元NBAプレーヤーとコーチの心の交流

公開:2021/06/25

更新:2021/05/21

Why You Coach

虚無感を覚えることや自尊心に疑問を持つことは正常なことだ。なぜ自分はこれをしているのだろう? なぜ自分は割に合わないコーチの仕事に、多大な時間を費やしているのだろう?その価値はあるのだろうか? コーチならこのような経験はあるだろう。

いつも、というわけではないが、保護者との付き合い、プレーヤーに学業とスポーツを両立させ続ける、関係者との人間関係、学校側との連携、長時間に及ぶ試合のビデオの分析。こんなことが続き、気分が滅入ってしまうと、全体の中で
の自分の役割は何だろうか? と考える。これは過酷だ。だが、コーチとして経験できる、チームの勝利や若いプレーヤーへの指導は一般の人々がほとんど経験できないことだ。

才能あるプレーヤーがチームに結集し、彼らがコート上での目標を達成するのを見届けた人がいるかもしれない。プレーヤーたちが成長の次のステップに進む刺激を与えた人もいるかもしれない。生徒に与えたインスピレーションが評価され、学校で称賛を得た人もいるかもしれない。そのようなことが一度もなく、仕事のことで落ち込んだら、T.J.フォードのテキサス大学での卒業式を撮影した、ロングホーン・ネットワーク(Longhorn Network:テキサス大学自身が運営するケーブルテレビ局)が提供している短い動画を見てほしい。

フォードは2003 年、テキサス大学の2 年生であったが、NBA 入りした。そしていくつかのチームでプレーしたが、何度も怪我をしたため、引退を決意した。彼の背番号はテキサス大学の永久欠番となった(テキサス大学では4 番目)。彼の在学時代のコーチ、リック・バーンズはフォードに、大学に復学してちゃんと卒業すべきだと言った。そして、その努力が報われた。フォードは復学し、学位を取得する権利を得たのだ。彼は数年前にテキサス大学を解雇されたバーンズに、卒業式で彼のそばにいてほしいと思った。ロングホーン・ネットワークのカメラは、元プレーヤーとコーチの心の交流を捉えた。「彼は僕にとって永遠の父親なんだよ」フォードはバーンズをそう形容した。

「スポーツでは、誰かを信頼するのはとても難しいことだ。高校を卒業した後は特にそうだ。僕は彼の考え方を信頼していたし、そのように生きているつもりだ」フォードが彼の晴れの日にそばにいてほしいと言ったことは、バーンズにとって光栄なことだった。
「私は『出席しないわけないだろう』と言ったよ。私は彼が大好きなんだからね」バーンズはフォードとの交流について、そう述べた。バーンズはフォードの首を傾けその頬にキスをした。両者の目は涙でいっぱいになった。これが、皆さんがコーチをする理由だ。

Basketball Coach Weekly日本語版97号より

(本コーナーでは、JLC e-bookストアで販売している『Basketball Coach Weekly日本語版』のバックナンバー記事から、抜粋して掲載しています)

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