公開:2021/02/05
更新:2021/02/19
中学生女子のバスケ界を長きにわたり牽引し、U-15女子日本代表HCやトップエンデバーコーチを務めた経験を持つ鷲野鋭久監督。30年を超える指導キャリアの中で、様々な環境、選手のレベルに応じた「実戦で活きるドリル」を数多く生み出してこられました。その指導コンセプトを3回に渡ってお届けします。今回は、鷲野監督よりご提供いただいた資料の中から、鷲野監督の指導者としての思いに迫りたいと思います。
目に見えるものではなく・・
まず、鷲野監督が何よりも大切にされてきたもの。それは「人間力」を高めることです。
「子供たちがバスケットボールを終えた後に子供たちに何が残るのか・・私は、教育者としてバスケット指導者としてよく考えさせられます。時に「学歴」ということが何よりも大事だという考えの保護者をお見かけします。「学力」という力も立派な才能や努力の結果の一つです。でも全てではありません。「バスケットが上手ければいいんだ」「頭さえよければいいんだ」こういう考えのまま子供が将来、社会に出ればきっと壁にぶつかるはずです。シュート力・ディフェンス力・リバウンド力・走る力…それらの力はバスケットを終えた後には必要ではないものになります。シュート力や走る力は「目に見える力」です。バスケットボールを終えて子供たちの今後に必要な力はバスケットボールで養った「目に見えない力」なのかもしれません。その「目に見えない力」が「人間力」と呼ばれている気がします。」
と語る鷲野監督。その「人間力」を育てるポイントとして、
の5つの力を掲げておられます。
特に、すべての始まりである「気付きの力」の力は重要にされていて、
「気付くとは「気が付く」ということです。自分の気持ちがあるものに付くものです。仲間が困っていて助けようと思うことも自分の気持ちが仲間に付くことが出来るかどうかです。親や指導者の方に「感謝」する気持ちに自分の心が気付けるかどうかです。全ての『力』はこの気付きの力から生まれるのだと思います。」
と言われています。
鷲野監督は
「どの選手にもバスケットを終える日がやって来ます。そして、バスケットを終えてからの人生の方が長いでしょう。バスケットを終えてから・・・何か一つでもバスケットで身に付けた心で感じた力が残ってくれていたら・・・そう思っています。そして、その『心で感じられることが出来る力』が『人間力』と呼ばれるのだと思います。」
とも語っておられます。
チームのテーマは『ツナグ』
日々の活動では、「指導者と選手があらゆる局面で共通理解を持って活動に取り組むことで、意思の疎通、お互いの信頼が生まれる」という考えで指導にあたっておられます。それは、指導者が一方的に教え込むのではなく、選手とともに練習、チームを作り上げるということだと思います。
2020年度のチームは、「ツナグ」をテーマに活動をされてきました。具体的には、3つの「ツナグ」を掲げ、スキル面・精神面の両方で成長できるように、選手に指導をされてきました。コロナ禍で活動が制限され、大会も相次いで中止になる中でも、選手一人ひとりができることに集中し、「ツナグ」気持ちを持ち続けたからこそ、驚くような成長を遂げた選手もいたそうです。これはまさに、長年取り組まれてきた「人間力」を高める指導の賜物ではないかと思います。