初歩から始めるゲーム分析 【前編】5つのキーファクターに注目しよう  

公開:2020/08/14

更新:2021/02/18

Off Eff(Offensive Efficiency)

オフェンス・エフィシエンシー。これは、簡単に言うとオフェンスの効果、効率を指します。100回攻撃したときに何点取れるか、という数字です。

例えば60点取った試合が良いのか悪いのかは、その得点数だけからは正当に評価はできません。80点の場合も同じ。

ゲームにはテンポがあるので、速いペースで攻撃を行っていれば攻撃回数が多くなり総得点の値は高くなります。でも効率は必ずしも良かったとは言えないかもしれない。一方、ゆっくりめに攻撃して総得点は低かったがオフェンスの精度は高かったというケースもあります。

これらゲームによって左右される要素をならし、100回攻撃した時の値に換算したものがこれです。

数式は、全得点を全攻撃回数で割る。これで、1回攻撃した時に何点取れるか、の値が出てきます。これに100をかければ、100回攻撃した時の値になります。

バスケットボールのオフェンスの終了パターンは、2種類しかありません。1つはシュート、もう1つはターンオーバーです。この2つの要素が数式に反映されています。

数式を具体的に見ていきましょう。分子のPTSはPoints=得点。分母のFGAはField Goal Attempt=フィールドゴールのシュート回数。FTAはFree Throw Attempt=フリースローの回数、TOはターンオーバー。

FTAのところにカッコ書きで数式が入っていますが、これはフリースロー1回の試投が、フィールドゴール1回の試投と比較してどのぐらいの重みをもつか、を示しています。フリースローは得点を獲得する確率が高いので、フィールドゴールよりも割り引いて、0.44を掛けた数字が最も実態に近いとされています。これに、ターンオーバー回数を加えて、全攻撃回数を算出しています。

これらの各要素は、ゲームのボックススコアを記録していれば必ず出てきますので、それらを数式に当てはめればOff Effの値が出てきます。

eFG% (Effective Field Goals Percentage)

エフェクティブ・フィールドゴール・パーセンテージ。効果的なフィールドゴールの比率。これを算出する目的は、フィールドゴールの得点効率を2ポイントシュートと3ポイントシュート間で均一化して、全体的な得点効率を評価することです。

2ポイントの60%と3ポイントの40%がイコール(2ポイント10本中6本決める価値と3ポイント10本中4本決める価値が同等)という考え方に裏付けられた数式です。

2ポイントの決まった回数(FGM;Field Goals Made)と、3ポイントに0.5を掛けた数字を合算して、FGA=フィールドゴールのシュート回数で割ります。この数字を見ることで、どれだけ効果的なシュートを打てているか、を測ることができます。

仮に3ポイントの成功率が30%しかなく、全体的なフィールドゴールの成功率が50%以下だった場合、一見、シュート効率が悪いようにも見えますが、この数式に落とし込んでみると、それほど悪くない、という評価を下すこともできるわけです。3ポイントシュートをよく打つチームにとっては、重要なスタッツです。

FT Set(Free Throw Set)

フリースロー・セット。フリースローをどれだけ効率的にもらえているかを示す数字です。

バスケットボールではフリースローをもらうことが、最も得点効率が高まる要素です。フリースローが80%の確率で決まるとすると、その期待値はフリースロー1本あたり0.8点、通常のフリースローは2本あるので0.8×2=1.6。つまりフリースローの機会1回あたり、得点の期待値は1.6となります。

3ポイントシュートと比較してみましょう。3ポイントを50%の確率で決めた場合でも、3×0.5=1.5。期待値1.5点で、フリースローには及びません。同じ期待値を2ポイントシュートで得るためには、2×0.8でようやく1.6になる。つまり80%の成功率が必要になります。

フリースローをしっかりもらえているかどうか、これがオフェンス効率では極めて重要との考え方に立ち、このスタッツが重視されています。

別の見方では、フリースローをもらえていることは、相手からファウルを受けている。これはフィジカルにプレーしていることを示しています。このFT Setは、ゴールに向かって強くプレーできているかを評価する指標にもなります。

TO%(Turn Over Percentage)

ターンオーバー・パーセンテージ。先ほどもお話ししたように、オフェンスはシュートかターンオーバーでしか終わりがありません。ですから、ターンオーバーをどれだけしているか、はとても重要です。

敗戦後の反省として、「シュートを決められなかったから負けた、決めるべきシュートを決められなかった」という弁をよく聞きます。しかし同じゲームで、オフェンスの40%でターンオーバーが起こっていたとしたら、どちらが問題ですか、ということです。

ターンオーバーも実数を追うだけでは本質が見えません。攻撃回数が多いときの10回と、少ないときの10回では意味が違います。これも効率性を見ていく必要があり、数式としては、ターンオーバーの数をポゼッション数で割り、それに100を掛けます。

OR%(Offensive Rebound Percentage)

オフェンスリバウンド・パーセンテージ。オフェンスリバウンドは、外れたシュートの数が前提として存在しています。シュートが成功していればオフェンスリバウンド数は減りますし、シュートまでいく前にターンオーバーが起こっていれば、やはり数が減ります。

そうした要因に左右されずに、単純にミスショットに対してどれだけリバウンドを取れているかを示しているのがこの数値です。

獲得したオフェンスリバウンド数(OR)を、実際取れたかどうかは別にして獲得可能だったオフェンスリバウンド数(OR+ディフェンスに取られた回数:Opp DR)で割り、100を掛けて算出します。

オフェンスリバウンドを5本取ったゲームがあったとします。ミスショットが50本あるうちの5本(10%)なのか、10本あるうちの5本(50%)なのか。同じ5本でも、この2つには大きな違いがあります。この違いを浮かび上がらせる指標です。

>>> 一律の基準で評価することの意味

あなたの悩みや疑問に、経験豊富な指導者が答えます。
回答は、当サイト内で順次公開。 皆様からのご質問をお待ちしております。
(質問者が中高生の場合は、指導者または保護者のアカウントからご質問を送信してください)