家族を取るか、 バスケットボールを取るか

公開:2021/05/28

更新:2021/04/22

Family First

困難な決断をしなければならない。家族に多大な負担をかけるのと引き換えに、試合で勝つために、1年を通して長い時間拘束される。これが、バート・デサルヴォがこれ以上コーチを続けられないと思った理由だ。デサルヴォは、10年に及ぶコーチ経歴があり、中でもNCAA の男子及び女子チームへの指導経験が豊富だった。だが昨シーズン、彼は長期休職することを決断し、サクレッドハート大学
(コネチカット州フェアフィールド)女子チームのアシスタントコーチ職を見送った。

「今年の6 月、第二子が誕生した。私は幸運にも、5月にNCAA ディヴィジョン1のアシスタントというポジションに就いたのだが、家庭と新しいポジションとのバランスに悩んだ」
「優秀なアシスタントコーチにも、いい父親にもなれないなんて、嫌だった。最終的に私は、娘たちと妻のために、コーチのキャリアを当面保留にするという苦渋の決断をした」

デサルヴォは30 代だから、あと数10年は業界に貢献できるだろう。彼は昨シーズンにコーチの仕事はしていないが、バスケットボール界から足を洗ったわけではない。彼は大学の試合や練習に出かけて行った。そして自分のコーチング法を見つめ直した。オフェンス、ディフェンスの指導の仕方や、現場に復帰したらどんなふうに試合運びをすべきか、を新しい視点で考えた。愛するバスケットボールから一時的に遠ざかっているデサルヴォは、家族との絆が深まった一方、昨年は、何度もバスケットボールの世界に戻りたいと感じたという。

「私はそれを“ 痒み”と呼んだよ。私にとって、このようなものは他にない。それは、コーチという仕事が特別なものである所以だ。バスケットを通じて、毎日、若い男女を指導する機会を持てることは、得難い経験だ。すぐにサイドラインに戻れることを楽しみにしている」

デサルヴォの場合、「すぐに」がいつなのか、わからない。彼はキャリアの最盛期で、現場から外れるというリスクを負っている。だが彼は、それが彼にとっては良いことであるとわかっている。この休養は最終的に彼をもっと良いコー
チへと成長させるだろう。
「できれば、コーチは自分と家族が最も幸せになれる決断を下せるといいのだが。しかしゲームは常にそこにある。ゲームはコーチの人生の一部だ」
だからこそ、現場を離れることに対する不安と恐怖は、誰もが感じるのだろう。
「次に有望選手をリクルートする時は、その保護者に、私は自分の子どものために、コーチの仕事を2回辞めたことがある、と伝えるつもりだ。“ファミリーファースト”の精神で生きるならば、それをわかってくれる人もいるだろう」とデサルヴォは言う。

Basketball Coach Weekly日本語版94号より

(本コーナーでは、JLC e-bookストアで販売している『Basketball Coach Weekly日本語版』のバックナンバー記事から、抜粋して掲載しています)

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