恩塚 亨 効果的な方法を知る その2 

公開:2023/01/20

更新:2023/01/19

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恩塚 亨氏の「”効果的な方法を知る”原則を生かす」の後編です。。ボールマンがアタックしている局面で、ボールマン以外の選手はどうサポートすればよいか。これについて、1人でサポートする場合から4名の場合まで、シチュエーション別に詳しく解説されます。原則を選手に理解させれば、「何をしたらよいのかわからない」が解消します。

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プレーヤーすべてが理解しておくべき原則

前回の最後で触れたボールマンのサポートについて引き続き説明します。ボールマンがアタックしている局面を私はブレイク(Break)と呼んでいます。ブレイク局面でボールマン以外の選手がサポートするにはいくつかのパターンがあって、人数によって、1名でサポートするもの(ブレイク1)から4名でサポートするもの(ブレイク4)までに分かれます(図1)。これから1つずつ説明していきますが、これらは、競技レベルやチームを問わず、バスケットボールプレーヤーすべてが理解しておくべき原則です。

図1

ブレイク1─ボールマンの進行方向にオフェンスが1名いる場合

では、ブレイク1から。これはボールマンの進行方向に1名のオフェンスがいる状況です。この時2番の選手は、ダブルギャップの距離(約8m)をとります。この距離をとることで、2番に対峙しているディフェンダーX2は1番に対してヘルプに行きづらくなりますし、行ったとしても戻りづらいです。これが、2番が行う1つめの仕事。2つめの仕事は、セカンドダイブです。これは、1番のボールマンがX1またはX2に守られてシュートまで行けなかった場合に1番に代わってダイブする行動です。これによって、連続的で厚みのある攻撃が可能になります(図2)。

図2

2種類のダイブを効果的に使う

このダイブを体系化しかつ効果的に使えると、チーム戦術として大きなプラス要素になります。ダイブには大きく分けて2種類あります。1つめは、ファーストダイブ。1番がアタックする瞬間に2番がダイブする行為(図3の左)。コーナーで待っていてもパスコースが閉じている前提で、先にダイブする形です。セカンドダイブは、先ほどお話ししたパターンで、1番のボールマンがスピードダウンした瞬間、またはコーナーに向けてパスフェイクした瞬間にダイブします(図3の右)。

図3

私は、ブレイク1で1番が2番の方向に向かってアタックしてきている場合は、原則、セカンドダイブを採用しています。なぜならば、ボールマンのアタックを優先したいからです。また、誰もいないコーナーにパスを出してしまうリスクを回避するためです。もしファーストダイブのチャンスがある場合は、2番の選手は原則を破ってダイブする旨を、声を出して1番に伝える必要があります。

ブレイク2─ボールマンの進行方向にオフェンスが2名いる場合

次にブレイク2。まずはミドルドライブの場合です。ボールマンの進行方向に2人のオフェンスがいるケース(図4)。ここでも原則はセカンドダイブです。その理由は、早くダイブするとオフェンス同士がぶつかってしまったりするからです。1番のドライブがNGの時に、代わりに4番がペイントアタックする(図4の左)。また、1番のシュートがNGで3番にパスしようとした瞬間にX3が3番に戻ろうとします。このタイミングで3番が裏を突いてダイブします(図4の右)。3番がコーナーからいなくなることで、4番もオープンになりやすいです。

図4

なお、ブレイク2の場合もボールマンのアタックが優先です。アタックがうまくいかない場合に4番、3番がセカンドダイブします。補足として、図4の左で4番がダイブしたタイミングでコーナーの3番がウィングに上がってくると、3番がノーマークになるチャンスがよく起こります。4番のダイブに対してコーナーのX3がヘルプしがちになるからです(図5)。

図5

このようにボールマンに対するサポートを体系化していくと、1番が行き詰ったとしても、次のチャンス、その次のチャンスにつなげていくことができます。

ダイブする角度

もう1点補足します。1番が手前側のエルボーを通過した時、ダイブする選手はベースラインに対して45度の角度でダイブします(図6の5番、黒線)。しかし赤線のようにフリースローラインを回り込んでドライブしてくる場合に45度のダイブをするとぶつかってしまうので、角度を変えて赤線の方向にダイブします。これをダンカーダイブ(Dunker Dive)と呼んでいますが、微調整の知識として持っておくとよいと思います。

図6

ベースラインドライブの場合

次はブレイク2のベースラインドライブ。この場合のボールマンサポートです。図7左のように、1番が矢印の方向にドライブすると、ディフェンス側の対応としてはX3がヘルプに行き、X4がローテーションします。X4がベースライン方向に下がるのをシンクダウン(Sink Down)と言います。X4がシンクダウンした瞬間に4番が45度のダイブすると、4番がバスケット下でレイアップを打つチャンスが生まれます。X4がシンクダウンしない時は、4番はダイブしないでステイします。なぜならば、3番がコーナーでノーマークスリーを打てるチャンスになるからです。この状況で4番がダイブすると、1番からのパスが難しくなってしまう場合があります。

図7

このように、ヘルプサイドでヘルプやシンクダウンが起こったかどうかを見極める目を持っていれば、ボールを持たない選手が「何をしたらよいかわからない」事態を防げるし、オフボールの動きでチームの得点に貢献する達成感を持つことができます。

ブレイク3─ボールマンの進行方向にオフェンスが3名いる場合

次はブレイク3。ボールマンの進行方向に3人の味方がいる場合です。ブレイク3のサポートの鍵は、図8左の黄色のスポットを埋めることです。1番がアタックした瞬間に、まず5番がヘルプサイドのブロックにダイブします。2番が5番の位置を埋めると、X2が5番のダイブに引っ張られ、2番がノーマークになるケースがよく見られます。

図8

ブレイク3のケースで、アタック時のアラインメントとしてセンター(5番)がヘルプサイドのローポストに入るパターンがあります(図9右)。これを私はブレイク3イン(B3in)と言って区別しています。このケースでは、先に5番がダイブしていると捉え、1番のアタックとともに5番は矢印のようにサークルムーブします。これはよくあるパターンのオフェンスだと思います。

図9

アタックの瞬間にダイブし、ウィングとコーナーを埋める

ブレイク3の原則としては、「アタックの瞬間にダイブを実行し、ウィングとコーナーを埋める」です。これによって相手チームがヘルプしにくい、またヘルプローテーションをしにくい状況を生み出せます。図10の真ん中のパターンで、5番がダイブして2番がウィングを埋めた時、2番が3ポイントを打てるケースがとても多いので、ご活用いただければと思います。

図10

ブレイク4─ボールマン以外の4名がいかにサポートするか

最後はブレイク4です。ボールマンのアタックに対して、残り4名のプレーヤーがいかにサポートするか。これの鍵は、サークルムーブ&ファーストダイブです。図10で見ると、5番のサークルムーブと4番のファーストダイブ。この後、2番がウィング、3番がコーナーに残る形で、局面がブレイク2に変わります。ここでも、ボールマンアタックの瞬間にサークルムーブ&ファーストダイブします。

1番がポストフィードを狙いながらドライブした時は、ポストプレーヤー5番がサークルムーブでよけてあげて、逆サイドの4番がファーストダイブ、2番がウィングを埋める(図11)。

図11

5番の動き方ですが、1番が目の前でドライブしてきたら、ドリブルが通過する側の足を270度ターンして、横向きでボールを受けに行くとスペースもとれるし、シュートも打ちやすいです(図12)。

図12

全員が「今はどのブレイク状況なのか」を理解して動けるようにする

ここまで、ブレイク1から4まで説明してきました。これらを情報として選手にインプットしておくことが、チームとしてパフォーマンスアップするキーポイントになります。誰かが1対1で攻めたとしても、その他のプレーヤーが良いサポートをしていないとスペースが生まれなかったり、コート上がカオス状態になったりしてしまい、ボールマンに対する負荷が上がって良い結果に結びつかない、という光景をよく見かけます。

ですから、攻めるチャンスが来たら、ボールマンもボールマン以外も、全員が「今はどのブレイク状況なのか」を共通認識し、一体になって動けるように練習することが重要であると、強く思います。

ボールマンサポートのためのドリル

ボールマンサポートを強化するためのドリルを紹介します。コーチがバスケット下に立ちます。図にはありませんが、コーチの周囲にディフェンスが4人立ちます。コーチから、アウトサイドにいるプレーヤーにパスが出たら、ライブで4対4を始めます。コーチから1番に速いパスが出た時は、ディフェンスが間に合わないのでチャンスです。この場合は3番はコーナーへ、4番はウィングに移動してダブルギャップをとります。この時、1番と3番の関係はブレイク1、1番と2番4番の関係はブレイク2です。これをもとに先ほど説明したブレイク1、2のサポートの動きを実行します(図13)。

図13

コーチが1番へ緩いパスを出した場合、1番がボールをキャッチした時にディフェンスのずれが生じませんので即アタックできません。シングルギャップでパスをつないでオンボールスクリーンをセットします(図14)。

図14

「何をしたらよいかわかない」をなくすために

ブレイク状況でのサポートについて、改めてまとめます。

相手がヘルプしにくいようにプレーすること。そして、ヘルプした場合は代償を払わせること。ヘルプによって生じたディフェンスのズレを見逃さずに攻めていくことが大事です。

1対1で打開できない時は力を合わせて戦う。最も重要なのは「困らない」こと。1人で攻められなければ、協力して攻めればよいのです。さらに、パス-パス-ピックのリズムでプレーすると、ディフェンスしにくくなることも頭に入れておくとよいと思います(図15)。

図15

オフェンスの切り口はいろいろありますが、サポートの仕方はいつも同じです。せかっくつくったチャンスを無駄にしないためにも、オフボールの選手が「何をしたらよいかわかない」という状況をなくすためにも、今回お話ししたサポートの原則を役立てていただければと思っています。


>>>恩塚 亨 効果的な方法を知る その1 を読む

>>>恩塚 亨 これからのコーチングで大切なこと その1 を読む

>>>恩塚 亨 これからのコーチングで大切なこと その2  を読む

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