能性を引き出すために、まずは怪我なくプレーするための土台を作ること。スキルや戦術の指導と並行して、こうしたコンディショニングやフィジカルの指導を行うことは、育成年代で非常に重要な要素だと思います。もちろんこうした取り組みには、組織体制や資金面でのハードルもありますが、まずは指導者が「コンディショニングに対する意識を持つ」ことが大切。何年か先に、川崎ブレイブサンダースユースチームから、トップチームや世界で活躍する選手が生まれたとき、きっとその選手達は「ユースでトレーニング、コンディショニングの重要性を学べてよかった」ということを実感することでしょう。先を見据えて指導を続ける、川崎ブレイブサンダースユースチームの取り組みは今後も注目です。

(取材日:2020年12月17日 大野)

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川崎ブレイブサンダース ユースチーム

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