【セミナーレポート】育成年代のコーチング論 前編

公開:2022/01/08

第2回講義テーマ:育成年代のコーチの役割

↑第2回講義のトピック

第2回は、「コーチの在り方」についてより深く学ぶ回となりました。「勝利と育成は天秤にかけるものではない」、「何を教えるかよりも、選手がどんな状態かが大事」といった、キーとなるポイントを紹介していただきました。

「サーバントリーダー」については、多くの受講者の方が初めて聞く言葉だったようです。また、放任との違いや、主体性を引き出すための声掛けさえも命令になっているという話があり、受講者の方からも多くの疑問や質問が出ました。

Q.『講義の中であった「楽しくやれよというのが命令になっている」という話を聞いて、自分も指導している中でそれを痛感しています。それを感じたときに、「じゃあどうしたら良いのか?」というのが率直な疑問としてあります。塩野さんがどのように取り組まれているのか教えていただければと思います。』

A.『コーチや役職がある立ち場で権限のあるポジションにいると、何もしなくても周りから“偉い人”と思われてしまいます。自然と威厳があるように見られてしまうので、出来るだけ直立不動でいることを避けています。「人の幸福とが一緒にいる人の所作で変わる」という研究があり、リラックスるしている人と一緒にいると幸せだという話を聞いたこともありますし、意図的にリラックスしてゆらゆらしたり、ドリブルをついてみたり、動くことを意識しています。』

Q.『選手が「夢中になる」というのを平等にできていないという悩みがあります。学年やレベルがバラバラな中で、どうしても一緒に練習せざるを得ない環境では、選手一人一人に合わせていくことに難しさを感じます。』

A.『アルバルク東京アカデミーでも、平等にできていないというのは課題だと感じています。ただ、それも含めてスポーツだという考えを根底には持っています。うまい子だけが得をするということがないようにする、ということもチームスポーツでは大切なことだと思いますので、そういうことを学んでもらう場だととらえる必要かもしれません。ただ、競技力が同じくらいの選手同士で練習した方が、ちょうど良い刺激になるのでそれが理想ではあります。この点に関しては、私自身もまだ解決策を探っていて、日々思考錯誤をしている状況です。』

Q.『ポジションパワーを使わない中で、選手からどう信頼を得るのか。熱く教え込む指導をしない中で、どのように信頼を勝ち取っていくのか。何か工夫されていることがあれば教えていただきたいです。』

A.『まずは、自分自身が勉強している、成長しているんだということを、選手たちに開示していくことが一つの方法かと思います。もう一つは、「正直であること」。分からないところは正直に「分からない」と伝えるで良いと思います。ただ、安心安全の部分と倫理道徳の部分は、譲れないラインを設定して間違えを指摘する。何か問題があった時に、それを見逃さずに対応する。そうすることによって、人生の先輩として信用を勝ち取っていくことができるのではないかと思います。』

その他の感想として、

『最近「教えないコーチング」というのが流行っていて、それと「放任」の違いが何なのかと疑問に感じていました。今回の講義を聞いて、「安心安全を守る」というところがコーチの役割だということが明確になってよかったです。』

『塩野さんのお話を伺って、「私が子どもたちに教える」というベクトルではなく、「子どもたちが学ぶことに対して、私がどう貢献するか」というベクトルなんだなと感じまして。教える教えられるというベクトルとは違うベクトルで、選手たちを徹底的に観察されて選手たちのやりたいことを察知されているのではないのかなと思いました。』

というお声もありました。

塩野コーチからは、『選手を観察するというこは、本当に大切にしています。コーチ間で話をする内容の95%が、選手の状態に関する話です。「こういう態度取るようになってきたな」とか「あの二人は最近よく一緒にいるな」とか。そうした会話の中で、選手の状態について共通認識を持ったうえで指導を行うようにしています。』というお話もいただきました。

第3回、第4回の講義では、バスケットボールの指導に関して、深く追及していきます。

講義の内容に関しては、

【撮影レポート】子供に教えるとはどういうことか~育成年代のコーチング論~

こちらの記事の中でも触れておりますので、併せてご覧ください!

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