ジャンプはテクニックが重要。早期から正しい跳び方を身につけさせよう

公開:2021/11/26

更新:2021/12/13

アスレティックトレーナーとして実践学園中学校男子バスケットボール部や、日本バスケットボール協会が行っている将来の日本代表を発掘・強化・育成するキャンプなどで、育成年代の選手たちにコンディショニング指導を行っている星川精豪氏に、主に中学生世代を対象とした連続ジャンプ強化の方向性についてうかがいました。

ジャンプ力の差はテクニックの差

各年代のバスケットボール選手たちのジャンプパフォーマンスが、どのような要素に関係しているかを、私自身、研究論文として発表したことがあります。①垂直跳び、②助走をつけての両足ジャンプ、③助走をつけての片脚ジャンプ、のそれぞれについて、中学生・高校生・大学生各年代による違いを調べました。

年齢が高くなるにしたがってジャンプ力は上がっていきます。下の年代が上の年代に劣る大きな要因は筋力ではないかと予測していたのですが、統計的な有意差は出てきませんでした。そこで、その他の要因を探るために種々の動作解析行いました。

その結果見えてきたのは、ジャンプの行い方、すなわちテクニックに差があるということ。高校生と大学生では跳び方に大差がないのですが、中学生はそれとは異なる動作をしている傾向が出てきました。(図1参照)

図1 ジャンプ時の動作解析結果。膝関節(上のグラフ)と股関節(下のグラフ)の角度変化の様子を示している。H(高校生)とU(大学生)の波形は似ているが、JH(中学生)はそれらと異なっていることがわかる。

ジャンプパフォーマンスの差は、意外にもテクニックが大きく関係しているということが、この研究から示唆されたわけです。ここで言うテクニックとは、習熟度だけでなく、成長期特有の身体的特徴から来る「跳び方」も関係しているようです。身長が伸びている途中の小学生・中学生の時期は、身長全体に対する膝から下の割合が大きいです。膝下が長いと、膝関節と股関節を同時に伸ばしていくことが難しく、股関節のパワーをうまく使えない傾向があります。

調査時に中学生だった選手を高校生になってから追跡調査してみると、跳び方が変わっている様子が見て取れました。大人の跳び方に近づいていました。

正しい跳び方、身体の使い方を教えておく

ですから中学生年代でリバウンドジャンプに長け、ボールを獲ることができている選手は、単純に早熟である可能性があります。その時の身長が高いか低いかではなく、PHVA(Peak Hight Velocity Age)と呼ばれる身長が最も伸びる年齢が、早めに出現しているということです。身長が高くてもリバウンドジャンプが苦手な選手は、PHVAがまだ来ていないのかもしれません。

つまり、中学生年代では成長の遅速によってリバウンドジャンプ(連続ジャンプ)のパフォーマンスに差が出ている可能性が高い。

ここから言えるのは、この年代では将来のパフォーマンスアップに備えて、正しい跳び方、身体の使い方を指導しておくことが重要であると、考えられます。成長が追いついてきたタイミングで本格的な筋トレで負荷を与える、あるいは何度も跳べる体力をつけるようなトレーニングを課すことで、適切な強化ができると思います。

目の前の選手が、現在、成長期の段階にあるのか。ジャンプの技術を教えることが優先なのか、それとも筋力・体力に働きかけるべきなのか。このあたりの見極めが大切です。

ジャンプ技術を磨くエクササイズ

一般的には高度な筋トレ種目と思われているパワークリーンやスナッチといった動作は、実はジャンプの技術を磨くために、とても有効です。海外に目を向けると、たとえばスペインでは小学生年代の子どもたちにも、ジュニア向けの軽いバーを使ってこれらの種目がよく取り入れられています。

先ほど触れましたように、膝下が長いため大人と同じように膝関節と股関節を同時伸展していくような挙げ方は難しいのですが、これらのエクササイズを通じて垂直方向に効率よくパワーを発揮する能力を開発できる。これは一つ参考になると思います。ジャンプテクニックにつながるトレーニングは、関節に過剰な負担がかからないように留意しながら、成長の遅速に関係なくしっかりやっていくという考え方です。

ドロップスクワットのすすめ

早いうちからジャンプの正しいテクニックを身につける意味で、私自身が重視しているのは、「しっかりしゃがめること」です。近頃NBA選手をはじめよく目にするエクササイズとして、ドロップスクワットがあります。これは、立った状態から素早くしゃがむ動作にフォーカスしたもので、自分が最も力を発揮できるパワーポジションまで、できるだけ早く重心を落とします。

連続ジャンプを想定した場合、2回目以降のジャンプ時に、いかに早くパワーポジションをとれるかが重要であり、そのためにも有効なエクササイズです。中途半端なポジションから2回目以降のジャンプをしても、早く高く跳べることはありません。パワーポジションから、以下の動画で紹介するような様々なバリエーションがあります。

ドロップスクワット→スプリットスタンス→エクスチェンジ→ダッシュ(撮影協力/実践学園中学校男子バスケットボール部。以下同)
ドロップスクワット→ポンピングジャンプ→ダッシュ
ドロップスクワット→ポンピングジャンプ→クロスステップ→ダッシュ
ドロップスクワット→ポンピングジャンプ→サイドステップ→ダッシュ①
ドロップスクワット→ポンピングジャンプ→サイドステップ→ダッシュ②

ドロップスクワットは、私が指導しているチームでもウォーミングアップとして必ず行っています。自分自身のパワーポジションを知り、その姿勢を素早く取れることは怪我の予防にもつながります。ウォーミングアップで行う趣旨は、そういった部分を考えてのことです。

スクワットに代表されるように、しゃがむ動作は通常、ゆっくり行うケースが多いため選手たちは初めは戸惑いますが、慣れるにしたがってスピードが出てきます。そして気がついた時には、素早く高い連続ジャンプができるようになってくると思います。

 

星川氏の過去の記事を読む↓↓↓ 

>>>明日からできる!育成年代のセルフコンディショニング Vol.1

>>>明日からできる!育成年代のセルフコンディショニング Vol.2

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