分析ソフト【SPLYZA Teams】でできることvol.4

公開:2020/11/20

更新:2023/05/26

試合の数字を見える化し、分析する

by株式会社SPLYZA バスケットボール分析班

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SPLYZA Teamsを使ったゲーム分析の紹介、最終回となる今回は「SPLYZA Teamsで映像分析だけでなく、試合の数字を見える化し、さらに分析する」をテーマに解説させていただきます。

今回はより詳しく分析するために、映像だけでなく”数字”も活用します。単なるボックススコア、ベーシックスタッツだけでなく、試合分析において欠かせないPPPやポゼッション、Four Factors、そしてSPLYZA Teamsでタグ付けしたからこそ取れる数字を使います。

また、ただその数字を出すだけなく、その数字を見える化、レポート化します。プレーヤーに伝えるとき、ヘッドコーチに報告するときに、ただ表を見せるだけとは全く効果が違います。SPLYZA Teamsを使えば、入力したタグのデータをコピペするだけでレポートが自動で作成されます。細かい作業はゼロです。「数字は苦手」のバリア(障壁)を壊すことも重要です。

では、チームのために、みんなでステップアップしていきましょう!

最終回なので、文末には全ての人に当てはまると思われる大事なこともまとめました。ぜひ最後まで読んで欲しいです。 第3回からつながっている内容もあります。ぜひ第3回もご参照ください。

試合全体を分析するとは・・・(おさらい)

こちらは前回のおさらいです。

分析という言葉は「複雑な事柄を一つ一つの要素や成分に分け、その構成などを明らかにすること。(デジタル大辞泉)」と定義されています。

バスケットボールの分析も同様で、”複雑な事柄を一つ一つの要素や成分に分け”ていくことが第一となります。

今回は前回以上に細かく要素に分けていき、試合を明らかにしていきます。

試合映像にタグをつけていく

今回使用するタグは以下の通りです。より詳しく分析するため、第3回よりも使用するタグが増えてます。(詳しくは▶︎▶︎第3回

シュートエリアの基準はNBA.comの公式スタッツサイトを参考にしております。シュートを打った際はこのエリアを基準にタグを入力していきます。 では、実際にタグ付けしていきます。

前回と同様に全てのオフェンスとディフェンスの開始点にタグを入力していきます。1回の攻撃、守備がどのように始まったのか、どのように終わったのかを入力していきます。シュートを打った場合は、[シューター][IN/OUT][シュートエリア]を入力し、外れた場合は[リバウンド]も入力します。[シュート情報]は該当するものがあれば入力します。

タグ付けの操作に関しては『分析ソフト【SPLYZA Teams】でできることvol.1』をご覧ください。もちろん今回も分担で作業していきます。

コピペだけでレポートを作る!

タグの入力が完了しました。ここからこの試合のレポートを作成していきます。Excelも出てきますが、難しいことは一切しません。するのは”コピペ”のみです!コピペだけでレポートが自動で完成します

まずは、弊社が無料で配布している「スタッツレポート(バスケ)」を開きます。閲覧用なので、左上の「ファイル」→「コピーを作成」で自分専用に複製します。

複製したら、次にSPLYZA TeamsのPC版を開き、今回タグ付けした動画のタグ情報をExcel形式でダウンロードします。

まずはタグ付けした動画を選択し、「タイムタグをエクスポート」をクリックします。

これをタグ付けした1〜4Q分全て行います。ダウンロードしたらファイルを開き、セルA2からタグが入力されている一番下のセルまで全て選択し、コピーします。

コピーしたら、「スタッツレポート作成シート_バスケットボール vol.02.02」の「1Q-タグ貼付シート」に貼り付けます。こちらも1〜4Qまで行います。

このコピペが完了したら作業終了です。これだけでレポートが自動で作成されています。

では、「*STATS Report」のシートを開いてみましょう!

このように、タグを自動的に読み取ってレポートが自動で作成されます。他にも「*Player Shot STATS」「*Team Shot Chart」「*Defense Shot Chart」も自動で作成されています。

では、実際に完成したレポートはこちらです。

〈サマリー〉

〈オフェンスとディフェンスのシュートチャート 〉

〈各個人のシュートチャート〉

これらが全て自動で作成されます。 個人のシュートチャートに関しては、レポートの右にある「▲Select Player」で見たいプレーヤーを選ぶことができます。

▼プレーヤー選択

これらのレポートは全てA4サイズでプリントアウトできる設定になっています。印刷して貼り出したり、プレーヤーに配ることも可能です。

スタッツから試合全体を振り返る

始めに試合全体を振り返っていきます。

このレポートにある「ポゼッション」「PPP」「4Factors」や、それらをどう使って分析しているかは下記をご覧ください。ここではこちらを元に振り返っていきます。

『バスケットボールを数字で分解する。~みんなに知ってほしいFour Factors~』

このレポートは上から順に見ていくレポートです。

〈得点とシュート〉

この試合は接戦の末に負けました。かなりロースコアなゲームで、3Qに逆転したものの、4Qで逆転されてしまいました。

まずはバスケットにおいてとても重要なシュートスタッツがあります。そりゃロースコアになるだろう、という確率ですね。ここで単純にシュートが入らないと片付けるのは簡単ですが、実際に試合では互いのディフェンスの特徴が出た試合でした。

〈ポゼッションとPPP〉

ポゼッションは攻撃回数、PPPは得点効率です。簡単にいうなら攻撃の「量」と「質」でこの掛け算がチームの得点です。このスタッツシートでは一般的な計算式からオフェンスリバウンドを引かない形でポゼッションを算出しています。(*ポゼッション=FGA+FTA×0.44+TO)

ポゼッションは大差ありません。では、攻撃の質となるPPPを見ていきます。こちらも大差ありません。どちらもわずかに相手が上回り、接戦での敗けを生んだのでしょう。

ただ、先ほどロースコアはシュート率からきているように述べましたが、実際はこのPPPの低さがロースコアを物語っています。PPPは全国大会の平均が0.8前後です。負けチームは0.6くらいになります。それを踏まえるとこの両者のPPPの低さがわかります。

では、なぜ攻撃の質であるPPPがこんなに低かったのか、また相手を下回ったのか次は4Factorsを見ていきます。

〈The Four Factors〉

eGF%(シュート効率)が両チームとも低いですね。これがPPPの低さに繋がり、またシュート率の低さがこのeFG%に表れています。またeFG%、ORB%、FTRと3項目で自チームが上回っているの対し、TO%で大幅に負けています。POSSとPPPで共に相手が上回ったのはこのTO%が大きな要因であることが伺えます。

この4Factorsはシュートにどれだけ持ち込めているのか、またシュートを打てた場合どれだけ入っているのか、という指標です。オフェンスリバウンドをとり、攻撃回数を稼いでもそれ以上にTOでシュートにいく機会を削られていては負けても不思議ではないです。むしろ4回に1回はTOしているのに、それをオフェンスリバウンドで補った、と見た方がいいかもしれないです。

〈Other STATS〉

ここでは4Factorsに起因する数字を見ていきます。オープンショットを相手の方が打ています。そして、FB-PTS(ファストブレイクポイント)で10点も多く奪われています。これは明らかにTOの差から来ているでしょう。実際、ライブTO(ゲームが止まらないTO)も8本差があります。ファストブレイクの詳細は『第3回』をご覧ください。

2ndチャンスポイントは自チームのセンターのおかげですね。実際にリバウンドの差も彼のおかげです。そんな中オフェンスリバウンドを結構取られましたが、それは相手の3P試投数が多く、ボールが大きく跳ねたことからも来ています。

両チームのシュートチャートを見ていく

次は自チームのシュートやオフェンスを振り返っていきます。こちらはシュートエリアを入力することによって作られます。

〈自チームのシュートチャート〉

左のコーナー3の確率は十分ですが、他の3Pは入ってません。3Pだけでなく、ロング2Pの真ん中のセンターと両サイドのエルボーも入っていません。TOも多く試投数も多くないですが、ゴールから離れた中央付近のシュートが0%は厳しいですね。救いはゴール付近の確率です。それもセンターのおかげです。センターは6/11で54.5%でした。右ローポストはセンター以外のプレーヤーでした。チームとしてリングアタックはできていますが、アウトサイドが入らなかった試合です。

〈相手チームのシュートチャート〉

自チームに引き換え、相手は3Pの試投数が26本も多いです。確率は20%と高くないですが、成功数で6本も差があり、これだけで18得点です。ロースコアだったことを考えると大きいです。しかし、右ウィング以外は決して確率はよくありません。リングアタックしたのかどうか、ゴール付近でシュートが打てておらず、ゴール下では9本の差があります。ゴール正面のハイポストで5本打って成功していないことからも、センターを避け、フローターを打っていたのかな、と考えることもできます。

相手のシュートは自分たちのディフェンスの出来を表しています。相手の3P試投数の多さはどこから来ているのか、あとで映像で確認していきます。また相手のリングアタックが少なかったのか、していたけどシュート打てていないのか、これも映像で確認していきたいと思います。

プレーヤー別のシュートの割合

チームのシュートスタッツの中から、フィールドゴール試投数と得点、TOのプレーヤー別の割合を見ていきます。これによって、誰が効率よく得点しているのか、また誰のプレーで終わっていることが多いのかが見えてきます。

自チームの場合、#7の中村君がシュートの割合に対し、得点の割合の方が高く、またTOも少ないことが分かります。この試合の中では効率よく得点できたのではないでしょうか。

またこのスタッツはあくまでシュートとTOと得点の割合でしかなく、全体的に効率よくプレーしたかどうかはまた別です。これだけでプレーヤーを評価するのは危険であり、試合の振り返りの1つのヒントとして活用しましょう。

個人のシュートスタッツを見ていく

最後に個人のシュートに関わるスタッツを振り返っていきます。今回は先ほど効率よく得点したと見られた#7の中村君のスタッツを見ていきます。

効率が良いと言っても全体的にFG%も低いので、こうやって見ても特別良い数字ではありませんでした。左コーナーとゴール下、右ショートコーナーは赤いので目立ちますが、5箇所の0.0%は見逃せません。ゴール下の4/5はロースコアの中では素晴らしい数字です。どういう得点だったか知りたい場合はSPLYZA Teamsで(#7 中村)(IN)(ゴール下)でタグを絞ればすぐに映像で確認できます。

今回のまとめ

今回は「試合の数字を見える化し、分析する」をやってきました。

レポートにして、見える化すると、数字に強い方も意外な気づきが出てきます。私たちは今回の試合、相手チーム「分析高校」の方がオフェンスリバウンドを獲得していると試合を見ながら感じていました。しかし、数字に出してみたらオフェンスリバウンドの数は同じで、ORB%に至っては勝っていました。感覚のまま、次の練習していたらオフェンスリバウンド中心の練習をしていたかもしれません。

また、チームの中には数字を見るのが苦手な人が必ずいます。それはプレーヤーかもしれないし、監督かもしれません。先ほどのオフェンスリバウンドの気づきも、あなたならボックススコアだけで気づけても、ただ数字が敷き詰められた表にしか見えなくて気づけない人もたくさんいます。

ただその方々にも、大事な数字を伝えたい場合があります。その際に「見える化」「ビジュアル化」は非常に大事です。1つの心理的な壁を取り除いてくれます。

コーチの感覚と分析の関係

最終回ということで、最後に分析における大事なことにも触れておきたいと思います。

ここまでSPLYZA Teamsを使った映像による試合分析と、そこからの数字による試合分析について述べてきました。ただ、これらの「試合分析」が決して全てではないこと、万能ではないこともお伝えしておきたいです。監督、コーチの方々が実際に試合を通して得た「現場の感覚」はとても重要です。皆さんの日頃養ってきた目に代わるものはありません。

ただ、リアルタイムで全てを把握することは難しいですし、その場で感じたこと、考えたことを全て記憶していることが不可能に近いのも事実です。

私たちは「映像による試合分析」と「数字による試合分析」、そして「現場の感覚」は、どれも非常に重要であり、互いに足りないところを補えるような関係だと考えています。どれも大事にすべきであり、全てを大事にしたときに、今持っている最大限のコーチとしての力が発揮できると考えています。

スマートフォンが普及し、誰でも簡単に映像を撮れるようになりました。この環境を活用しない手はありません。ぜひこの機会に映像やスタッツを活用し、プレイヤーに対する指導、コーチングに生かしてみてはいかがでしょうか。


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