中高生が目指すべき体格の目安は? トレーニングの頻度を確保するには?

公開:2020/12/04

更新:2021/05/17

バスケットボール選手の体力強化 Q&A 第2回

2020年9~10月に行われたジャパンライムのオンライン講座「全てのカテゴリーに必要なトレーニングの考え方と実践」から、質疑応答の内容を抜粋して紹介しています。講師は小山孟志氏(東海大学スポーツ医科学研究所講師)。今回は連載第2回です。

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BMIを算出して現在位置を知り、身体をつくっていこう

Q. 中高生が目指すべき体格について、わかりやすい目安を得たい場合に参考になるものはありますか?

A. チーム内で歴代選手の身長・体重データは残っていると思いますので、一定のパフォーマンスを残した選手の数値が、一つの目安にはなるのではないでしょうか。体脂肪率の数値があれば、なお良しです。

私自身の経験をお話すると、かつて男子の日本代表チームに帯同してアジア選手権に行った時に、見た目では日本人選手とあまり変わらない体格であるにもかかわらず、フィジカル的にも強く、オールラウンドなプレーをしているのが印象的でした。それで、大会関係の資料から身長と体重データを収集したり、宿舎で外国人の選手たちに体重計に乗ってもらったりもしました。

そこから、BMI(Body Mass Index:体格指数)を出してみました。そうすると、見た目では同じに見えた体格が、実際には大きな差があることがわかりました。BMIは、身長に対する体重の関係を表したもので、アスリートの場合は肥満傾向であるケースはほとんどありませんので、この数値を見れば、だいたいの筋肉量が推定できます。

※BMIの計算式:[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]  →自動計算サイトを参照ください。

その後、大学チームを対象として、同じデータを取ってみました。ある年のインカレ出場チームの全データを分析してみると、ベスト4に進出したチームのBMIが、それ以外のチームに比べて圧倒的に高かったのです。強いチームは身長も高いし体重もあることが、改めてわかった。技術・戦術だけでこの壁は簡単には崩せない、ということを実感しました。

つい先日、ユースチームの指導をしているトレーナーの方から「大学に入るまでにどのぐらいの体格をつくっておけばよいか?」というご質問をいただきました。一つの参考データとして、東海大学男子チームの体格指数をお話ししますと、過去3年間の、新入生が入学してきたときの平均値が23.6です。男子の場合、大学生の目標値は23~24だと考えているので、入学時にすでに基準値に到達してる選手がいます。10年前は21~22程度でした。

近年、アンダーカテゴリーの選手たちの体格は目に見えてよくなってきていると実感する方は少なくないでしょう。これは、対象年代を担当されている先生方のご指導や選手自身の取り組みの成果だと思います。ちなみに、現在の日本代表チームの平均値は24台の後半ぐらいです。

表1は、男子選手の最終的な目標値をBMI24とした場合、身長に対して、どの程度の体重になるかを示したものです。しかし、注意が必要なのは中高生年代の選手は成長の度合いに個人差が大きいということです。画一的に目標値を強制するのではなく、あくまでも自分の身体の変化やコンディションを自分で管理することを学ぶ(セルフコンディショニング)の一環として、体重を意識させることが良いのではないでしょうか。

そのあたりを十分に考慮して、まずは短期目標として0.5ずつ数値を上げていくための努力をする。少しずつステップアップしていくという考え方で個人の成果を評価し、トレーニングに取り組んでいけば、到達点をイメージしつつ進歩していけるのではないかと思います。

表1 身長別の目安体重

体脂肪率は測定条件を一定にすることがポイント

Q. 体脂肪率を測る場合、測定する機器によっての誤差が大きく、数値への信頼性が揺らいでしまうのですが。

A. 私たちも、その問題は感じています。まず測定条件を一定にすることが重要です。測定に使っているのは、おそらくバーを握ったり裸足で乗ったりするインピーダンス法の機械だと思います。インピーダンス法の場合、体内の水分量による影響を受けやすく、たとえば運動後に測ると発汗でかなりの水分が失われていますので、体脂肪率が低めに出てくる傾向があります。ですから、起床時、トイレに行く前あるいは後、というタイミングを決めて、同じ機械を用いて定期的に測るようにすればよいでしょう。

インピーダンス法による測定値は、プラスマイナス2%程度の誤差が生じると言われています。測定誤差があることを前提とした上で、数値はあくまでも参考値であるとの認識を、選手たちに持ってもらうことも大切です。数字に一喜一憂し、女子選手が極端に食事制限をしてしまうような事態は避けなければなりません。健康第一、トレーニングと食生活管理を併用しながら、長期的な視点で身体づくりに対する意識を高めていく、そのための測定であるとの位置づけです。


部活の時間制約がある中で、トレーニング頻度を確保する方法

Q 高校の女子チームを指導しています。講義の中で、筋トレの頻度としては上半身・下半身に分けてそれぞれ週2回程度が無理なくやりやすい、例として、1週目は上半身・下半身・上半身、2週目は下半身・上半身・下半身、このようなサイクルが適切である、というお話がありました。

しかし、それだけの頻度をこなす時間がなかなか取れないのが現実です。平日のどこかで1日は休みなさいと言われているし、土日もどちらかは休まなければなりません。日曜日にだいたい練習試合を組みますが、その前日の土曜日に筋トレをさせるのは、少々かわいそうかなと考えて、やらせていません。今年度からこのような制約が発生したため、スケジュールを組むのに苦心しています。何か打開策はないものかと。

A 講義でお話しした1週目は上半身・下半身・上半身、2週目は下半身・上半身・下半身、というサイクルは、翌日にかなりの疲労や筋肉痛が残るような、各セッションでハイボリュームの内容を想定したものです。

別の方法としては、全体のボリュームを軽めにして、1回で上半身と下半身両方のトレーニングを実施し、これを週2回が一つの例です。東海大学では、試合期はこのパターンを採用しています。例として、プログラムAでは上半身で押す種目(プレス系)と下半身は引く種目(プル系:デッドリフトなど)、プログラムBでは上半身で引く種目(プル系)、下半身で押す種目(スクワットなど)といった組み合わせ。

トレーニングは、仮に頻度や1回あたりのボリュームが減ったとしても、継続していくことが一番大切です。中学高校の指導者の方からは、時間の確保が難しく、シーズンオフの期間しかトレーニングができていない、という話をよく聞きます。部活に対する制約が厳しくなる昨今だからこそ、「継続」にフォーカスした工夫をしていただきたいです。

頻度としては、週1回ではやはり十分ではありません。完全回復した状態で次回のトレーニングに臨むことなり、毎回筋肉痛になるけれども毎回同じ負荷にしか耐えられない、向上しづらいサイクルになります。ですから週に2回は刺激を入れる。そのうち1回はヘビーにして、もう1回はライトで良いです。続けることができる形を模索していただきたいと思います。


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