タレントが限られた集団で日本一を目指す──神大バスケの流儀

公開:2024/03/22

更新:2024/04/05

JLCオンデマンド限定で、4月から配信予定の新作コンテンツ「幸嶋謙二“神大らしさ”を体現する日常練習とコーチング」から、インタビュー編の一部を紹介します。強豪ひしめく関東大学リーグ1部の中にあって、限られた人材を育てながら戦い続ける神奈川大学の流儀を、幸嶋謙二コーチが語っています。


人が嫌がる面倒くさいことをやる

「泥臭く」「球際を強く」。これらが、神大バスケ部で引き継がれてきた伝統だ。「ハードワーク」をチームスローガンとしている。10年ほど前にスポーツ推薦入学が始まる前は、一般入試で入ってきた学生のみで関東学生リーグ3部、2部を戦ってきた。

限られた人材で強豪チームに伍して戦うには、皆が嫌がるような、面倒くさいことをやらななければならない。そうした考え方でチームを育て上げ、何とか生き残ってきた。人材面・環境面が整ってきた近年も、泥臭く戦う神大の伝統は受け継がれており、毎年のチーム作りと戦い方はそれを反映したものとなっている。

幸嶋氏が高校生をリクルートする際も、こうした「神大らしさ」を体現できる選手かどうか、ハードワークがしっかりできるかどうか、を重要な判断基準としている。

神奈川大学
体育館に掲げられた「ハードワーク」のバナー

日本一を目指した2023年

現在の実力では1部残留が現実的と考えられたが、2023年度のチームはあえてインカレ優勝を目標に据えた。前年度はインカレベスト4を目標に掲げたが、ベスト8をかけた試合で、優勝した東海大学に59-69に敗れた。決して圧倒されて負けたわけではなく、後日ビデオで振り返っても、内容的に大差がある状況ではなかった。

しかし、東海大は確実に日本一を目指しているチーム。自分たちはベスト4。この目標設定の差が出たのではないか、と分析した結果、それなら日本一を目指すべきだ、と選手サイドから声が挙がったのだ。本気かどうか、幸嶋氏は何度も確認したが、リーダー格のメンバーは本気と答えた。

本気の輪を広げる

ただ、「本気」をチーム全体に波及させるのは簡単なことではない。幸嶋氏は、以前読んだ岡田武史・サッカー日本代表元監督の著書にあった「本気をまず5人つくる」という回顧を思い出した。岡田氏はワールドカップベスト4進出を目標として公言し、そのために、5人の本気メンバーをつくった。すると、その5人は、その目標に見合った練習を本気でやるし、ピッチ外での言動も相応のものとなる。5人が8人になり、12人になり…と次第に人数が増えていき、チーム全体に本気が波及した時、ベスト4を本気で目指せる集団になれる。

神大でもそれは簡単にはいかなかった。浮き沈みもありつつ、本気を波及させていく作業が2023年度の大きな課題であった。

毎日突き抜ける

日本一を経験しているチームは、「ここまでやらなければ日本一にはなれない」という尺度を持ち、日々ハードワークしている。しかし神大にはその尺度がないので、ハードワークするにしても、どこまでやればよいのかわからない。

ならば、毎日突き抜ける。「この程度でいいや」という考え方は捨て、毎日120%の力を出し切って練習する。そうしなければチャンピオンチームには勝てない。幸島氏は、ミーティングで事あるごとにこれを強調して説き、練習プログラムも妥協することなく突き抜けることを意識してつくった。

幸嶋ヘッドコーチ
幸嶋ヘッドコーチ

チームビルディングの肝

限られた時間の中でチームを勝たせたい場合は戦術に走りがちで、幸嶋HCも若い頃はその傾向があった。しかし実力で勝る相手には、練習した戦術が通用しない。「限られた人材で何ができるのか?」を徹底的に考えて、辿り着いた答えの一つがフィジカル強化だった。これは年ごとに選手が入れ替わっても、神大チームに通底する方針として受け継がれている。


チームに良い文化を根付かせ、勝てる集団をいかにして作っていくか。幸嶋ヘッドコーチの話は、すべての指導者にとって共通の課題と言えるチーム作りの根幹が、にじみ出てくる内容となっています。指導カテゴリーを問わず、共感していただける内容も多いと思います。ぜひご覧ください。

〈作品情報〉

幸嶋 謙二「神大らしさ」を体現する日常練習とコーチング

■指導・解説:幸嶋 謙二(神奈川大学 男子バスケットボール部 監督)

2024年4月 JLCオンデマンド バスケットボールコースで配信

≪X328-1≫幸嶋HCインタビュー「インカレ優勝目指して」 ※4月1日より配信予定

■2023年度チームの特徴/中心選手/リクルートの視点/留学生対策

■チームの目標設定

■目標に向けた本気度

■練習の組み立て/チームビルド

≪X328-2≫ディフェンスドリル&コーチング① ※4月1日より配信予定

■4on4リバウンド コンタクトの意識

■クローズアウトからオフボール2on2

■4on4 カウンタードライブからライブ

■3on3スクリーンディフェンス(ダウン/バック)

≪X328-3≫ディフェンスドリル&コーチング② ※5月配信予定

■フルコート1on1 インラインの意識

■4on3 クローズアウトからライブ

■4on4 ピック&ロールからライブ ペイントに入らせない

≪X328-4≫オフェンスドリル&コーチング ※6月配信予定

 

■2on0 ハンドオフ/バックドア

■ウィークサイド2on2 エントリーからライブ

■4on4 ステップアップのスクリーンでエントリー⇒バックピックからライブ

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