U-15年代における指導のコンセプト 前編 ~鷲野流の考え方に迫る~

公開:2021/02/05

更新:2021/02/19

姿勢×考え方×能力が選手を伸ばすポイント

また、鷲野監督は長年、「クリエイティブな選手」を育てることに注力されてきました。近年、個人のスキルドリルやハンドリングドリル、トッププレーヤーの映像が手軽に視聴できるようになり、選手の技術・能力は高くなっています。しかし、その技術を「スキル」へと昇華させ、実戦で使えるものにできている選手こそが「クリエイティブ」な選手と呼べるのではないでしょうか。

「バスケットボールがうまくなるためには、運動能力はもちろん高いにこしたことはありませんが、身体能力にまかせた「力づくのプレー」をさせるよりも、最小限のエネルギーで最大限の効果を発揮できるような合理的かつ理論的な練習を積んできたプレーの方がどんな局面に対してもその効果が得られます。バスケットボールは対応型のスポーツであり、とくにディフェンスにおいては、指導者がいかに対応能力を指導できるかによって多少の不利は挽回できると思います。では、どうしたらそれができるようになるか。これはやはりバスケットの根底の部分を理解して、基本の徹底、習慣化、質的向上をはかり、いかに能率的に合理的に取り組むかが大切です。なぜ、そうするのか、なぜこのように動くのか、この人は何がしたくて、このような位置にいて、このような動きをするのかといったことです。」

これは、鷲野先生がU-15年代の指導において重要とされている考え方の一部です。このように、能力に任せるのではなく、バスケットに対する理解(考え方)と、基本の徹底や習慣化といった姿勢があってこそ、本当に「うまい」選手になることができるのです。

鷲野流バスケットの考え方

ここからは、鷲野監督が「バスケット」に対する考え方を少し紹介していきます。

オフェンスにおいてもディフェンスにおいても、「観る」ことを重要視されています。また、バスケットを<<9+1+B+G>>という考え方で捉え、

※9+1+B+Gとは・・・
9は自分以外のオフェンス、ディフェンス9人、1は自分、Bはボール、Gはゴールのこと

  • コートバランス(フロアバランス)
  • OFF、DEFの状況(どこで何をしているのか)
  • OFF、DEFの身長・特徴・心理状態
  • 距離・時間・空間の支配

など、いかなる状況でも集中を分散させて、コート上を把握することが重要であると考えておられます。そのため、オフェンスでもディフェンスでも、「観る」力を重要視されているのです。

「多くを考え一事を成す」

また、全ての状況(9+1+B+G)を観て把握し、5人が連動するように1人1人が目的をもったプレーを計算し考えた上で、最良の判断を下すことを重要視されており、「多くを考え一事を成す」という考えをもとにバスケットの指導にあたっておられます。

鷲野監督は、

「すべての考え方は、1つ1つが独立して存在しているのではなく、重複する部分が多く関連している。また、すべてのプレーは見ること計算すること予測すること無しに成り立たない。その根底には、バスケットに対するあくなき向上心と情熱があり、その熱い気持ちが真に素直で芯のある心を育てる。」

とも語っておられます。

こうしたバスケットや指導に対する考え方は、U-15世代の指導者にとって参考になることも多いのではないでしょうか。

今回は、鷲野監督の指導者としての思いや考え方について紹介しました。具体的なオフェンスやディフェンスに対する考え方については、中編、後編にて詳しく紹介いたします!

>>> 中編「鷲野流オフェンスの考え方」はこちら

>>> 後編 「鷲野流ディフェンスの考え方」はこちら


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U-15年代指導者必見の4大ドリルを紹介します。

鷲野 鋭久 Toshihisa Washino

愛知県出身。中京大学卒。現在は弥富市立弥富北中学校女子バスケットボール部で監督を務める。JBA U-15女子日本代表監督やトップエンデバーでコーチを務め、歴任した公立中学校でも全国大会出場を果たす。前任の藤浪中学校では全国制覇を達成した。自チームの指導にとどまらず、全国でクリニックや講習会を開催するなど、名実ともに中学女子バスケット界を牽引する存在である。

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