初歩から始めるゲーム分析 【前編】5つのキーファクターに注目しよう  

公開:2020/08/14

更新:2021/02/18

一律の基準で評価することの意味

──どのスタッツも数式の意図が明確で、これらを算出することでチームの現状を正確に把握することができそうです。

はい。各スタッツの説明で出てきた要素は、指導者であれば皆さん注目されていると思います。フリースローをしっかりもらえているか、ターンオーバーは少ないほうがよい、オフェンスリバウンドは数多く獲得すべきだ、とか。多くの方が、そのように考えます。

バスケットボールで勝敗を左右するそれらの要素について、一歩踏み込んで客観化したデータで捉え、相手や種々のシチュエーションが変わった場合でも、一律の基準で評価できるようになるとよいわけです。

このような評価基準を持った上でオフェンスの課題を考える。すると、シュートの効率がよくないのか、フリースローをもらえていないのか、ターンオーバーが多すぎるのか、オフェンスリバウンドでセカンドチャンスにつなげられていないのか…といった問題点が明確になってきて、改善のための優先順位をつけることができます。シュート練習を重視するのか、あるいはターンオーバーされない練習を優先するのか…。

──自チームのプレーを客観視して、課題を選別するステップにつなげることができる。

はい、その通りです。先ほどオフェンス・エフィシエンシーのところで言いましたが、その他の指標も、ゲームの基本的なボックススコアをつけていれば、それらの数字から算出することが可能です。計算式を入れたExcelシートをあらかじめ作成し、ボックススコアのシートとリンクして反映させていけば、簡単な作業で運用できます。

データ分析に関して初心者の方は、この5つのキーファクターを見ていくところから始め、チームとしての課題を見つける、優先順位をつけるという手順を踏んでいくことをおすすめします。その中で自分なりの型を作っていったらよいと思います。

──課題の優先順位は自ずと見えてくるものでしょうか。

見えてきます。例えばTO%が20を超えるようであれば、シュートにもっていくまでの過程に問題があると考えるべきであり、練習の優先順位はシュート練習でなく、相手にターンオーバーさせない練習を優先すべきです。

また、TO%が10以下であるにもかかわらず得点が伸びていないとしたら、別項目のeFG%、FT%、OR%などを見ていけば、チームとしての傾向がわかり、課題克服の道筋を立てることができます。

チームなりの基準値(目標値)を持っておくとよいと思います。一つの目安としてはeFG%=50以上、FT%=10以上、TO%=16~20、OR%=35以上、Off Effは100を目指す。

しかしこの目安はあくまでも参考です。何度か実際のゲームで5つのスタッツを取り、現状把握した上で、その現状に即した目標値を設定する。そういうやり方のほうが現実的です。

少しレベルの高いチームになると、自分たちが目指すバスケットボールというものが明確にあると思います。オフェンスリバウンドを徹底して取ることを目指しているなら、OR%=40を目標に設定して、練習内容を考えていくといった形です。

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恩塚 亨 Toru Onzuka

1979年、大分県出身。バスケットボール女子日本代表アシスタントコーチ、東京医療保健大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ、東京医療保健大学准教授。2006年、東京医療保健大に女子バスケットボール部を創設し、並行してアナリストやテクニカルスタッフとして女子日本代表チームに関わる。その高い分析力と指導力を生かし、2017年、創部12年目にしてリーグ戦&インカレともに初優勝。2019年まで3連覇中。


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